表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

セリューム王国の復活

私達は4日かけて、セリューム王国に行った。

エリックもあの後、目を覚まして私に泣きながら抱きついて来た。

今はしっかり寝て、万全な状態だ。

レイがお世話になったクライブさんも一緒に来てもらった。

「本当に結界が張られてるんだ」

「誰が貼ったんだろう」

『私だよ』

「アルネーゼ!」

「アルフィオナ!」

私とレイが同時に言った名前は異なっていた。

私とレイは「あれ?」と首を傾けた。

「レイもアルフィオナに会った事あるの?」

「あぁ…アルネーゼじゃないのか?」

「それは妹の名前らしいよ」

「へー」

アルフィオナはニコニコしながら私達の会話を聞いていた。

「でも、何で結界を?」

『私のせいで滅びた国に新しい国が建国されるのは良い気がしないもの』

罪悪感故の行動って事か。

「私達だけ入る事って出来る?」

『いいよ。何するか気になるし』

『アルフィオナ…絶対楽しんでるよね?』

『やっぱりレリアは鋭いね』

アルフィオナはレリアと話しながら、結界に手を近づけて人が入れるくらいの穴を開けた。

『アリスティア。もう入れるよ』

「ありがとう。王宮はどの辺りですか?」

『こっちよ』

私達は全員でセリューム王国の中に入った。

本当に中は草が覆い茂っていた。

だが、森の様にはなっておらず、幻想的だった。

レリアとクライブさんは、少し寂しげな顔をしていた。

二人は馬車に乗る前には、再会を喜び、抱きしめあっていた。

やはり、セリューム王国を見るのは悲しいのか…

しばらく歩いて、私達は立ち止まった。

目の前に、安らかに眠るレリアの姿があったから。

レリアは、ベッドくらいの大きさの石の上で眠っていた。

「レリアが居るって事は、ここが王宮だな」

「皆は後ろに下がって。レリアとクライブさんは私の前に来てください」

皆は私の指示に従った。

「アルフィオナ。結界を壊して。私が新しい結界を張るから」

「分かった。防御魔法解除」

「防御魔法発動」

私が今張った結界は、魔法が外に出ない様にする結界だ。

出入りは自由に出来る。

「防御魔法発動」

私は後ろに居る人達の周りに結界を張った。

「始めます。時の精霊達よ」

『何?』

『ドウシタノ?』

「私に力を貸して欲しいの。沢山の魔力が必要なの」

『イイヨ』

精霊達は快くオッケーしてくれた。

私は地面に手を付けて、ありったけの魔力を注ぎ込んだ。

「最上級時間巻き戻し魔法発動!」

私が使った魔法は、時を戻す魔法。

最上級で、禁忌級の魔法だ。

ギリギリ禁忌魔法では無いが、魔力消費量が多い。

この魔法は、禁忌とされる死者蘇生が可能だ。

しかし、死んだ人達の記憶が残ったままになってしまう。

成功したとして、二人が幸せに暮らせるかは分からない。

それでも、私は最善を尽くす。

クライブさんは若返っていく。

レリアは自分の体に戻ったのか、姿が無くなっていた。

周りの木も幼木になり、無くなった。

そして、建物は元通りになっていた。

あとちょっと!

クライブさんの服装は制服になっている。

あと少し!

私は最後に仕上げの魔力を流し、時間の巻き戻しの完了を確認した。

「防御魔法解除」

私は、後ろに居る皆の周りの結界を解除した。

「アリス!何したの?セリューム王国が…」

ユリアが驚きながらも聞いて来た。

「最上級時間巻き戻し魔法を発動したの」

「嘘でしょ…」

ユリアが放心してしまった。

「ありがとうアリスティア」

声が聞こえた方に目を向けると、銀髪に澄んだ青色の目を持つ少女が立っていた。

クライブさんと同じ制服を着ているって事はレリアかな?

