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#52・意味不明な理論




「元々は、私が嫁ぐはずだったの。だから、在るべき形に戻るだけなんだから」


「そ、もそも貴女がこの結婚を拒絶したからこんなことになったのでは?」


「お黙り」



ぐわっと頭を振られて、わたしは床に頭を叩きつけられた。



「っ」


「お前が私に意見していいはずはないのよ。同じ父であっても、お前は所詮は身分の低い女から産まれているんですもの。あの方、サイラス様は私の物。私と結婚した方がサイラス様もいいはずよ」



ふふふ、とレジナが嗤う。

床に頭を押さえつけられながら嗤われているわたしは、腹の底から沸々と湧き上がる怒りとレジナの身勝手さに感情が決壊する。



「あら、泣いているの?」



パタパタと決壊してしまった涙が床に吸い込まれていく。

悔しくて、腹立たしくて、堪らない。

今、ここに剣があれば迷うことなくレジナに突き刺している。

憎い。憎い、憎い。



全ての負の感情を込めてレジナを睨みつける。

それがまた、彼女には気に食わなかったらしく、頭を掴み上げられて床に叩きつけられる。



「っぅ」


「その態度、私にしてもいいわけ?私はハーゲン国の皇太子妃になるのよ?」


「っ、皇太子妃になるのは、貴女ではないわ・・・」


「お黙り!偽物の代わりはもういらないのよ!」



ガンガン、と何度も頭を叩きつけられる。

痛い、痛い。

頭が割れてしまいそう。

これ以上されたらわたしはどうなってしまうのかな。

痛みの中でぼんやりと考える。

余裕があるのか、別の理由があるのか。



あぁ、段々と痛みが和らいできているような錯覚に陥ってきている。



(このまま、ここで死ぬのかな)



今死んでしまったら、わたしの今まではどうなってしまうのか。産まれてから親に愛されることなく過ごし、我儘な姉の身代わりにされ。

国への復讐を誓ったのに、それすらも達成されることなく。



あぁ、なんて、なんて




惨めな人生だったのだろうか。





ーーーサイラス様。



今はここにいない人の名前を心の中で呼ぶ。

全てを知っている彼は、きっとレジナの思い通りにはしてはくれないだろう。

過ごした時間は短かったけれど、優しいあの人のことだ。

きっと、わたしが死んでもわたしが願う通りにビクトール国を滅ぼしてくれる。

約束を守ってくれるはず。



(ーーー短い間だったけど)



サイラス様と過ごした日々はとても暖かかったな。









ーーーーーーバンッ!!!



「ルナ!」



勢いよく開かれたドア。

そして、あの人以外に呼ぶはずのないわたしの本当の名前が聞こえた。



「・・サ、イラスさま・・・」



光が、見えた。




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