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井106 《最終回》さよなら少女壊滅戦争


私の名前は、早乙女朱莉(さおとめ しゅり)。 櫻峰小学校の6年生。

チャームポイントはオランダのおばあちゃんと同じ赤い髪。スポーツ全般が得意。家はお花屋さん。勉強はちょっと苦手な女の子です!


「いってきま~す!!」


私は今日も一番乗りを目指して、ブラウンのランドセルを肩に掛けると、走り出す。


いつもの曲がり角で標識のポールを軸に回転し、そのまま勢いを殺さないように、さらにスピードをあげていく。


朱莉(しゅり)ちゃ~ん」


背中から声がして急停止。


振り返ると、クラスメートの七森(ななもり)きのちゃんが追い(すが)ってくるところだった。


はあはあ、と息を切らして走ってきた、きのちゃんが、お団子ヘアーを揺らして、しばらく呼吸を整える。

「きのちゃん、オハヨ!」と私は言い、「昨日は大変だったねぇ。ピジーちゃん、もう逃がさないようにね?」と笑った。


きのちゃんは、おうちにセキセイインコを飼っていて、それがまた、お約束のようにすぐに逃げ出すのだ。扉を開け放したり、窓を閉め忘れるきのちゃんもきのちゃんだが、ピジーの方もいつも脱出を試みて、チラチラときのちゃんの隙を狙っているようで、……何だか微笑ましい……。


「朱莉ちゃん、ありがとね。今度、私の手料理を食べさせてあげるから、楽しみにしておいてね!」

「うん、楽しみにしてる。……ところで、今朝は早いね?お寝坊のきのちゃんが珍しくない?どうしたの?」


「それがさ……、今日、変な夢を見ちゃって……。早く目が覚めちゃってさ。」と、きのちゃんが頭の上のお団子をポンポンと片手で弾きながら言った。


「へえ?どんな夢だったの?」


「あのね、私、どこか大きな森の入り口にいてね、すんごく大きな木を見上げているの。そこでね、なんか不思議な声が聞こえて……。『君は、今日の朝、教室に入って、そこで最初に出会った人とここに来る』って言うの。」


「目が覚めたら気になっちゃってさ。だからこうして急いで出てきたわけ!」きのちゃんはそう言うと私に抱き付いてきた。

「……これで朝いちで出会う人は朱莉ちゃんで確定だね!」


「え?でも、ここまだ教室じゃないじゃん。」「まあ、そうだけど、一緒に入れば同じことでしょ?」


こうして私は、きのちゃんに手を繋がれながら学校へ向かっていった。

きのちゃんは占いが大好きで、よくトランプとは違うカードで、何かのおまじないみたいなことをしていた。「なにしてるの?」と尋ねると、「わかんない」と答え、適当に絵を並べたりして遊んでいるだけのようだった。

後、そういえば、きのちゃんはドミノ遊びも好きだ。


それを壁に見立てて、立体迷路を作り、中に孤立させた指人形を並べたりして遊んでいるところを何度か見た。


私はと言えば、小さい頃からお人形遊びが大好きで、今でもテディベアと一緒でないと眠れないくらい、いつもお人形さんを傍に置いている。


きのちゃんはお人形さんみたいに可愛くて大好き。きのちゃんを等身大ミカちゃんみたいにして、着せ替え遊びをしたいなあ……。

私は(ひそ)かな夢を心にしまいながら、きのちゃんのしっとりとした手をギュッと握った。


この時代の櫻峰小学校は、登校班の制度がなく、個々の生徒がそれぞれ決まった通学路を使用して登下校していた。

まだ探せば、道端のどこかに散った桜の花びらが見つかりそうな、

フェンスに囲われた校舎の横の道を、二人はおしゃべりをしながら歩いていく。


校舎に入ると、朱莉(しゅり)と、きの は上履きに履き変え、一目散に教室に走っていった。


「「とうちゃ~く!!」」二人は手を揃えて教室の扉を開き、同時に敷居をまたいで、6年2組に足を踏み入れた。


「あ」


教室の黒板の前に、青く長い髪を、姫カットにした女子生徒が立っていて、教卓の上に広げた日誌に何か記入をしていた。


学級委員。成績優秀。ダンス部。非の打ち所のない美少女。唯一の弱点は、くすぐったがりなところ。


蒼井聖愛(あおい せいら)


