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メアリー目線 〜優しい主と呼ばれた名前〜

アリスティア、レイチェル、ユリアの主要キャラ三人の他の登場人物の目線の話は始めてですね!アリスティアがかなり昔からお人好しで、やるときはやる女だということが分かる物語にしました!

痛い。

苦しい。

誰か……

誰か……

助けて……

そう思わない日はなかった。

生まれたときから貧民街にいて、お金持ちの令息にいじめられる毎日。

石を投げられる。

殴られる。

汚いと罵られる。

私はいつしか、お金持ちはみんな悪い人だと決めつけていた。

ある日、道に落ちていたガラスの破片を、布で掴み前髪を切った。

なぜかと聞かれたら、答えられない。

なんとなくとしか言えない。

前髪を切ったら、視界が広った。

切ってよかった。

そう思ったのもつかぬ間、私をいじめていた令息が私を嫁にと騒ぎ出した。

「君は僕と結婚するのが幸せだ!」

意味がわからなかった。

今まで散々いじめてきたのに、髪を切っただけでこんなに手の平を返してくるなんて…

私はその場から走って逃げた。

息を切らして。

貧民街から出て、商店街に出た。

でも、令息はいつまでも追いかけてくる。

私は人混みに紛れて、走った。

多分巻けたけど、すぐに見つかる。

裸足で走り回ったから、足が痛い。

ついに私は転んでしまった。

「きゃあ!」

私はお金持ちの令嬢を巻き込んで転んでしまった。

「ちょっと貴方!ドレスが汚れてしまったじゃない!どうしてくれるのよ!これから婚約者と会うのに!平民の分際で!」

令嬢は手を上げて、私に向かって振り下ろした。

叩かれる!

私はぎゅっと目を瞑った。

あれ?

痛くない…?

目を開けると、平民の少女がさっきの令嬢の腕を掴んで止めていた。

「な、何よ貴方。こんな平民を庇うの?」

「身分は関係ありません。同じ命を持つ人間です。乱暴はよしてください」

「伯爵令嬢の私に指図するっていうの?」

「それは申し訳ございません。自己紹介がまだでしたね」

少女は、綺麗なお辞儀をした。

「はじめまして、フライト伯爵のご令嬢。ローズ侯爵家長女、アリスティア・ローズです。以後お見知りおきを」

少女が名乗ると、令嬢の顔が真っ青になった。

「ローズ…侯爵…」

「社交界では、身分が高い者から話しかけられなければ、身分が低い者は会話してはならない。そのルールを違えた上に、貴方は私の命令に背いた。お父様が知れば、貴方にはどのような罰が下るかしら」

令嬢はすぐに地面正座し、頭を下げた。

彼女の体は小刻みに震えていた。

「申し訳ございません…」

「…今回だけですよ。次平民だからと手を上げようとした時、その時はどうなるか」

「心得ております…」

「下がりなさい」

「はい…」

令嬢は立ち上がって、とぼとぼと歩いて行った。

お礼を言いたい。

けど、声が出ない。

少女は令嬢。

下手なことを言うと、どうなるか…

「お〜い!僕のお嫁さ〜ん」

「ひっ!」

「見ぃつけた」

震えが止まらない。

捕まる!

そう思った時、少女が私と令息の間に割り込んだ。

「帰れ」

「帰らない。その少女を渡せ。僕を誰だと思っているんだ!…え?その紋章…ローズ家…?」

「この少女が欲しいと言ったか?これは私のメイドにする」

「でも…」

「ローズ家に逆らうか?」

令息は走って逃げて行った。

この少女、只者じゃない…

逃げないと。

私は少女に背を向けて、貧民街に戻ろうをした。

が、少女に腕をガッチリ掴まれてしまった。

「行くよ」

少女は、私を高そうな馬車に乗せた。

私、これからどうなるんだろう……


連れてこられたのは、お城のような屋敷。

この少女、悪い人ではないのかな?