「アリスティア。私ね、本当はずっと辛かったの。あの世界に送り込まれてくる人達を見る度に、自分に重ねてた。私も、あの子達にみたいにここから出られたらとかも思ってた」

「レリア…」

あそこで独りぼっちで居るのに、辛くない筈が無い。

「だから、本当にありがとう。私を…皆を生き返らせてくれて」

レリアは、周りに目を向けた。

「嘘…私…死んだ筈じゃ…」

「生き返れた…やったぁ!」

「まだ生きれるんだ!」

「生き返れて良かった…」

その声が上がっていた。

やっぱり記憶は残っているんだ。

皆笑顔なのに、一人だけ不機嫌な顔をしている人が居た。

「レリア・ミールナード!貴様」

私達の方に歩いてくる人を見た事がある。

セリューム王国の王太子。

ヴァイオス・セリュームさんだ。

「国を滅ぼしておいて、何故貴様は普通に生きているのだ⁉」

ヴァイオス様はレリアに掴みかかる勢いで近づいて行く。

「何故、貴様は生きているんだ!この悪女め!」

そう大声で言うヴァイオス様の声は、沢山の人の耳に入った。

そのせいで、笑顔だった人達から笑顔が消え、憎しみのこもった眼差しをレリアに向けた。

「何であの女が生きてるのよ」

「早く処刑されろ」

「不愉快だ」

「私達が不憫よ」

皆が口々に言う。

レリアはしゃがみながら、耳を塞いでいた。

その体は、小刻みに震えている。

地面に一粒の雫が落ちた。

レリアはやっぱり、怖いんだ。

ヴァイオス様が剣を抜いた。

そして、少しずつレリアに近づく。

許せない。

そう思いながら、私はその間に入った。

「待ってください」

「アリスティア…」

レリアが小さな声で私の名前を呼ぶ。

レリアは、涙で塗れた顔を少しあげていた。

「おかしいですよ。レリアだけが責められるなんて。元々は貴方達がレリアを追い詰めて、傷つけたんでしょう?でも、レリアは貴方達のせいにしなかった。レリアは自分の心のせいにした。貴方達がレリアに嫌がらせなんかをしなければ、レリアは貴方達を憎んだりしなかった。レリアはずっと、50年間一人で、悲しみ続けた。自分のせいで沢山の人が死んだって。人をここまで追い詰めておいて、自分達は被害者面するなんておかしいです」

「こやつは50年も生きていたのか⁉しぶとい奴め!」

その部分に引っかかるのは貴方だけでは?

どれだけ話が通じないのかな?

「いいえ違いますよ。レリアは、クライブさんによって殺されました。でも、魂は違うところにありました。その場所にずっと居たんです」

ヴァイオス様は、怪訝そうな顔をしていた。

「ていうか、私が言った事の中で、それしか拾う事しか出来なかったんですか?」

「っ…!ふ、不敬だぞ!」

そう叫ぶヴァイオス様に反省の色は見られない。

「レリアに謝ってください。もしかして、ごめんなさいの六文字を言う事が出来ないんですか?可哀想な頭ですこと。その脳は何の為にあるんですか?あ、こんな事聞いても意味無いか。使えない脳をお持ちの貴方に、言葉を理解できませんもんね」