真面目でルールにうるさい彼女のことを、二人はちょっと苦手にしていた。


「あ、朝いちで会っちゃった……。」ときの が小さな声で(つぶや)く。


「お早う。」と聖愛が、あまり表情を変えずに言った。「早乙女さん、七森さん?」


「「は、はい。」」


「今、廊下を走ってきたでしょ?足音が聞こえたわよ。」

「ご、ごめんなさい……。」と朱莉がショボンとして言う。


「あ、蒼井さんこそ、朝から何してるの?」と、きのが慌てたように手をぶんぶん振りながら言う。


「学級委員の仕事よ。」「………。」

気まずい沈黙の後、朱莉ときの は教室の後ろの方に移動し、ロッカーにランドセルを入れながら、こそこそと肩を寄せて話し始めた。


「蒼井さん、ちょっと苦手……」「凄く綺麗なんだけどね、……なんか近寄りがたいって言うか……少し怖い……。」「んん?!」急にきのが変な声を出してベランダのある窓の方に走っていく。

「どうしたの、きのちゃん?」朱莉が追いかけ、……突然立ち止まったきのの背中に衝突して「痛っ」と言った。


「ピジー??」


窓を開け、きのがベランダに出る。


「え?まさか、また逃げたの?」「でも、そんなはずは……。今朝はしっかり鍵がかかっていたはず……」


「あ、あれ、なに?」と朱莉が校庭の真ん中を指差す。


彼女が指で差し示した先には、キラキラと光る何かが落ちていた。


「何を騒いでいるんですか?」と顔を出した聖愛を押し退けて、朱莉ときのが、先を争うように彼女の脇を走り抜けていく。「ちょ、ちょっと??」と聖愛はよろけ、手摺に掴まって体勢を立て直すと、

……まったく……、と溜め息を吐いた。

そのまましばらく校庭の方を見ていると、……二人の少女が光る物体に向かって走っていくのが見えた。


そして、


二人がそれに手を伸ばした瞬間…



ドドォォォォォォォォォォォォォォォォン



爆風と共に、二人の姿が吹っ飛び、円形の衝撃波が砂埃と共に一気に校舎を襲うと、窓をビリビリと揺らした。


……不発弾?!


聖愛は、髪に砂塵を被りながら、つむっていた目を開け、

………校庭に()いた巨大なクレーターを発見し、驚愕した。


……早乙女さん?!七森さん?!


蒼井聖愛は、ダッと駆け出し、職員室へ向かった。


「先生!!大変です!」


……扉を開けた聖愛の目の前には、吹き飛んだ職員室の跡があり、バラバラになった机や棚以外、人影も動くものも、何もなかった。


け、警察……、消防署……、


聖愛は一瞬迷った後、上履きのままで職員室跡の地面に駆け出し、そのまま大きな穴の()いた校庭に走っていった。


「早乙女さん!七森さん!」


必死に呼びかけるが返事はない。


ふと違和感を感じ、聖愛が空を見上げると、

学校の周りの空が紫色に淀み、まるで光が屈折したように外の町並みが歪んで映っているのが見えた。


……どうなってるの??


あ!!


クレーターの壁に、岩に埋もれるようにして、二人の少女が横たわっている姿が見えた。

「早乙女さん!七森さん!」

聖愛は、そちら側へ走っていき、急な傾斜のついたクレーターの側面を見下ろすと、

……えいや!と足を滑らせて、二人の元に降りていった。


近付くとぼろぼろに破けた二人の服の間から、……火傷と裂傷で血にまみれた肌が見える。


………なんてことなの……。聖愛は、少女達の脚を押し潰す岩をどかそうと、腕に力を入れた。……うわっ……、あっ


聖愛は脚をもつれさせて、クレーターの中を転げ落ちていった。


………。


一瞬、意識を失っていた聖愛が目を開けると、彼女は穴の中央でうつ伏せに倒れていた。


涙で滲んだ視界に、地面に突き刺さった3本の黒い棒の影が見える。


肩を強く打った聖愛は、歯を食い縛りながら立ち上がり、

……引き寄せられるようにして、その3本の棒に手を伸ばした……。


すると3本の棒の先端が、それぞれ回転しながら光を放ち出し、眩しくて聖愛は再び目を閉じた。


「それに触れるな!!」


…高く鋭い声がして、聖愛はビクッと手を引っ込めた。


「だ、だれ?」


瞼をゆっくり開けると、聖愛の目の前に、

ちょこん、と小さな黒猫が座っていて、首を(かし)げながらこちらを見ている。


…………。この子……、翼が生えている……。


「触るな!これは、ユグドラシル・アイドルにしか所持が許されていないレーヴァテインステッキ…。君のような女の子が触ると、さっきの子たちみたいに吹き飛ぶよ。」と黒猫が言った。


