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#32・羨望③




王と王妃から逃げるように部屋に戻ってきてしまった。

綺麗なドレスを着たままベッドに飛び込む。

ハンナに見つかったら怒られるかな。

そんなことを思いながらもベッドから動きたくなかったので寝転がったままだ。



「はぁ・・・王と王妃、良い人だったな」



一国の王と王妃。そして、サイラス様の両親。

穏やかでわたしなんかにもとても優しかった。

この両親だから、サイラス様の気性も柔らかいのだろうか。



自分の父や母とは真逆の存在。

子は親を選ぶことはもちろんできないけれど、王と王妃のような優しい人の元に産まれたのならわたしはまた違う人生を歩んでいたのだろうか?



「−−−羨ましいな、」



サイラス様がとても、羨ましい。

心の底からそう思ってしまった。



一人、ぼんやりと天蓋を眺めていると、バタバタと廊下が煩い。



−−−バタン!



「ルナ!」


「っサイラス様!?」



乗り込んできたのは、息を切らせたサイラス様で、どこから走ってきたのか汗も掻いている。というよりも、今、大きな声で「ルナ」って言ったよね?この人!?



「聞いたぞ、父と母に呼び出されたと・・・」


「えぇ、そうですが、それよりも・・・」


「何か言われたか?あの二人だからあまり心配してはいないが、万が一のことがある。ルナ、包み隠さず何があったか話して?」



わたしが慌ててベッドから抜け出して、サイラス様はズンズンとわたしの前まで来て肩を掴む。



「お二人はとてもわたしに良くしてくださいました。優しかったです」


「なら、良かった。突然のことで、私も執務から抜け出せなくてね」


「大丈夫でした。あと、サイラス様。わたしの名前はレジナです」


「え?」


「レ・ジ・ナ。大きな声でルナと呼ばないで」


「悪い・・・」



あっ、とサイラス様は口を閉じる。

無意識の内にルナと呼んでいたんだろう。

誰かに聞かれてしまったらいけない。



「気をつける・・・」


「お願いしますね」


「で、本当に両親からは何も言われなかったのか?」



まだ、納得いっていないらしい。

わたしは肩を竦めた。



「本当に、何も。わたしは包み隠さず全てをお話しました。王様と王妃様に中々会えず、黙っておくこともいけないことだと思っていましたので」


「全て?」


「もちろんです。ですが、王妃様は聞いてもなおわたしを娘と言ってくださいました」


「母が?」


「とても、とても優しくて・・・」



自分のしようとしていることがあの二人に迷惑をかけることになると思うと胸が痛む。でも、全て終わったときには必ず償うから許してほしい。



「何もなかったなら本当よかったが・・・」


「サイラス様のご両親はとても素敵でした」


「ん?まぁ、腹黒いところはあるけれど、一国を治める王族としてはとても尊敬しているよ」


「そうですか」



きっと、あの二人だからこそ周りはついていきたいと思うのであろう。

王とは、王妃とは、そのような存在でなければならないのだから。




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