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#35・愚王の思惑②



−−−羨ましい。



自分の国に不満などはないが、やはり豪華絢爛なものを見るとそう思ってしまうのは仕方ないと思う。



(ここに住んでいるのが、あのハーゲン国王・・・)



あんな飄々として一国の王らしくない奴の国がこんなに栄えるものか?

あぁ、もしかして、周りの家臣たちが優秀なのだろうか?

きっとそうに違いない。

儂の国の家臣は、忠誠心はそれなりにあるが、優秀さと問われると今ひとつだ。

この国ほどの家臣がいれば、もっともっと大きくなっていることだろう。


ここには儂の娘が皇太子に嫁いだ。前に、あの娘に手紙を送った。本当のことがバレていないかの確認と、ハーゲン国の内情を聞き出し、子どもは男子を産むこと。

儂の血は薄くはなるが、血縁者にはなる。

そうなれば、この国の内情に口を挟みやすくする。

少しずつ、少しずつあの娘を介して侵入していけば、全て賢い儂のものになっていく。



(この大国は、いずれ儂のもの・・・)



なんと、素敵なことか。

あの娘も、儂の役に立てるなら喜ぶに違いない。

生まれて秘密裏に消すことも出来たが、その選択肢が浮かばなかったのは、すべてこの時のため。

あの娘も生かしてもらった恩に報いれるから喜んで儂のために働くことだろう。



あぁ、時間はかかるだろうが、この国はいずれ自分のものになる。



そう考えるだけでニヤケ顔が止まらない。



「お父様、どうしたの?」


「ん?いや、儂は神に愛されているんだなと再確認したのだ」


「?そう?」


「ほら、もう着くぞ」




馬車の進む速度がゆっくりと落ちていく。



窓からこっそり見れば、城門のすぐ側まできていた。



「レジナ、もうすぐ着く。いいな?」


「分かっていますわ」



レジナは、少し頬を膨らませながら、持ってきていた大きな白い布を頭から被る。

すっぽりと収まり、微動だにしなければ、荷物にしか見えないだろう。





馬車が、ゆっくりと止まった。

外側から、ドアが開けられる。

なるべく、外から中が見えないよう、素早く降りた。



「ーーー遠路はるばるようこそ、ビクトール国王」



儂を出迎えたのは、ハーゲン国王、そして王妃、皇太子と思われる若造・・・と儂の娘だ。



「いやはや、ハーゲン国王、お久しぶりですな」


「お元気そうで何よりだ」



にこやかに会話をしつつ、視界に映る娘を確認する。

随分と垢が抜けたように感じる。ドレスを着ているその姿は、王族と見間違うくらいだ。



「ーーー紹介がまだでしたね。息子のサイラスです」


「はじめまして。サイラスと申します」



ハーゲン国王に紹介されて一歩前に出た若者は、それはそれは整った容貌だった。

身長も高く、雰囲気もハーゲン国王に似て柔らかい。

こんな美男子だったのか。



ハッと儂は、馬車を振り返る。

レジナがこっそりと見ている。

自分が本当に嫁ぐはずだった相手を見て、どう思っただろうか。



(余計なことを考えてなければいいが)



「ビクトール王?」


「あぁ、いや、とても良く出来た息子さんですな」


「私には勿体無いくらいの息子ですよ」



ハーゲン国王は、ニコニコと笑みが絶えない。



「こんな息子に、娘さんを下さり感謝してますよ」


「あ、あぁ・・・」


「レジナ嬢、ほら、遠慮せずに前においで」



王に促され、娘がおずおずと前に出てくる。



「ーーー久しぶりだな」


「はい、」



頭を下げる娘の所作は、儂から見ても綺麗だった。

うむ、しっかりとやっているようだ。



ハーゲン国の連中を見れば、娘が偽物にも気づいていないようだし、受け入れてもらっているようだ。



安心した。これなら、儂の思い通りに事が運べる。




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