#34・大国ハーゲン国
程なくして、ハーゲン国に出発する日となった。
裏側はどうであれ、表向きは娘の結婚を祝うということで、祝い品を沢山用意した。
本来ならば、あの娘にやるには惜しいものばかり。
仕方ないと思いつつ恨めしい気持ちになってしまう。
「お父様、私が結婚するときは、もっと下さりますか?」
祝い品が積まれていく様子を眺めていたレジナがポソリと呟く。
「当たり前だ。これの倍・・・いや、3倍は準備するよ」
「ありがとうございます!」
儂の言葉に機嫌よくしたレジナは、軽い足取りで馬車に乗り込む。
可愛らしい様子にほっこりとした気持ちを感じながら、儂も馬車に乗り込む。
馬車の中で、儂は念の為にもう一度レジナに確認した。
馬車の中からはなるべく顔を出さないこと。
到着したときには、馬車の中からこっそりと見ること、あの娘との会話は最小限にすることなど、細かく言った。
レジナは、ニコニコと微笑みながら頷く。
「大丈夫ですわ。なんの問題もないですわ」
「ならよい」
「ふふ、お父様は心配しすぎです」
心配はする。
もし、何かあれば、儂らはおしまいなのだから。
本当は、レジナを連れてくるべきではなかったとは分かっていたのだが、ここは仕方がない。
「そういえば、お母様はいかれないのですか?」
「・・・自分の娘の結婚式じゃないから行かないと篭ってしまったよ」
レジナの母、つまり王妃は、儂が他所で子どもを産ませていたことに心底腹を立て儂を拒絶し、部屋に引きこもるようになってしまった。
会話をすることもほとんどなくなったし、今回の結婚式の話もドア越しにヒステリックを出された。
説得することは諦め、ハーゲン国には体調が悪いと言って乗り切るつもりだ。
「あらまぁ」
「レジナは、王妃に会っていないのかい?」
「毎日お会いしてますが、私にはとても優しいですわ」
「そうか」
王妃とは、所謂政略結婚ではあったが、仲が良い方だと思っていた。
一度の鬱憤ばらしがこんなことになるなんてあの時の儂は微塵も思っていなかったに違いない。
「あ、お父様、ハーゲン国が見えてきましたよ!」
馬車に着けさせたカーテンの隙間からレジナがこっそりと外を眺める。
今回、ハーゲン国には公式の訪問になる。
前に来たときは、会合の時だったか、久しく訪れていなかったな。
レジナと同じようにこっそりと外を見てみる。
まず目に入ったのは、巨大な門だ。
両側に警備が立ち、厳重だ。
儂らは、公式な訪問であるから細かく身分証明をする必要はなかった。
中に入ると、一気に明るさ、活気を馬車の中でも感じられた。
さすが、大国、と言えばそれまでだが、人も多く、賑わっているようだ。
異国の人間に対しても寛容で歓迎してくれているようにも見てる。
前に訪れたときはだいぶ前だったが、こんなに活気強かっただろうか?
「お父様、ハーゲン国の城はとても大きいのですね」
「そうだな」
そして、城の大きさと言ったら、ビクトール国の城の何倍もあるような大きさだ。
一国の象徴。城が大きければ大きいほど力を持っていることを表している。




