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末席の勇者と英雄病賢者  作者: クサカリタスク
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第六章4 『一方的な再戦』

 依然三人に背中を向けたまま白髪は語る。


「この気、汝、以前我の決闘を邪魔した男だな?」


「……だったらどうする」


 レンは素直に答えない。

 もし素直に答えたらどうなるのか大凡予想がついている。


 白髪は首を傾けギロリとレンを睨む。片目の紅玉がレンを射殺すように鋭く光った。


「我には大義がある。汝を二刀の錆へ変える大義がある。——————その首貰い受ける」


 白髪は体を翻しレンに襲いかかった。

 二刀が煌めき、その刃をレンの肩口へと伸ばす。

 剣圧に風が巻き起こるも音は一切出さない異様な剣閃がレンを捉えた。


 ——————だが、その攻撃は彼の両手で受け止められる。


「——————ほう?」


 白髪は瞬時に距離を取る。

 二刀は接触部から魔素へと還り、徐々に剣身が失われて行く。

 レンは音を超えた速度の鋭く鈍重な二つの剣閃を受けたにも拘らず両拳が砕けたような様子はない。

 脂汗をかきながら両手をひらひらと仰いでいる。


「腐食? 切削? いや、存在を抉った? ——————面白い。【装填】。《再現・開始》」


 シルクの知識を引き出しているのか、絶対に壊れないはずの【武装展開】の産物である二刀が粒子に還る不可思議な現象に白髪は笑う。

【装填】と白髪は言うと、削れた部分が元の形に修復された。


「以前、我もその面妖な手に触れられ消された。今回も同じことと考えるのが妥当であろう。——————ならば、その両の手に触れなければいいだけのことよ」


 白髪の剣士は一気に距離を詰める。

 狙うのはレンの胴。


「いや…俺はそう勢いで突っ込まれると困るんだがな」


 対するレンも自ら敵に突進を仕掛ける。

 後ろに引いたら隙を突かれて殺される。

 ならば自ら前に出てチャンスを待つのみ。

 両手で二刀を追い、いつでも反応できるようにする。

 先程の剣も常人には追える速度を優に超えていた。

 だが、それに対応出来たということは防御を捨てて二刀に触れることに注力すればなんとかなる。

 彼はそう考えた。


 だが、その判断が甘かったことをレンは悟る。


「(さっきより剣速が上がっている!?)」


 離さないように追っていた手が剣に追いつけない。

 しかも二刀が対照ではなく微妙にズレて動いていることがレンの思考を鈍らせた。

 白髪の剣士は一層加速する。音を超え光を超え、神にその一撃を与えんとする最強の剣撃をレンに浴びせようとする。


 一秒にも満たない刹那の死合い。


 何百倍にも加速されたレンの脳は音と色を失った世界で濃密な『死』の気配を感じ取る。


「勢ィ!! ——————何?」


 鋏のように敵を挟む二本の刀が突如その動きを止める。

 カタカタカタと刃は震えるも一向に前に進もうとしない。

 意思と体が拮抗しあっている。一つの体に混じりあう二つの魂が衝突している。


「——————よくやったカーライン」


『死』に瀕したスタン状態から脱したレンはその両手を、己を肉片に変えんとする二刀に触れ、次に白髪の顔面に触れる。


「——————ァ」


 二刀は消失し白髪の顔から生気が失われる。

 髪は白から茶に。盛り上がった筋肉は萎む。

 肉体から異物を排除した少年は膝から倒れ落ちた。


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