#53・サイラスの登場
ドアが飛んでしまうくらいの勢いで開かれ、雪崩れるように入ってきたのは、サイラス様と騎士の人が数人。
「・・・っ、」
今ここにいるはずのないサイラス様がいる理由は分からない。
でも、サイラス様が来てくれて良かった。
安堵の息を吐けば、途端に全身の痛みが増したように感じる。
「ーーーその手を離せ」
低い、声。
この声はサイラス様のもの?
「---っあら?」
フッとわたしの頭を掴んでいた手が離れた。
少し頭が浮いていたので、そのまま重力に逆らうことなく床に転がる。
やっと、解放された・・・。
手をついて体を起こそうとするけれど、全く力が入らない。
レジナは、立ち上がるとサイラス様の方に近づく。
すると、側にいた騎士たちが護るように立ちはだかる。
サイラス様は、騎士たちの間から身を出すと、腰にある剣を鞘から抜いてレジナに向けた。
「動くな」
レジナは、向けられた剣先に少し怯えて見せ、両手を上げる。
レジナから目を離さず、サイラス様はわたしの側に駆け寄って抱きかかえてくれた。
「ルナ、ルナ」
「さ、いらす、さ」
「今は、喋らなくてもいい」
ギュウッと抱きしめられる。
サイラス様の温もりを側に感じられてわたしは安堵した。
「ちょうどよかったわ」
場の空気を読めない高い声が小屋に響く。
「サイラス様に、会えるなんて、私運がいいわ」
「・・・この女を捕らえろ」
サイラス様に命じられて騎士たちがレジナを囲む。
「捕らえるのは私ではなくてあちらですわよ?」
「?」
騎士たちは首を傾げた。
「大罪人はそちらの女の方ですもの」
「はい?」
「私は、レジナ=ヴィ=ビクトール。サイラス様の婚約者ですわ」
「皇子・・・」
騎士の一人がサイラス様を見る。
サイラス様は、ため息を一つついた。
「そんな戯れ言を・・・早く捕えろ」
「サイラス様!私が本物のレジナです!貴方の妃になるのは私なのです!」
「黙れ!!!」
怒号一発。
声を荒らげるサイラス様は初めて見た。
「今すぐ斬られたくないなら口を閉じろ。−−−捕縛しろ」
「は」
「ちょ、ちょっと何するのよ!私に触らないで!私は、サイラス様の妃よ!」
騎士たちに両肩を抑えられ、レジナは床に座らされる。




