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末席の勇者と英雄病賢者  作者: クサカリタスク
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第五・五章2 『無力感』

「カーラインはどうだった?」


「……泣いていました」


「……そうか」


 ミナスは保健塔を出ると石壁に背中を預けるレンの姿が。


「今回の件、お前は悪くない。そう思い詰めるな」


「くっ……。ですが……」


「『ですが』も何もない。アイツは剣が折れていなければ勝ちは確実だった。なのに『無効試合』扱いされたのはエストリッチ家が力を働かせたからだろう。平民に、ましてや【末席】に負けたと知られたら示しがつかない。お前が今やるべきことはその証拠を掴むことだけだ。アイツを救いたいならな」


「はい……」


「はぁ……。どうした? まだあの暴走がお前のせいだと思っているのか?」


『あの暴走』とはシルクの一時的な変身のことだった。

 あの場ではシルクが容姿を変えたことしか観客は気付かなかったがミナスだけは違った。

 あの白髪に二刀。特殊に纏め上げた伸びた髪。

 アレは『日之出国五輪之侍』のベースとなった人物に酷似していた。だからミナスは真っ先にあの狂乱は自分に端を発したものだと分かってしまった。

 余計に辛く苦しく、もしもシルクが目を覚まさなかった時はどう責任を取ればいいのか深く悩んだ。


「アレはお前のせいじゃない。アレに『誰が悪いか』を決めようとするのは間違っている。もし無理にでも『悪者』を決めるならカーライン本人だ。お前はナイフを渡しただけ。ナイフを使って自分に刺したのはカーラインだ。きっかけは作ってしまってもそれ行使したのはアイツ自身なんだから」


 レンは自身の右手の平を見つめる。

 あの時、シルクとヴォルトの取り返しのつかない危機を感じ取り、白煙球を投げて試合を妨害

 。そして自身の【固有能力】でシルクの暴走を消し去った。

 これは完全に身勝手な判断の独断専行だった。

 もし彼が介入しなければ事態はもっと大変なことになっていただろうが、彼自身も責任を感じている。シルクのあの健闘を『無効試合』と無かったことにした直接の原因は彼なのだから。

 ミナスが辛い顔をするとレンも余計に辛くなる。


「今アイツにしてやれること。それだけを考えよう。カザリもそのために動いている」


「はい……」


 英雄に憧れる少女は顔が晴れない。

 いつも咲かせる向日葵のような笑顔は枯れ切っている。


 ミナスは今日、初めて無力感に打ち拉がれたのだった。


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