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末席の勇者と英雄病賢者  作者: クサカリタスク
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第二章2 『転校してきた少女』

「自己紹介をどうぞ」


「ミナス=ラナンキュラスですっ。どうぞミナって呼んでください。これからよろしくお願い致しますっ。好きな食べ物はアップルパイ。好きなタイプは正義の味方です」


「そこまで紹介しなくてもいいです……」


「アレ? そうでしたか!!」


 男女共に歓迎の声と拍手が湧く。可愛い女性クラスメイトが増えるのはさながら、自己紹介から人懐っこさが窺える。しかも挨拶と同時に咲かせた笑顔はクラスの男子を虜にした。

 普通はこういう女性は何かと因縁がつけられて同性に嫌われそうなものだが教室を見渡す限りそんなことはない。もともと学院全体では女性が少なく男性が大部分を占める。同性の仲間が増えたのは素直に喜ばしいのだろう。


 まぁ、ただ一人は彼女を大いに警戒していたのだが。


「ラナンキュラスさん。カーライン君の隣へ」


「はいっ」


 担任教師はシルクの隣にミナスの席を用意する。シルクの隣は空席であり、そこしか空いていなかったのが重な理由だ。それこそ何かと因縁をつけられるシルクの隣に座りたいと思う酔狂な生徒はいない。


「よろしくお願いしますね。シルクさんっ!!」


「……あ……うん………」


 昨日の今日で無様な姿を晒してしまったシルクは彼女の目を合わせることができない。

 女性に対する男性由来の恥ずかしさというよりも、ばつが悪いって感じだ。


「……あの女……シルクに、近すぎ。ありえない」


「ひえええっっっ。冷たいっ。冷たいです。ノースダリアさん!! 凍る!! 私の右腕が凍りますっ!! ああ、徐々に感覚が!! 右腕の感覚がありません!!」


「ちょっと、黙って? うるさい、よ?」


「り、理不尽ですぅっっっ!!」


 シルクのクラスメイト、女性の中で唯一歓迎のオーラを出さなかったファルティナは斜め後方で仲良く話をしているように見える二人凝望していた。メイドのコルンは授業中外で待機。隣に座っているのは教室随一の気弱な女性クラスメイトだ。


【固有能力】は魔力を込めると使うことができる。『魔力を込める』というのは基本意識的に行うものであるが、感情の昂りによっては無意識に『込めてしまう』時もある。


 ファルティナは魔力を無意識に流してしまい、氷を形成するほどではないが、一番近くにいた生徒の腕に霜を降ろすぐらいの影響を与えていた。

 なんだあの女は。シルクの隣は私の特等席だぞ。教師に打診しても手に入らなかったその席になぜお前が座れる————とファルティナは睨む。


 それに————。


「……あの胸……許せん」


「許してくださいぃぃぃ!!」


 自分には無いものを持つ彼女に嫉妬する。アレでシルクが誘惑されるのでは無いかとも心配になるファルティナ。そんな下世話なことを考えているとは思いも依らず、許しを乞う気弱な子の声はファルティナの耳には届かなかった。


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