私は、全力でヴァイオス様に煽りの言葉を投げかける。

『ティア、性格悪いよ』

「出たよ。社交界で怒らせると出て来る、性格クッソ悪いアリスティア」

「しかも、痛い所をやたらえぐってくる激レアだな」

「マジかよ。社交界も普段も怒らせないようにしよ」

『性格わっるう』

「可哀想ぉ」

「ひっどぉ」

「こっわぁ」

おい、聞こえてるぞ。

後で覚えておけ。

「貴方達が生き返って、レリアは私に感謝した。貴方達みたいな人達の為に!どうして貴方達はそんな優しいレリアに冷たい言葉を投げかける事が出来るのですか?」

「貴様っ!」

私に掴みかかろうとするヴァイオス様は、王太子として見る事は出来ない。

「待て」

「父上⁉」

私達の後ろに居たのは、セリューム王国の国王陛下だった。

「その話は誠か?」

「嘘偽りの無い事実でございます。現在、他国では、50年の年が経ってっております」

「そうか。ヴァイオスよ」

「はい!」

陛下は、ヴァイオス様を呼んだ。

「貴様を王族と認める事は出来ない。王宮から追放する」

「え⁉何故ですか父上!」

「恩人にその様な対応をするの者を、王族とは認めない」

全く持ってその通りです。

良かった。

陛下はいい人みたい。

王太子は、膝から崩れ落ちて固まった。

陛下が私に向き合った。

「そなた…名は何と言う?」

「レオナルド王国、ローズ侯爵家長女、アリスティアです」

「アリスティア。改めて、我が国を元通りにしてくれた事、感謝する。レリア嬢。愚息の愚かなる行動をどうか許して欲しい」

陛下は、まるで自分の事の様に、私とレリアに深く頭を下げた。

「そ…そんな…いいですよ。私も、陛下の大切な国を滅ぼしてしまいましたし…」

「レリア嬢のせいではないのであろう?」

「…信じてくださるんですか?」

「レリア嬢はそんな嘘はつかぬじゃろ?」

「…っ!はい!」

そう笑うレリアは、心からの笑顔で笑っていた。

周りの人達は、申し訳無さそうにしている。

これなら、平和な学園生活を送れるだろう。

「国王陛下。時間が巻き戻って、当時学生だった皆さんはまた学生に戻りました。精神年齢が上とは言え、学生は学生。もう一度学生に戻って頂く事になりましたが…」

これは本心じゃない。

訳せば、レリアにもう一度平和な学園生活を送らせろ。

と言っている。

陛下も意味が分かった様で、不敵に笑った。

「承知の上だ。戸籍も戻ってしまっておるのだろう?」

「その通りです」

「良かろう」

私達はその後、王宮で陛下に事の詳細を説明して、レオナルド王国に帰った。

セリューム王国の人々から、国に張ってある結界から出れば魔法が解けるのかと質問されたが、そんな事はない。

そもそも、個人個人に時間巻き戻し魔法がかかっているから、結界から出たら死ぬ訳では無い。

ちなみに、私が死んだらセリューム王国の国民が死ぬかと言ったらそうではない。

他国の人がセリューム王国に入ったら若返る訳でも無い。

単純な話ばかりだ。

これから私は、レオナルド王国の王宮に行く。

レリアの件は片付いたが、私の事は全く片付いていない。

私も平和な学園生活を取り戻す!!


私達はレオナルド王国の国王陛下に、全てを話した。

陛下は渋い顔になって行き、話が終わった途端に大きなため息をついた。

「サリオンとセリーネ嬢を呼べ」

何でセリーネ様が王宮に居るの?

そう考えていると、殿下とセリーネ様が部屋に入って来た。

「チッ!なんの用ですか父上」

来て早々舌打ちをした事に、部屋に居たほとんど全員が引いた。

「アリスティアに謝罪をしろ」

「は?何で俺達がこんなやつに謝罪しなければならないんですか?」

二人を前にすると恐怖心が大きくなる。

何でだろう。

二人から直接的な嫌がらせはされてないのに。

「アリスティアが心の闇に飲み込まれたのは貴様らのせいだろう」

「違いますよ。アリスティア嬢が勝手に被害妄想しただけですよ!」

「そうだ!俺達は悪くない!」

この人たちに話は通じないんだろう。

そう思っていたら、ユリアが言った。

「ふざけないでください。皆から聞きました。体が勝手に動いて、アリスを攻撃していた。自分でも何故あんな事をしたのか分からないと。生徒達からは、セリーネ様の魔力を感じました。それに、闇魔法は人の心を操る事が出来ると聞きました。セリーネ様が全て仕組んだのでしょう?サリオン殿下からも貴方の魔力を感じます」

