表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いや、異世界救う前に俺を救えよ  作者: 高橋創将
《ゴースティア》編
5/5

1.5 ワシの大切な、大切な場所

 

 ──そして現在に至る。


 足はガクガク震え、どうすればいいのかもわからず、その場から動くこともできない。


 そりゃそう!いきなりこんな状況パニック!直前の2人の会話も意味わからんし!ミヤ様エレミヤ様神様!助けて!!!???


 ──ガサガサ。


 ビクッ。

 後ろの草むらから音がしたような気がする。うん、気がする。び、敏感になってるだけよ?風で草むら揺れるなんて良くあることだし?


 ──ガサガサ。


 ほ、ほらほら。普通隠れてる系なら2回目も音鳴らすなんてありえないでしょ?だからこれは風──


 ──ガサガサガサガサ!!


 ………。


 ──ガサガサガサガサガサガサガサガサ!!


 耐えきれなくなり後ろを振り返ると。

 2足歩行の奇妙な大きな大きなネズミが勢いよく飛び出してきた。


「ギイヤァァァァァァァァァァァァァァ!!!」


 と、叫ぶの同時、そのネズミが横方向から何者かに斬りつけられる。

 ネズミは血飛沫をあげることなく、まるで魂が消えるかのように燃えるかのように火の玉の形をしながら消えていく。


 俺は恐怖と驚きのあまりその場に尻もちをついていた。目の前にはその『化け物』を斬った人物が立っていた。


 黄金の剣(・・・・)を手に持った刈野緋彩──否、中身はエレミヤである。


「ミ、ヤ……?」


 ミヤは反応することなく躊躇なく斬りかかってきた。だが、刃は緋彩に当たることなく頭数cm上を通り過ぎる。瞬間、後ろから先程と同じように火の玉が消えるような感覚を感じた。それと同時に遅れて風がやってくる。


「──緋彩。無事で良かった。危うく私の体が傷付けられるところだった」


 姿勢を戻しながら緋彩の手を引く。


「…………」


 いつもの緋彩なら後半のセリフに突っ込んでいるところだが、今はそんな余裕はない。


「どうした?怖くてチビったか?」


「なんにもわからん……」


 人はパニックになると騒ぐのではなく、もはや静かになる。そして会話も成り立たない。


「……理解できるかわからんが聞け」


 そこから淡々と事の顛末を話し始めた。


 まず鳥居の前、ミヤが離れるなと言った瞬間緋彩が何者かに押されたかのように鳥居をくぐったらしい。それと同時に緋彩がその場から消えた、らしい。

 その後益喜と口論になったが、自分の体が心配になり鳥居をくぐったのだという。

 そして今に至るらしい。


 どうやら先程の大きなネズミは益喜の言っていた『化け物』らしく、恐らく益喜が召喚しているのだと思われる。確かに『化け物』と言うには相応しく、背丈はほぼ一緒でネズミとは言っても顔は全然可愛くないしむしろ狂気みを感じる。


 鳥居をくぐったらこんな状況、異世界にいるかのような感覚になるのも益喜の仕業なのでは無いかという。


「……うん、なんとなくわかった」


 話を聞いているうちに段々と冷静になってきた緋彩。そして冷静になった頃にミヤの話が終わる。だからこその疑問が頭に浮かぶ。


「……で、その剣は何?」


 黄金に光り輝く神々しい剣。これが一体どこから現れて、なんなのか。おとぎ話でしか、アニメでしか見たことない剣。


「剣だが?」


「うん、剣であることはわかってるんです。一体どういう存在なのか聞いてるんです」


「私の剣。それ以上でもそれ以外でも無い。異世界があるのだから剣もあるに決まっているだろう」


 うん、これ以上聞いても同じような答えしか返ってこない気がするからそういう事にしておこう。でも1つだけ。


「どっから出したんだよその剣。空中にあるとか異世界から召喚したとか?」


「そうだな。召喚みたいなもんだな」


「……体は俺なのに剣出せるんだ」


「そこは私も疑問ではあるが……まぁ恐らく体に付随しているものではなく『魂』に付随しているものなのだろうな」


 ふむ。そういう事なのだろうか。まぁ確かに体に付随しているものであれば、今俺が剣を出したり魔法使えたりするってことだもんな。


 しかしながらリアルで剣を見ることになるとはな。アニメ好きとはしては興奮ものではある。しかしながら俺は表には出さない。それが男たるもの。ここではしゃぐような男は三流も三流。

 しかも金色ってヤバすぎる。強者感半端ない。

 しかもさ聞いて!?体は俺だから、まるで俺が金色ピカピカの剣を操ってる剣士みたいじゃない!?めっちゃ興奮する!!惚れちまうよ!!


