微笑
本当にスローペースですいません!
恐らくは受験終わるまでこのままです。本当にすいません!!
薔薇の華はいつか枯れる。
薔薇でなくてもいつかは枯れる。
しかし、昨日綺麗に咲いたばかりの薔薇が今日は花弁を落とし、死んだように倒れふしていればそんな事実は通用しない。
余りにこじつけで、余りに適当だったが、それこそが正に“事実は小説よりいきなり”だったのだ。
蒼井の額に嫌な汗が流れる。別に彼女が嫌いなわけでもなければその逆。
その凛々しい顔付き、まるで夜空を流れるに適した髪、それら全て、彼女を彩るパーツに心を奪われていた。
それが、嫌な汗を流すだろうか? 答えはNOだ。
この、下痢っ腹を抱えて数十分経ったような……真夏に毛布の中に引きこもるような汗は尋常じゃない。
ふと、静かに風が吹けば、背筋が冷たく感じる。
背中まで汗でびっしりだ。
何故ここまで自分は彼女に感じるところがあるのか、敵視しているのか? それとも逆か?
さっぱり分からない。
テストに習っていない部分があれば、今まで自分は教師を殴ってきたが、このままでは蒼井は自分自身を殴らなければいけなくなる。
いや、別にそれが嫌だと言うわけではないが、それでも何故彼女の存在に危機感に近いものを感じさせられるかが心に突っかかって取れなかった。
「どうした、顔色が悪いようだぞ?」
言われただけで倒れそうになる。
恋有夜は心配して言葉を掛けてくれたのだろうが、普段の日常会話のそれと変わらない内容だが、口を開いては閉じるしかない。
ようは、極限状態で「大丈夫だ、問題ない」の一言も喋れないのだ。
「どうした? 花咲」
疹が心配してくれている様だがそれも耳に入らない。
「悪い、席外す」
本能に従って直ぐにその場を立ち去った。
―――
「はぁ……はぁ……すぅーーーはぁー」
校舎脇に設置された自販機の中でも特にお気に入りである苺ジュースの容器を握り、大きく深呼吸する。
落ち着いたからか、今まで気付きもしなかった背後の人物の存在に気が付く。
「白鳳」
そう、華蓮だった。
実のところ蒼井は純粋過ぎる節がある。女性の眼を見て話すことも出来ないのだ。
眼を反らしながら話す彼に、微笑しながらも華蓮は一歩近付く。
「どうしたんですか? 急に」
「いや、別に……」
「恋有夜さん、良い人でしたよ」
「そうか」
それでも、やはり、と言ったところか。こちらに相槌を打つ彼の顔は曇っていた。
「本当にどうしたんですか?」
「分かんねぇよ」
「大丈夫ですか?」
「多分な」
そこで、少し明るい表情になる。
それを見逃さず華蓮は蒼井の手を握る。
繊細で、それでいて沢山の人間を殴りつけた恨まれるべきその両の手を確かに握ったのだ。
「――あ」
手を握られた本人は完全に唖然としてしまっているが華蓮は気にしない。
蒼井が心配であるのと同時に、自分の気持ちを伝えたかったからだ。
「無理だけはしないで下さいね?」
少々、彼は頑張りすぎる……無理しすぎる節がある。
それを注意しに来たのだ。
そして、それを聞いた蒼井は
「分かったよ」
今度ははっきり微笑んだ。