#38・思わぬ初対面
ゾッと背筋に冷たいものが襲ってきて、わたしは身震いをした。
目の前には、とても久しぶりに会う父王。
サイラス様の前だからか、にこやかに人の良さそうな顔をしている。
叶うなら、この場で刺してしまいたいけれど、グッと我慢していたときに感じた悪寒。
しかし、周りにはビクトール国の馬車と従者、ハーゲン国の関係者しかいない。
気のせいだったかしら?
チラリと自分の腕を見てみると、鳥肌が立っていた。
気のせいでここまでなるの?
「−−−時に、我が娘、レジナよ」
「っ、はい」
思いがけず名前を呼ばれ、わたしは反応が少し遅れてしまった。
「お前に、土産を持ってきたのだ」
「土産?」
「思えば、こちらに来るときにあまり持たせてなかったと思ってな。あの馬車に乗せているから見てくるといい」
「・・・」
わたしは、チラリと傍らにいるサイラス様の様子を窺う。
サイラス様は、わたしの視線に気づくと、ニッコリと微笑みを返す。
きっと、行っていいよ、という合図だろう。
「では・・・」
わたしは、ゆっくりと父王が言った馬車に近づく。
サイラス様も一緒に来てくれようとしたけど、父王が話を始めたので足止めされてしまった。
仕方ないよね、と思いながらも馬車のドアの前まで来た。
土産?わたしに?なんで?
体裁を取り繕うためだろうか?
わたしになんて掛けるお金がもったいなかっただろうに。
渋々準備したんだろうな、と嘲笑しながら、馬車のドアをゆっくりと開ける。
「・・・え」
グイッと体が引っ張られて馬車の中に引きずり込まれる。
「い、た」
膝をぶつけたみたいで、ジンジン痛む。
「−−−あら、怪我してしまった?ごめんなさい」
顔を上げると、扇子で口元を隠している私と同じくらいの人がいた。
「あなたは、」
「私は、レジナ。レジナ=ヴィ=ビクトールよ」
「!」
レジナ=ヴィ=ビクトール。
わたしの腹違いの姉妹。
そして、本来ならばサイラス様に嫁ぐはずだった姫。
一体、何しに来たっていうの?
「いつまでもそこじゃ汚れるわ。座りなさいな」
「・・・」
馬車の床に座り込んでいたわたしは、立ち上がって向かい側に座る。
膝は、ジンジンからズキズキした痛みに変わってきた。もしかしたら擦り傷でも作ってしまったのかもしれない。
「はじめまして、ですわね」
「・・・そうですね」
「まさか、私に腹違いの姉妹がいるなんて思いもしなかったわ」
同じ思いですよ。
言葉にせずに心の中で返す。
口元は扇子で隠れていて、どんな表情をしているかわからない。
何を考えているのか、馬車の窓は、カーテンがしてあるから外の様子を見ることはできない。
「結婚、おめでとう」
「え、」
急にレジナが祝の言葉を口にする。
「私の代わりとはいえ、貴女には申し訳ないことをしたわ」
「・・・いえ、」
言葉から推察するに、自分の代わりに嫁がせてしまったわたしに、謝罪の言葉を伝えるためにこの人は来たのだろうか?




