死刑が確定しました
本作は死刑制度に対する批判の意図は一切ありません。日々のニュースの裏側を想像して欲しいと思い書いた、お話です。
罪の重さ
「人を殺すのは、悪いことだ」
それは誰もが知る、ごく当たり前の理だった。
男は法廷に立ち、弁護人の言葉を聞きながら、まるで他人事のように天井を見上げていた。
裁判官の厳かな声が響く。
「被告人は、無慈悲に3人を殺めました。この罪は重い。よって、死刑を求刑します」
傍聴席からどよめきが起こる。誰もが当然の判決だと思っていた。
「3人も殺したのだから、足りないくらいだ」
「情状酌量の余地なんてない。あんなやつ、生きている資格がない」
正義の名のもとに、世論はひとつにまとまっていた。
だが、ひとりの年老いた女性だけが、異なる表情を浮かべていた。
その年老いた女性――被告人の母は、小さく震えながら声を搾り出した。
「お願いします……この子を助けてください……!」
彼女にとって、被告人は「人殺し」になっても、かつて優しく手を握り、笑いかけてくれた大切な息子だった。
「どんな理由があっても、人を殺した者は罰を受けるべきだ」
それが世間の常識だ。
だが、「自分の子供が罪人になったときも、同じことが言えるのか?」