「っ…」

セリーネ様の顔色が変わった。

「闇魔法は、憎しみ増加の魔法がありますよね?皆のアリスに対する嫉妬や憎しみを増加させ、嫌がらせをする様仕向けた。そうですよね」

「セリーネに言いがかりをつけるな!あぁ、可哀想に。そんなに震えて…」

「サリオン!」

不機嫌そうに言うサリオン殿下は、セリーネ様から離れようとしない。

レイが私の隣に座り、私を自分の胸に抱き寄せた。

安心させようとしているのだろう。

「…本当に愚かな王太子ですね…レオナルド王国の国王陛下。つかぬ事をお聞きします。この国の王太子教育はどの様な事をしたのですか…?」

「全く普通の教育じゃよ。性格上、教育しても無意味なのだろう。仕方ない。セリーネ嬢」

「何でしょう父上!」

嬉しそうに返事するセリーネ様とは真逆に、陛下は冷たい表情をしていた。

その表情には怒りが含まれていた。

「ブラウン公爵の爵位を失くし、平民にする」

「なっ!」

準男爵は、爵位の中で一番低い。

陛下は何を企んでいるのだろう。

「ローズ家とベルナール家、侯爵から公爵に任命する。セイナン家には伯爵位を授ける」

「陛下…!何故私が平民などに位を下げられなくてはならないのですか⁉」

「学園の崩壊、アリスティアの心を掻き乱した事、生徒を危険に晒した事、無責任に逃げた事。他になにかあるか?」

陛下は冷たい声で言った。

セリーネ様と殿下の顔色が悪くなって行く。

「サリオン」

「……」

「貴様は王太子の座を剥奪した上で、平民に位を下げる。愛しのセリーネと身分も、婚約者も考えずにイチャイチャ出来るぞ」

「そ…そんな…」

私は、お二人にやりたいことがあった。

「陛下」

私はにっこり笑って、拳を握った。

陛下は、引きつった表情をした。

「…良かろう...そいつらはもう平民。アリスティアの方が身分が上だ。何しろ、鬱憤が溜まっているのであろう?許可する」

私は殿下の近くに行った。

「こんのクソ野郎がぁぁぁぁぁぁあ」

「痛っ⁉」

殿下の鼻から血が出ている。

「えぇ…」

「可哀想に」

「アリス……」

周りの人達が引いているのは置いといて、スッキリした。

「もう良いか?」

「はい。ありがとうございます」

私は笑顔で言った。

私以外の人は頬が引きつっている。

「二人を連れて行け」

陛下が命令すると、二人は連れて行かれた。

二人が連れて行かれたから、レイは私を離してくれた。

「改めて、アリスティア嬢。この度は愚息が失礼した。そなた達与えた爵位は、詫びと思って受け取ってくれ」

「あ…ありがとうございます…」

「それで…何だ…レイチェルには、うちの王太子になってもらいたい」

あれ?

レイはミネラル王国の王太子だよね?

そんな事したらミネラル王国との関係にひびが入るんじゃないかな。

「実は、アリスティアが眠っている間にミネラル王国の国王と王妃の間にお子さんが出来たんだ」

「え?」

レイが説明してくれた事の意味が分からなかった。

ミネラル王国の王妃様は、子供が出来ない体に筈だ。

「奇跡的に精子と卵子が結びついたらしい。だから、俺はもう用済み。今のままミネラル王国で王太子として暮らすか、レオナルド王国に戻るかの二択を迫られた。なら、レオナルド王国に不在の王太子になってやろうって話になったんだ」

「レイチェルは頑張って王太子教育を受けていたから、無駄にはしたくないって言うのが向こうの言い分みたいだよ」

「そうなんだ」

確かに、王太子教育はお金がかかる上に、当人への負担も大きい。

それを見事王太子教育をやり遂げたのに、王太子の座に正式な王太子がつくと、レイの努力は無駄になる。

私はレイを見た。

そして、レイは不敵に笑った。

「って事でアリスティア。俺と婚約してくれ」

「どういうことだよ」

思わず突っ込んだけど、意味分かんない。

「レイチェル、アリスに変化球は通用しないよ」

「コイツは鈍いからな」

「ド直球ストレートの方が良いだろう」

口々に言うユリアとエリックと陛下の顔には明らかに悪意がある。

「失礼過ぎるでしょ!レイ!言いたい事があるなら、もっと分かりやすく言ってよ!そんな言い方じゃ誰も分かる訳無いでしょ!」

そうだよ!

分かんないよ!

「嘘だろ……」

「ぷくく……アリスのそういう所好きだよ」

「いや分かるだろ」

「レイチェルが不憫でならん」

あれ?

皆の反応がおかしい。

何か見落としてる?

う〜ん。

私は、レオナルド王国の監視下にある。

理由は全属性持ちという事がバレたからである。

だから、陛下は私を近くに置きたいんだろう。

「レイ、もしかして、陛下に脅されてる?」

真っ先に浮かんだのがその質問だ。

陛下に脅されているから私と婚約なんて言い出したんだろう。

危ない危ない。

「……」

「レイ?」

レイは黙り込んだ。

図星かぁ。

「ぷくくくく」

「マジかよ」

「仮にも国王の私を何だと思っておるのだ」

あれ?

違う?

でもこれ以外思いつかないし……

「はぁ……アリスティア。俺はちゃんと君に惚れている」

「は?」

「俺と婚約してくれ」

ん?

あれ?

おかしいぞ。

惚れてる?