しゃべった……。


「あ、あなたが、早乙女さんと七森さんにあんなことをしたの??なんて酷いことを!」


「違うよ。ぼくは何もしてないよ。あの子たちが勝手に触ったんだ。」


「あなた、何者?き、きっとあなた、ま、魔法かなにかの生き物ね?……今、起きてること、到底現実のこととは思えないけど……、何でもいいから、あなたの魔法で、早乙女さんと七森さんを助けなさい!!」


「無理だよ。あの子たちはアイドルじゃないのに、ステッキに触った。たがら罰せられたんだ………て、ん??」

「どうしたの?」

「いや、あれ?気のせいかな?ステッキが共鳴してるような気がする……。これも、ほら、あと二つのステッキも……、側面にウルズ文字が浮かび上がっている………え?まさか?」

そう言うと黒猫は翼を拡げて、傷付いた二人の少女の方へ飛んでいった。


「やっぱり!!……まさかと思ったけど、この二人!ユグドラシルの印がある!!」


「なによ!ユグドラシルの印って??」


「わかった!!この子たち、間違った杖(▪▪▪▪▪)に触ったんだ!!3本のうち、自分のものでない杖に触ってしまったんだ!……なんて間抜けなんだ……。じゃ、じゃあ、もしや……」そう言いながら黒猫は聖愛の元へ戻ってくると、彼女の髪の毛を引っ張って、無理矢理うなじが見えるようにした。

「あ、やっぱり。……君にもユグドラシルの印がある!……なんてことだ。一気に3人のアイドルが見つかるなんて………。100年かかったのに、今になってそんなことってある??

……ねえ、君!もしかしたら二人を助けられるかもしれないよ!」


「どうすればいいの??」と聖愛が叫ぶ。


「簡単だよ。君がその3本のうち、正しいステッキに触れればいい。そうすれば自動的に他の2本はあの子たちのところに飛んでいくはず。……ユグドラシル・アイドルに運命転換(メタモルフェイト)してしまえば、あんな傷なんて一瞬で治るよ!」

「メタ……、あ、あなた何言ってるの?」


「いいから!君は正しいと思うステッキを手に取ればいいんだ。」

「で、でも、もし間違えたら……どうなるの?」

「爆発して今度こそみんな死ぬと思うよ?」


え??え?え?


「さあ!頑張って。」「ど、どれ?ヒントはないの?」「ないよ。」


ジャジャジャーン♪


次回、『アイドル誕生!』

愛の力で世界を救うために、宇宙を統べる世界樹の巫女!神出鬼没の美少女戦士。その正体は櫻峰小学校6年生の女の子☆


異世界創世メタモルフェイト!!

無限恒久、連続アニメ!永久のディーヴァいよいよ開幕です!


来週もお楽しみに!!

応援ありがとうございました。この話を持ちまして、さよなら少女壊滅戦争は終了致します。カレイドスコープ先生の次回の作品にご期待ください!

更新の度に即、読んでくださっていた5人ばかりの読者さん、……ちっとも応援してくれなかったけど(涙)、ありがとうございました!凄く励みになりました。でもPV数の落ち込みも激しく(先月の半分くらい。)、評価も1人きり(そこのあなたですよ!ありがとうございました!)……。少年ジャプン読者アンケート最下位が続いたので5ヶ月でとうとう打ち切りとなりました。まだまだ書きたいことがいっぱいありましたが、誰も読んでいないので、ここらで一区切りにします。まあ、一応のエンディングまでは辿り着けたのではないかと思います。


またどこかでお会いしましょう。


次回、《新連載》おやすみ少女ロボトミー戦記

#まったね~!

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