第六章17 『ボロボロ』
シルクの生み出した最高の突きの貫通力がダレンの皮膚の防御力に負けた。
前傾姿勢であったシルクは耐性を崩す。
刀は握っているか、力は籠っておらず宙へ弾かれ、敵に正面を向けたまま、衝突の反動で後方に吹き飛ばされる。
「グッ————ハッ……」
「軽い、軽いぞ少年。先の力はどうした? 我を死の淵に追いやろうとしたあの必殺剣はどうした?」
ダレンはシルクの首根っこを掴み、上へ掲げた。
片手でもシルクの首をしっかりと握るダレンの硬い手には力が入り、頸椎が軋みを上げる。
シルクの頭に酸素が回らなくなる。
加えて魔力が底を尽きようとしている。
全身ボロボロで体力も限界だ。
「つまらん、つまらないぞ。少年!!」
「ガァ、ダッ……」
ダレンに投げ飛ばされ、地面に衝突する。
魔力を流して身体強化もしなければ、受け身も取っていない。
落下時の衝撃がシルクの全身を渡り、内臓の一部が破けた。
余りの痛さに意識を飛ばしそうになるシルク。
再現した刀は消え去り、彼は大きく咳き込んで吐血。
頭部からの出血も酷く、顔に血の太い赤線が出来ている。
痙攣し、身体が言うことを聞かない。
力が入らず、意識はあるのにまるで人形のようにぐったりとしている。
「第一ラウンドが良かっただけに残念だ。我をあそこまで追い詰めるとはかなり期待したのだが。所詮勢いまかせのラッキーパンチに過ぎなかったのか?」
「単純に魔力が切れたのでしょう。我々と違って人間族は内包量少ないですから。ああそうだ。いいことを思いつきました。————ほら」
ピルトの隣の青黒い球体が解け、ミナスが解放される。
急な背景の変化に一瞬戸惑う様子を見せるミナスだが、前方に倒れている茶髪を見て彼女は叫んだ。
「シ……シルクさん……? シルクさん!! 目を覚ましてくださいシルクさん!! 貴方達よくも……よくもシルクさんを!!」
「おっと暴れないでくださいよ賢者。他の皆さんも彼みたいになりますよ? あと、貴女との約束の話ですが、彼から私達を襲ってきたので正当防衛ということで許してください。いいですね? 私達だって約束は破りたくなかった」
もがくミナスの頭を押さえつけ、彼女を拘束する。
ミナスが変な気を起こすと周りの皆もこうなるぞという脅しと、彼女の心を折るのがピルトの目的だった。
「……ピルトお前。最低だな」
「最低で結構ですよ。魔族は人間を痛めつけてなんぼですから。寧ろ貴方みたいなタイプが珍しいんです。それよりも————」