「え?マジ?」

「あぁ」

「え……えぇぇぇぇぇぇぇぇえ!何で何で何で何で⁉」

私はテンパりまくって、陛下の前で奇声を上げた。

国王の前で奇声を上げる貴族令嬢なんて私しかいないだろう。

「はぁぁぁぁぁぁあ。鈍い」

ごめんなさい。

マジで分かんなかったもん。

「それで?婚約してくれるだろ?」

私は不敵に笑って言った。

「……嫌だと言ったら?」

「強制だ」

「だと思った。いいよ」

私は立ち上がって、レイと向き合った。

そして、私は侯爵令嬢……

いや、公爵令嬢らしいお辞儀をした。

「レイチェル・レオナルド殿下の婚約者の役割、謹んでお受けします。ローズ公爵の娘として、役割を全うし、殿下を支え所存でございます」

「こちらこそよろしくな。アリスティア」


――七年後


「アリスゥ!ねぇねぇお願い!良いでしょう?今日は卒業式なんだよ?今日くらい糖質制限解除してよ〜!お願い!」

私に懇願するユリアは七年前に比べて、中身はあまり変わっていない。

見た目は大分変わっている。

十五歳になったから、身長も伸びているし、髪も伸びている。

「え〜。どうしようかな〜」

「アリスゥ〜」

キラキラした目で私を見つめるユリアは、私が最近糖質制限をかけていた。

だから、卒業式の夜会でお菓子を食べたくて仕方ないんだろう。

「今日くらいいいんじゃないか?」

「この可哀想な私を救ってくれるの〜?」

「大袈裟な。そもそも、お茶会でお菓子食べ過ぎて太ったユリアが悪いと思うが?」

「うわっ!デリカシーの無いセリフを言うな!」

ユリアとぎゃあぎゃあ騒いでる、金髪と緑色の目を持っている美少年は、レイだ。

ナーヴァ家は元々王族の血筋の家だった。

元々は公爵家だったが、王家の血筋に最も近しい家だった為、贅沢や我儘を言う公爵夫人がいたため、爵位が男爵まで落ちてしまった。

結果的には、罪滅ぼしの為に爵位を返上することになったけど。

王家の血を引いている者は、髪の毛の色が変わる。

だから、レイの髪も金色に変わった。

私達の婚約は、今日発表される。

元々仲が良かったから、普通に過ごしていても、噂にはならなかった。

「ほぉるぁ〜。愛しの婚約者が引いてるよぉ〜」

「ユリア、レイチェルを煽るな。一応王太子なんだから。不敬で捕まるぞ」

エリックがやって来てそう言った。

「一応って何だ!一応って!」

ちなみにユリアは、ジョン様との婚約を破棄した。

元々政略結婚だったから、恋愛結婚が良いと駄々をこねた結果、両思いだったエリックと婚約する事が出来た。

のんびり言い合いを眺めていると、陛下が階段に現れた。

「皆に報告がある。この度、我が義理の息子であるレイチェル・レオナルドの婚約者が決定した。アリスティア・ローズ公爵令嬢だ。アリスティア嬢はセリューム王国を復活させるという功績を残した。よって、レイチェルの婚約者に任命する」

陛下が私を見て、わずかに口角を上げた。

「謹んでお受けいたします」

私がそう言うと、周りから大きな歓声が上がった。

そして、音楽が流れ始めた。

ダンスの時間だ。

「愛しの婚約者殿。どうか私と踊っていただけませんか?」

「かっこ付けないでよ。ほら、行くよ」

エリックがユリアと踊り始めた。

「俺たちも行こう」

「うん」

私とレイも踊り始めた。

「なぁ、アリスティア。本当に俺で良かったのか?」

レイは不安そうな顔で聞いた。

何を心配しているのかは、手に取るように分かる。

レイは、私が無理に婚約したと思っているんだろう。

この七年間、積み上げてきたものがあっても、心配なんだろう。

「うん。私は貴方を弟のように思っていたけれど、今はちゃんと異性としてみているって。私を心の闇から助けてくれた時から、私は少しだけ貴方に惹かれていたんだ。だから、これは政略結婚じゃない。少しだけだった気持も、この七年で、確信のある恋に変わった。だから、後悔もないよ」

「良かった」

レイは少しだけ安心したように笑った。

私はあの時、本当はユリアに……

幽霊少女に救われたかった。

領民を助けた幽霊少女に……

見捨てられたのが辛かった。

攻撃されるのが嫌だった。

人生なんて捨ててやろうと思った。

今私がこうやって、毎日楽しく、明日を楽しみに生きれているのは、皆のおかげだ。

たとえ、もう一度心の闇に飲み込まれたとしても、私はまた思うだろう。


『幽霊少女に救われたい』と

これで、「幽霊少女に救われたい」は完結です。最後まで見てくださり、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