#27・二人っきりのピクニック②
「すてきな場所ですね」
「うん。ここを作ってくれた母には感謝してるよ」
サイラス様の母である皇后様は、とても花が好きな方なのだそうだ。
元々は、何もなかったこの場所を花畑にしようと、自ら作ったようだ。人に指示するだけでも許される立場であるのに、自分でしたいほど、花が好きなのね。
何年もかけて少しずつ少しずつ花の種類を増やしていって、こうして素敵な花畑になった。
「気に入ってくれたなら良かった」
「はい・・・こんな、きれいな景色、初めて見ました」
素直に綺麗だと思える。
ここだけ、別世界に来ているみたいで−−−まるで、昔絵本で読んだ天上の世界みたい。
「ここは、いつでも来ていいよ。誰かに言ってからならね」
「いつでも・・・」
「そう。ルナ嬢が見たいときにいつでも」
サイラス様を見ると、とても優しい目でわたしを見ている。
そんな、優しい目でわたしを見ないで。
「−−−今日だけで十分です」
「ルナ嬢?」
「最期に綺麗な景色を見れて、満足です」
もうすぐわたしは死ぬ。
その時まで、もうここに来ることはないと思う。
そんな時間はなくなるはず。
すると、サイラス様は何故かため息をついた。
「どうして、貴女はそんな考えなんでしょう」
「え?」
「次を、願わないのか?」
願ってどうなるんだろう?
「わたしは、死ぬことが確定している身です。もうすぐなのに、次を願うなんて・・・意味がありますか?」
こうやって、サイラス様とピクニックに行っていることですら不思議だ。
優遇される理由がない。牢獄の中にいても仕方ないはずなのに。
すると、またため息が聞こえてきた。
「貴女は、そればかりだな」
「そのためだけに、わたしは今ここにいるのですから」
「−−−そうだったね」
「はい」
祖国を、自分の家族を滅ぼしたくて身代わりで来たんだ。わたしの計画は、自分の国がなくなり、わたし自身も死ぬことで達成される。それが、今、わたしの生きる意味。
「−−−だとしても、」
ふわりと、頭の上に何かが乗せられた。
「え」
ソッと頭の上に乗った物に触れてみる。
ふわふわとしてる?
おずおずと取ってみると、いつの間に作ったのか花で作られた冠だった。
「小さい頃からよく母に作ってもらって覚えたんだ」
「綺麗・・・」
「もうずっと作ってなかったから自信なかったけど完成できて良かったよ」
ニコニコとサイラス様は上機嫌だ。
冠をジッと見つめる。
「貴女の考えを覆すのは、至難の業だろうけど、今は、この瞬間は全部を忘れて過ごしてもいいんじゃないかな?」
「サイラス様?」
「何にも考えないで、ただ花がキレイだなって思いながら次来たときは何の花が咲いてるかな、とかさ」
「・・・」
サイラス様を見ると、特にわたしの言葉を待っている様子ではなかった。
穏やかな表情で花を眺めている。
(何も考えないで、か)
前も思ったけれど、純粋に王族として生きてきて、何にも囚われずにサイラス様の元に嫁いできていた一国の姫であったならばできたことだろうな。
長年、積み重なった内に秘めた憎しみは簡単には忘れられない。早く解き放ちたくて仕方がないのだ。




