#21・ちょっと寝てしまっただけなのに
部屋に戻ったわたしは、そのままベッドにダイブした。
「やってしまった・・・」
先程までの自分の行動を省みる。
手紙の内容に頭に血が上ってしまって、無作法なことをしてしまった。
サイラス様が優しい方だったから良かったけど、違ったら大事だった。
あ、いやそっちの方が処罰されるから良かった?
でも、サイラス様は、ビクトール国が滅んだらわたしを死刑にしてくれると言っていた。
幸いにもわたしは王宮の数少ない人たちにしか顔が割れていない。
国民にも、初めて国に来た時は馬車の中で顔は晒さなかったから大丈夫。
国家を欺いた国の姫なんて歓迎されるはずもないから、盛大に処刑されるに違いない。
「予定とはズレてしまったけど、末路は同じ・・・になるかしら」
遠回りしたと思えばいいよね。
ゴロンと寝転がって天蓋の天井を見つめる。
「17年・・・とても、とても長かったわ」
ようやく、終わらせることができる。
ビクトール国なんて早く早くなくなれ。
「ふぁ・・・なんだか、とても眠い・・・」
体が怠い。
精神的に疲れてしまった。
ふかふかのベッドの感触も相まって、わたしは気がついたらそのまま眠ってしまった。
(温かい・・・)
全身を包む心地いい温もり。
不思議。
いつも冷たいベッドで身を丸くさせながら寝ていた。温かいなんてことなかった。
落ち着く。気持ちがいい、安心する。
ずっと、ずっとこの温もりに包まれていたいな・・・。
「・・・・・ぇ」
パチっと目を開け、わたしはすぐに状況判断が出来なかった。
目の前が真っ白。
頭の上から、わたしのものではない規則正しい息遣いが聞こえてくる。
そして、わたしを包む温もり。
瞬きを数回。
ゆっくり、ゆっくりと首がギギギ、なんて変な音を立てそうな位にゆっくりと首だけ上を向く。
「−−−ヒ、」
整った容貌。サラサラの短髪。目を閉じている姿すら女が嫉妬しそうなくらいに美しい。きっと閉じられた瞼の下に隠れている瞳は、綺麗なアメジスト。
思ったよりもガッシリとしている体躯は、日々トレーニングを欠かしていない。
とても、男らしい体。
いやいや、マジマジと解説している時間ではないでしょう!
「な、んで・・・」
「−−−−−−ん、」
微かに身動ぎをする。
シーツに頬を擦り寄せる姿は、猫っぽいな、なんて思ってしまった。
と、とりあえず離れなきゃ。
ハッと我にかえって、わたしは温もりの中から離れようとする。
しかし、背中にガッシリと腕が回っていて動けない。しかも、わたしが今動いたからなのか、逃さないと言わんばかりに足が絡められてしまった。
わわわわわ!
ど、どうしよう!さらに動けなくなってしまった。
誰か、助けてくれないかしら!
一人でアワアワしていると、「フハッ」と小さな噴き出し音が聞こえてきた。
上を向くと、いつの間にか起きていたのか肩を震わせながらわたしの様子を見ているサイラス様がいた。
「・・・起きていたのですか」
「今ね。必死に抜け出そうとしていた貴女に思わず笑ってしまったよ」
フフ、とサイラス様の笑いは止まらない。




