#37・我儘姫のミス②
顔も知らない異母妹に、犠牲になってもらおう。
よかった、と一安心だった。
お母様は、お父様の衝撃的な話に心を痛めて部屋に閉じこもることが多くなってしまったけれど。
後日、遠くから異母妹の姿を見に行ってみると、本当にいた。
私に比べると全然かわいくないけど、そこそこ目を引くような容姿はしているみたい。
ごめんね、名前も知らない妹。
私のために知らない国に嫁ぐことになっちゃって。
でも、母は違うけど王族に生まれたことは変わりないんだから仕方ないことなのよ。
私は、自分の平和を手にし、理想の結婚相手を探すことにした。
だけど、お父様が用意する相手は、どれもパッとしない人ばかり。
性格が良くても、顔が良くなかったら全く意味がないじゃない。
この私の横に立っても引けを取らないような素敵な人じゃないと私には釣り合わない。
自分なりにも探してみたけれど、全く見つからなかった。
なんで、すぐに見つかると思っていたのに!
もどかしい気持ちを抱えながら、お父様が私の代わりに嫁いでいった娘の結婚式に行くらしい。
(そういえば、あの子はどうしているかしら?)
隣のしかも大国にだ。
作法なんて付け焼き刃だろうし、私の代わりをしっかり務めているのかな?
(それに、私が嫁ぐはずだった方ってどんな人だったんだろう?)
肖像画とかあればよかったのに、ないって聞いてたし、お父様に聞いたら、親に似てヘラヘラした大したやつじゃないって言うし。
だったら、なんで私を嫁がせようとしたのよって心の中で文句ばっかり言ったものだ。
どうしても気になって、お父様にお願いしてついていくことにした。
馬車の中で耳にタコができるんじゃないかってくらいに言い聞かされて、ハーゲン国に向かう。
−−−初めて見るハーゲン国は、思った以上に大きくて、街は、活気に溢れていた。
王族の住む城も、ビクトール国の私達の住む城よりもずっとずっと大きい。
(---なんて、素敵な場所・・・)
馬車の中からこっそり見たハーゲン国、素晴らしかった。
ここに、あの子がいるの?私の代わりに嫁いで?
−−−本来ならば、私がいたはずの場所に?
お父様が、馬車から降りて、出迎えてくれたハーゲン国の人と話をしている。
どんな人かな、とこっそり盗み見て−−−私は息を呑んだ。
スラリとした体躯だけどそれなりに鍛えている感じが伺える。黒髪の短髪はサラサラ。顔のパーツ一つひとつが整っていて、ふわりとした笑みを見た瞬間に、私の心臓の音が一気に大きくなった。
顔に熱が集まってくる。
え、え、え、とてもカッコいい人。
身長も高いし、私の隣にいても全然問題ないじゃない!
自分の国じゃなく、他所の国に出会いがあったなんて!
後で、お父様に誰か聞いてアプローチしなくっちゃ。
しかし、彼の隣から出てきた人物に、私の中で滾った熱が一気に冷めた。
「−−−え?」
オズオズと出てきたのは、きれいなドレスを身に纏った女性。
表情は、あまりないけど、そこそこ見た目はいい−−−腹違いの妹。
「どういう、こと?」
なんで、あの子がそこにいるの?
隣の美男子があの子に話しかけている。
それはそれは、優しい笑みを浮かべながら。
あの子も、話しかけられていくつか言葉を返している。
え、まさか、あの人が私が嫁ぐはずだった方?
あの綺麗な人が?
「嘘、でしょ・・・?」
瞬間、私の体の中には、さっきとは違う熱がこみ上げてきた。
なんで、あの子がそこにいるの。
そこは、元々私の場所なのに。
ギュウッとドレスを握りしめる。
私の中にはあの子に対する嫉妬と憎しみで覆い尽くされた。




