#45・庭園で見つけたもの
「はじめまして。サイラス=ル=ハーゲンと申します」
「ははっ礼儀正しい子ですな」
「ええ、期待の後継ですよ」
ガハハッと笑う王。
自分の眉間に皺がギュッと寄る。
あぁ、この人のこと嫌いだ。
今、名前を言ったけど、きっと覚えられることはないだろうな。
父がいる手前、身動きが取れない。
早くこの場から離れたいな、と思いながら、私はジッと耐えた。
「−−−では、私はこれで」
やっと終わった。
時間にしたらほんの数分のことなのに、1時間はいたような錯覚に陥る。
ビクトール国王の元から離れると、ホッと息を吐いた。
「疲れたかい?」
私の様子を見て、父が苦笑しながら聞いてくる。
「少し、疲れました」
「こんな大きなパーティーは、そう無いものね。それに貴方はまだ幼いし・・・」
「父と母は、まだ挨拶回りをしなきゃならないんだ。どこかで休んでおくかい?」
「いいのですか?」
でも、挨拶回りをするなら、一緒について回らないといけないのではないだろうか?
「いいよ。主催者には挨拶したからね。この城から出ないように」
「ありがとうございます」
そう言ってもらえるなら、ありがたく休ませてもらうことにしよう。
誰も来ない場所でゆっくりと休憩したい。
まだ、6歳のこの身には、限界が近かった。
「あら、なら私もサイラスと・・・」
「何を言ってるのかな?キミは、私と挨拶回りの続きだよ」
ニッコリと父は母に笑顔を向けながら言う。
優しい笑みに見えるのに、反抗を許さないとでも言うような顔に、母は諦めて項垂れた。
「私も疲れてますのに・・・」
「終わったら存分に休んでいいから」
「はぁ・・・サイラス、くれぐれも変なところには行かないようにね」
「はい」
父と母は、他の招待客に挨拶回りに行った。
母の肩が少し落ちているように見えた。
なんか、ごめんなさい。
「−−−さて、と」
せっかく許可をもらったから、ゆっくり休める場所を探そう。
パーティー会場を出てすぐに庭へと続く通路を見つけた。
自然と足はそっちに向いて、庭に出ると、綺麗な噴水や花壇が拡がっている。
綺麗な空気が肺を満たして、耳には噴水の水の音と鳥のさえずりが聞こえてくる。
あの国王の城とは思えないくらいに澄んだ場所に思えた。
噴水の近くには、ベンチもおいてある。
休憩するのにちょうど良かった。
「ふぅ・・・疲れた・・・」
ベンチに座ると、ドッと疲れがのしかかってきた。
気を張り詰めていたから相乗効果にもなってる気がする。
「王族って大変だよな」
自分が王族に生まれたことに対しては何かを思うことはないけれど、第三者の目で見てみると、王族って大変だと思う。こんなパーティーとかに参加して、相手国の国王の機嫌を取って、貼り付けた笑みの下には何を隠し持っているか分からないことに対する探り合い。
自分たちの立ち振舞一つで国を潤すこともあれば、滅ぼしてしまうこともある。
1国の上に立つ人間は本当に大変だ。
「私もいつか、なるのだろうか・・・」
そうなったら気が重いなぁ。
6歳なしからぬ思考に突っ込む人は誰もいない。
はぁあ、と何度かわからないくらいのため息をついていると、カサッと音がして音がした方に目を向ける。
−−−とても、綺麗な天使を見つけた。




