#63・保留と新しい生活
なんで、生まれてきたのか。
息をしているのか、いないのか。
曖昧で日々閉鎖された狭い世界で生きてきたルナという存在。
親からの愛情なんか貰ったこともなく、生まれてきた理由を自問自答する毎日。
生きていることが辛い。
幸せなんて、楽しさなんて。
自分の気持ちを包み隠さず伝えると、サイラス様は何故か今にも泣きそうなくらいに顔を歪めた。
「サイラス、様?」
「ルナ、私と一緒にいた日々は楽しくなかった?」
「え?」
「ここに来てからも、ずっとそんなふうに思っていたのかい?」
ここに来てから?
ハーゲン国に来てからは、死刑にしてもらうこと以外考えていなかった。
でも、ここで過ごす毎日は、とても穏やかで、皆温かく、優しかった。
そして、サイラス様と色々と出かけたりしたあの日々は。
「−−−楽しかったです」
ポツリと本当に小さな声でつぶやく。
ビクトール国での毎日は、淡々としていて、部屋の中ばかり。楽しみなんてまったくなかった。
でも、ここでは、毎日が違うことばかりで、サイラス様が連れて行ってくれる場所は楽しかったし、新鮮だった。
「−−−−−私に、時間をくれないか?」
「?」
「半年−−−−いや、3ヶ月。私に時間をくれ」
「どうしてですか?」
サイラス様は、にっこりと微笑む。
「ルナに−−−−私の側で生きたいと思ってもらえるように頑張るよ」
断ることはもちろんできた。
だって、私はすぐにも死にたいんだから。
でも、どうしてか、サイラス様の笑顔を見たら、断ることが何故かできなかった。
「---では、3ヶ月だけ。それでも、私の意志が変わらなかったら、予定通りにお願いします」
「!あぁ!ありがとう」
サイラス様は、本当に嬉しそうに笑う。
その笑顔は、とてもまぶしく感じた。




