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#44・幼き日の記憶




物心ついた頃から、周りには優しい人ばかりだった。



「サイラス」



そう名前を呼んでくれる父や母からは沢山の愛情をもらい、



「サイラス様」



世話をしてくれる侍女や護衛、その他沢山の人に優しくしてもらい、時には厳しくしてもらい、とても恵まれた環境だと思っている。




まだ、6歳になったばかりのある日、私は父と母に呼ばれた。



「どうかしましたか?」


「あのね、来週隣のビクトール国のパーティーに出席するんだけど、一緒に来てくれる?」



隣国のビクトール国。

小国ではあるが、それなりに栄えている国で、我が国との交友もあると聞いている。



「他国に行き、王族たちの様子を見るのも勉強になるだろうと思う」


「はい、わかりました」


「衣装は、もう頼んであるから心配しないでね」


「はい」



自分の国を出て他の国に行くのは、初めてのことだった。

旅行などではなく、王族のパーティー。

緊張しないわけがない。



(二人に迷惑かけないようにしないと・・・)



それからの1週間は、ひたすら勉強と、マナー、ダンスレッスンなどパーティーに向けて必死に準備をした。

ハーゲン国の王族として恥じない振る舞いをしなくてはならない。父と母に、そして国民に恥をかかせないようにと必死だった。

1週間なんてあっという間に過ぎていって、パーティーの当日になった。



「サイラス、そんなに緊張しなくても大丈夫よ」



いつも以上に綺麗に着飾った母に労れながら、隣国ビクトール国へ馬車に乗って向かう。



「そうだぞ。お前はにこやかに笑顔でパーティーを楽しんでいればいいよ」



父もかっこよく着飾っている。

いつもの父と母ではないみたいだ。



「は、はい」


「ハハッ無理はするなよ」



父に頭を撫でられると、緊張が少し和らいだ。



ビクトール国は、ハーゲン国に比べると領土は狭い。

しかし、街はそれなりに活気もあり、人々も生き生きとしている。平和な国なのだろうな、と思った。

パーティーが開催される城も綺麗で清潔に保たれている。

会場には、周辺の王族、貴族の姿があった。

知っている人もいれば、初めて会う人もいる。

父と母にくっついて行きながら、挨拶をして名前を覚える。

6歳の幼い子どもが挨拶をすれば、皆、穏やかな表情で挨拶を返してくれた。

緊張していたので、大人の優しさに安心した。

子どもでよかったなと思ったくらいだった。



その中でも、主催国の国王は−−−正直、苦手だった。



「今日は、来訪感謝します」



玉座に座りにんまりと嗤う男。

隣の王妃が座る椅子は、誰もいない。



「久しぶりですね。お元気そうで」


「おかげさまで」



父は、いつも通りのにこやかな笑みのまま話しかけ、母もその隣で微笑んでいる。



いくら、開催国の王だといえども、大国である父の前で玉座に座りふんぞり返っているのは如何なものだろうか。



(デカイ態度・・・気に入らないな)



「おや、そちらは?」


「あぁ、ご紹介遅れましたな。私の息子です」



急に話を振られてドキリとした。

ずっと、この王を睨むように見ていたので、慌てて礼を取る。





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