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アリシャシリーズ(転生したら周囲がヤンデレ・死亡フラグまみれ)

トール・ゼルティアスの物語 ー操り人形のアリシャー

作者: リィズ・ブランディシュカ



 私は、使用人だ。

 とあるお屋敷で、仕事をしている身である。

 そんな私は、そのお屋敷に住むお嬢様に恋心を抱いている。

 彼女ほど私の心を夢中にしてくれる存在はきっとこの世にはいないだろう。


 だが、お嬢様は怪我をされることが多い。

 騒動に好かれる体質なのだろう。

 彼女は優しいが、その性格ゆえに様々な人に手を差し伸べてしまい、自分の体を省みない行動に出る事が多々あった。

 その度に傷ついて血を流す姿を、私は見ていられなくなったのだ。


 だから、私はお嬢様を保護する事にした。

 

 始めは、そこまでやつるもりはなかった。

 たまたま危ない事が重なった時期があったから、お嬢様を守ろうと少しだけ部屋に閉じ込める事にしたのだ。

 しかし、お嬢様は外に出て、誰かを助けに行ってしまう。

 だから、今度はお嬢様が動き回らないように、眠らせる事にした。

 ここで、止まっていればよかったのかもしれない。


 けれど、私は止まれなかった。


 私には、自分に与えられた力があり、その特別な力を使えば、お嬢様の意志を奪う事ができたから。

 だから、吸血鬼として力を振るい、彼女の意志を奪い、操り人形にした。


 それでも、騒動の方がお嬢様の方に引き寄せらえてくる。

 それは、冷静になって考えてみれば、お嬢様を心配した人たちの行動だったのだが、当時の私にはただの敵対行動にしか見えなかった。

 だから私は、彼らを排除した。


 一際目をひく、気高く美しい少女が私の友人を引き連れて討伐しに来た時も、容赦なく切り捨てた。


 そうしてやっと、私はお嬢様を守り切る事が出来たのだと思っていた。


 だってお嬢様は怪我もなく、騒動にまきこまれる事もなく、五体満足で私の傍で笑っていてくれるのだから。


 けれど私は、少ししてからそれが間違いだと気づいてしまった。


 確かにお嬢様は無事だ。

 けれど、それだけだ。

 他に何が残った?

 命は危うくなどない。

 けれど、心はない。

 お嬢様としての意志はない。

 お嬢様はもう、お嬢様として私に笑いかけてくれないのだ。

 二度と、戻らない。


 私がお嬢様と一緒にいられなくてもいい。

 お嬢様が幸せになってくれるだけでもいい。

 けれど、そんな未来ですらも手に入らない。

 命だけあっても、無事だけがあっても、不幸などなくても、こんなものはまるで意味がない。


 私はただずっとそれから、お嬢様の形をした人形の世話をし続けるしかなかった。


 邪神が暴れ、怪我をした少女と友人達が戦いに赴き、命を散らし、世界中が滅茶苦茶になっても。

 もう手遅れなお嬢様の命を守り続けた。


 けれどそれも限界が来る。

 隠れすんでいた辺境の村にすら邪神の力が及び、壊滅状態に陥った。

 私はお嬢様を守ったけれど、お嬢様は命を落とす寸前だった。


 何もかもが間違えた。

 間違いだらけの人生だった。

 頼むからやり直させてほしい。

 無理な事は分かっている。

 今度こそは絶対、こんな間違いは起こさないから。


 私が幸せになれなくてもいい。

 お嬢様をせめて、人並みの日常に返してやりたい。


 私は倒れたお嬢様の手を握った。

 命令でしか握り返してくれないお嬢様に、なんの意味もない命令など与える事なく。

 ただ命がつきるその瞬間まで。



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