#36・我儘姫のミス①
ーーー私は、小さい頃からそれはそれは大切に育てられた。
ビクトール国というそんなに大きくはなかったけど、それなりに栄えている国を治める王と王妃の元に私は産まれた。
それはもう、可愛がられて育った。
アレが欲しいって言えば必ず手に入ったし、イヤだ、と言えばしなくてよかった。
私が求めるものは何でも与えられて、いらないと言えば次の日には無くなっていた。物も、人も。
全て自分の思い通りになる中で育った私は、世界が自分中心で回っているのだと信じて疑うことはもちろんなかった。
そんな人生を歩んでいて、16歳になったある日。
「−−−−−え、結婚?」
王と王妃−−−お父様とお母様に呼ばれて行くと、そんなことを言われた。
結婚?誰が?
「相手は、ハーゲン国の皇子だ」
ハーゲン国の皇子?
ハーゲン国と言えば、隣国のとても大きな国だ。
ビクトール国の何倍もあったはず。
なんで、そんな大国と?
「我が国は、丁度いろんな国に行けるルートが出来ている。繋がっていれば、便利だと思っているんだろう」
簡単に言うお父様。
「貴女は、この国の姫だから、私達が言いたいことはわかるわよね?」
王族の政略結婚なんて当たり前だ。
それぞれ利益のためには大切なのだと。
でも、
「−−−いや、です」
ポロッと涙が目からこぼれ落ちた。正確には、涙を無理やり出した、だけど。
「レジナ」
「だって、私、顔も見たこともお話したこともない方に嫁ぐんでしょう?いや、イヤよ」
顔を両手で覆ってその場に崩れる。
お母様が、慌てて私の側に来た。
優しい手で背中を擦ってくれる。
「レジナ、そんなことを言ってもだめよ」
「でも、お母様っ、私本当にイヤよ!私は、自分で好きな人を見つけて、恋をして、その人と結婚したい。自分で見つけたいわ!」
涙をポロポロ流しながら訴える。
「レジナ、王族に生まれたからには、それは難しいって分かっているでしょう?それに、結婚してからだって相手の人と恋をすればいいじゃない。順番が変わるだけよ」
「イヤよ。顔も見たことないのに?結婚して、顔が好みじゃなかったら?話が合わなかったら?私を愛してくれなかったら?っそんなの辛いわっ」
「レジナ・・・」
困った顔のお母様。
お母様を困らせたいわけじゃないけど、ここは譲れない。
「−−−そんなに、嫌か?」
黙って私とお母様の様子を見ていたお父様が、口を挟んできた。
私は、お父様の方を見て、何度も頷いた。
すると、お父様少し悩んだような表情を見せたあと、一つ頷いた。
「わかった」
「ほんと!?」
「あなた!?」
私は喜び、お母様は驚いた。
そして、次のお父様の言葉に絶句した。
「代わりの娘に嫁がせることにする」
「−−−え」
聞くと、実は私には腹違いの妹がいるということを知った。
信じられないことだったけれど、お父様は真面目に話している。
お母様も、初めて聞いた話だったらしく、顔を真っ青にさせている。
「ということで、レジナ。お前が嫁ぐことはない」
「お父様・・・!ありがとうございます!」
寝耳に水なことだったけれど、私が嫁ぐことがなくなったなら万々歳だ。