少女に手を引かれ、馬車を降りて屋敷に入った。

「ひぃっ!」

中に待っていたのは、仁王立ちをした女性と男性二人。

ニコニコしているのに、なぜか怖い。

「おかえりなさぁい。アリス」

「お、お母様…」

「ティア?どこに行っていたんだい?」

「お、お兄様…」

「アリスティア?今日は外出の予定はなかったよな?」

「お、お父様…」

少女は震えている。

さっきの人達と同じような姿になっている。

「話は後で聞くことにする。で、後ろの子供は?」

「お父様!この子を私のメイドにしてください!」

「却下」

すぐに嫌がられている。

こんなことなら、連れて来る必要なかったじゃない。

どうせすぐに貧民街に戻される。

「いいじゃないですか、旦那様」

「え……」

聞き覚えがある声に、俯いていた顔を上げて、前を見た。

綺麗な服を着て、美しい立ち振舞をしている少年は貧民街で仲が良かった子だ。

「アリスティアが貧民街の者達を拾って来るから、うちの屋敷は平民の使用人が多いんだぞ!」

「いいじゃないですか。たっかいお金払ってメイドを雇うより安上がりですし、貧民街の人達も減らせますよ」

「第三領だけという約束だったのに、本邸にまで来てるとはどういうことだ?」

「お察しのとおりです」

少女の父親はため息を付いた。

「……許可する…」

「わぁ、すごい嫌そう。じゃ、私は部屋に戻るので」

少女は私の手を引いて、階段を登りだした。

部屋に行くのかな。

「ジャック、ついてきて」

「はい」

え、名前⁉️

貧民街に住む人は、ファミリーネームだけではなく名前すら与えられない。

なのに、貧民街に居た少年は今、間違いなくジャックと呼ばれていた。

どうして?

そんな事を考えていると、少女は扉の前で止まった。

扉の横に立っていた騎士が、大きな扉を開けた。

中はすごくキラキラしている。

「ジャック、隣の書庫からあれを持ってきて。私はこの子をお風呂に入れる」

「わかりました」

ジャックは部屋から出て行った。

少女は私と向き合った。

「私はアリスティア。四歳だよ」

四歳⁉️

四歳の少女があんな物言いできるの⁉️

貴族社会がとんでもないことを改めて知った。

「えっと、貴方は?」

「……」

どうしよう、声が出ない。

あ、指!

私は指を使って、十歳だということを伝えた。

「十歳か…じゃあ、お風呂は一人で入れるよね」

アリスティア様は私を浴室に押し込んだ。


お風呂から出ると、数人のメイドが居た。

メイドたちは私の体や髪を拭き、乾かしてくれた。

パサパサだった髪も、サラサラになっている。

ガラスの破片で切った髪も、綺麗に整えてくれた。

浴室から出ると、ジャックとアリスティア様がなにか話していた。

「あら、綺麗になったわね。今、丁度貴方の名前が決まったところよ」

アリスティア様は椅子から立ち上がって、私に近づいてきた。

「メアリー」

「……!」

私の名前は…

メアリー…?

私は自分を指さして、首を傾げた。

私なんかが、そんな名前を使ってもいいのかと。

アリスティア様は私が何を言いたいのかを察してくれた。

「いいのよ。貴方はもう貧民街の少女じゃない。これからは、私の専属メイドのメアリーだよ」

私の目から涙が零れ落ちた。

この人なら、信じてもいいかな。

私の中にあった、お金持ちは碌でもないという思考は、アリスティア様のお陰でなくなった。

私はそんなアリスティア様の恩に報いるために、言葉を発する訓練を始めた。

メイド修行も頑張った。

でも、アリスティア様はいきなり寝たきり起きなくなってしまった。

何をしても起きないアリスティア様を、旦那様は持っている領の中で一番大きな屋敷がある領にアリスティア様を転移させた。

そして、アリスティア様に拾われた使用人たちが集められ、病養に励むようにと命じられた。

使用人たちの中には、見知った顔が多くあった。

みんな、アリスティア様を心配して看病をした。

誰一人、その当番を忘れることはなかった。

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