#15・レイモンド=ルル
護衛という名の監視ということね。
自分の命惜しさに、何かされては怖いもの。
そんな心配必要ないですよ、と言ってもわたしの死刑とビクトール国の壊滅がない限りは安心なんてできないだろう。
うんうん、と1人頷いていると、わたしの行動にサイラス様が首を傾ける。
「レジナ嬢?」
「わかりました。レイモンド様、よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げるとレイモンド様は、慌て始める。
「いや、俺は『様』なんてつけてもらう立場ではないので、レイモンドと呼んでください」
「?そうなのですか」
「敬語も不要です!」
でも、騎士団の副団長って偉い人なんじゃないのかな?
「そうだよ。貴女は私の妃、私たちが敬うのは私の両親だけだよ」
「・・・そうですね」
そうだ。わたしは自覚なんてなかったけど、身分はとても高い場所にあるんだった。
ビクトール国のいた最後の1週間で学んだ。
その立場にあった立ち振舞いをすること。
偽物は偽物らしく。でも、本物になる。
「では、よろしくお願いしますね。レイモンド」
ニッコリと笑ってみせると、レイモンドは一瞬呆けた顔をする。
そんなレイモンドをサイラス様が睨みつける。
「レイモンド」
「あ、いや、すまない。えらく、美人でな」
「ふざけるな。その目焼くぞ」
「怖い怖い」
あれ、急に口調が変わった?
丁寧な話し方が砕けた感じに。
敬語もなくなった。
ジッとレイモンドの様子を伺うと、サイラス様が嫌そうに言葉を足す。
「このレイモンドは、乳兄弟なんだ。物心ついたころからの腐れ縁なんだ」
「親友って言ってくれてもいいんだぜ?」
「寝言は寝て言え」
なるほど、そういうことなのね。
「改めて、レジナ様。このレイモンドをよろしくお願いします。気兼ねなく使ってくれていい。こいつの文句も聞きますから」
「レイモンド」
悪戯っ子のような顔で言うレイモンドを睨みつけるサイラス様。
二人の間には、絶対的な信頼が見えていて、羨ましいなって思ってしまった。
わたしにとって、サラがそうだった。
サラ、元気かしら。
置いてきてしまったこと怒ってたものね。
決意が鈍ってしまいそうだったから、見送りもさせなかった。
−−−嫌われてしまったわよね。
「レジナ嬢?」
「!」
名前を呼ばれてハッとする。
感傷に浸っていたら、心配そうな目で見られた。
いけないいけない。
わたしは、気を引き締める意味を込めて言葉を紡いだ。
「サイラス様、朝議の結果はどうなりましたか?」