 だが、表には出さないぜ──


「──何ニヤついてるんだ気持ち悪いな」


 ──表に出てたみたい。


「さて、ここからどうするかだが。まずは土御門益喜探しだな」


「普通に帰ればダメなの?」


「……ここは益喜が作り出した空間の可能性が高い」


 確かに言われてみればいつもとは違う異様な空気を感じる。『異世界』だと言われても違和感は無い。むしろそう言われた方が納得できるほどの違和感。


「だが恐らくあの鳥居をもう一度通れば帰れる、と思う」


 確信がある訳では無いのか歯切れが悪い。だが俺ですらそう感じる。なんだろう、鳥居の方に懐かしさに似たようなものを感じる。これが現世に対する感覚なのだろうか。


「じゃあ早くその鳥居を通ろう」


「あぁ。普通に通れるとは思えないが──」


 ──キィィィィィィ!!!


 次はミヤの死角からまたも同じく『化け物』のネズミが奇声を上げながら襲いかかってくる。

 だがミヤはそちらを見ることなく易々と斬りすてる。


「──この程度なら簡単だな。行こう」


 瞬間、ミヤが鳥居に向かい走り出す。緋彩もつられて走り出す。


 だが、それを阻むかのように次々とネズミが襲いかかる。


「ギャァァァァァァァ!俺対抗手段ないんですぅうううう!」


 俺は生身の人間なんだよ!!しかも普通の高校生や!!男とはいえこんな『化け物』相手にできるか!!



 何十、何百と斬り倒し。

 そしてようやく鳥居をくぐる。目の前が光に包まれ何も見えなくなる。



「──脱出おめでとうじゃ」


 声が聞こえるのと同時に目をあける。

 目の前には悠々と立つ益喜がいた。


「──死ぬ前に何か言いたいことはあるか?」


 隣の女は殺意増し増しである。殺気が凄すぎる。


「怖いのう。話くらい聞いてくれてもええではないか」


「なんだ早く言え。貴様の返答次第では粛清も視野にはいるぞ」


 え、粛清?何それ怖。


「……先程お主らが空間は確かにワシが作り出した空間じゃ。これは特定の人物以外が通り過ぎた場合発動する、トラップ方式。元々ついているものじゃ」


 何そのトラップ。神社だよね?ここ。死ぬけど普通に?


「ここはワシの住処。そしてワシ(・・)の大切な、大切な場所じゃ。それを守るため、致し方なく付けたのじゃ」


「……でも、そんな誰かに狙われるような事があるのか?」


「先程、安倍から土御門へ性を変えたと言ったじゃろう。性を変えてから何故かは知らんがここに『幽霊』というのかの。得体の知れぬものが現れ始め、この神社を蝕み始めた。ワシは恐らく兄の仕業だとは思うが、土御門に変えてから会ってなくての。今どこにおるのかもわからん。だから、ワシと兄以外の立ち入りを禁じる為、このトラップを仕掛けたわけじゃ」


 うん、なんか急にシリアスになってきたな。性を変えてから急な異変。そして兄の行方不明。偶然とは確かに思えない。


「これは解除が出来なくての。この試練をクリアした者のみ、鳥居をくぐる権利が与えられる。だからお主らはもう自由に出入りできる。ワシはお主らが通れることを信じておったからの。何も言わなかったのはすまないと思っているが、言ったところでやる事は変わらんからの。ほんの遊び心じゃ」


 遊び心でこんな危険な事やめてください?死にかけるところでしたよ???


「まぁ貴様の魂胆はわかっていた。──兄を探したいのだろう?」


 急に横にいたミヤの殺気が消える。

 え?てか何?ミヤはわかってたわけ?


「ふふ。フハハハハ。やはりエレミヤ様には敵わないのう。ご名答じゃ」


 あれ、益喜ってこんな可愛い笑顔するっけ。


「──《レハブアム》ソロモン一族が1人、エレミヤ様。どうかワシに力を貸してはくれないだろうか」


 益喜が頭を下げる。


「ワシはあなたの『魂』を見た時、『異世界』があることを知った。そして《ゴースティア》」


 その《ゴースティア》という言葉にミヤが少し反応した。


「そこに何かヒントがあるのでは無いかと思い、このような真似をした。いや、別の目的もあったが……」


「別の目的……?」


「ワシは『魂』を視れると言ったであろう。しかし緋彩──お主だけは『魂』を視ることはできたが、情報を得ることはできなかった」


 え?どゆこと?


「なんでかはわからぬが、お主の『魂』には何か別の力が働いていて情報が隠されている。まぁ名前や生年月日とかの基本情報やここ最近(・・・・)は視ることはできたがな。出生や生い立ちが視ることができなかった」


 うん、なんでだろう?


「私と『魂』入れ替わった時にバグったのではないか?」


「なんだよそのゲームのバグみたいな。やめてくれよ」


 ──でも1つ心当たりはある。でもあまり関係は無いと思うから言う必要は無いか。


「こういう状況で緋彩の『魂』のバグを直せるかもしれんと思っての」


 おいだからゲームのバグ直す感覚で人を窮地に陥れるなよ。


「──その諸々の剣を含めて貴様らに提案がある」


 突如話を遮って話し始めるミヤ。

 提案という言葉に俺は嫌な予感感じた。だってそれはそうじゃないか。今まで、とは言っても2日間だけだがロクな案が来た試しがない。


 そして、その緋彩の予感は的中する──


「──《ゴースティア》に行かないか?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