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末席の勇者と英雄病賢者  作者: クサカリタスク
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第四章4 『陰謀3』

 王国軍本部監視塔。二人は二日連続で業務に励んでいた。


 監視対象が妨害系の魔道具を使った時は肝を冷やしたが、レナの魔眼の一つである【看破の魔眼】の強度はそれを上回った。【遠見の魔眼】【透視の魔眼】【看破の魔眼】の三重状態をずっと続けているが彼女に疲れは見られない。瞳は三色の光で輝いている。


「対象。学生街に侵入しました」


「よろしい。そのまま監視を続けてくれたまえよ、レナ」


「……。私は貴方の秘書であって、監視人ではないのですが?」


「おっと!? 今、『貴方』の秘書って言った!? 言ったよね!? あんなに『王国』に雇われているを強調していたレナが。とうとう、『この僕』の秘書って言ったよね!? デレた? 長年の苦労の甲斐があってデレましたか? よーしすぐに二人で退職届を出して結婚だ。長閑で過ごしやすく、交通の便も良くて尚且つ人柄も良い田舎町を知っている。さぁ引っ越しの準備だ。こんなことはしていられない。さぁ早く行こう。さぁ早く!!」


「貴方がこの状況を作り出しておいて放り出すって鬼ですか!? 王国滅亡の主犯にされて、追われる身になりますよ!? どうやって長閑に過ごすっていうんですか!?」


「退職して結婚までは受け入れてくれているのかな? なんだいレナ。そんなに好感度が高かったなら先に言ってくれ。夜這いでも布団に忍び込むでも寝込みを襲うでもしたのに」


「そういうことじゃありません!! ん〜〜〜。もうっ!!」


 普段の冷静さが奪われ、ガイのペースに飲み込まれるレナは顔を真っ赤にする。

 若干満更でもなさそうなその反応にガイは「あれ? 本当にもう一押しだったりする?」と言うと、レナは彼の右頬に張り手を食らわす。


「……とは言え。計画通りだよ。勿論レナのデレ具合————————————ごめん、ごめんって。右を差し出したら左も差し出さなきゃいけない理屈なんてない。マジで。本当に」


 自分の軽口で自ら窮地に立つガイは涙目で左手を大きく宙に掲げるレナを宥める。


「いやー。痛かった。この頬の痛みは一生残るね。是非とも責任をとって————」


「もう私、ガイとは口を聞きません」


「その反応とても可愛いけれど、それはそれで困るからこれ以上のおふざけは止めにしよう。——————それで、だ」


 ガイの雰囲気が一変する。

 おちゃらけた態度から一秒もしないで厳かに緊張感を孕んだ空気が彼から漏れ出す。

 彼の雰囲気に当てられ、一瞬体を硬直させるレナ。

 ガイのこの一瞬の思考の切り替えがレナの彼の苦手なところであった。


「このまま彼らの監視を続けよう。どんな手を使うのかは僕にも分からないけど、相手がある程度頭が回るなら話は簡単だ。————————実技試験。学院内『序列戦』さ。レナ、奴らが拠点らしき物を作ったらそれ以降監視の任を解く。十分休憩を取るように」


「—————なっ。ちょっと、ガイ!? ん〜〜〜。もう!!」


 ガイはレナを置いて監視塔の一室から去る。レナはここまで話に乗ってしまった以上、責任を持って追跡をしなければそれこそ反逆罪で処刑されることを理解している。上官のサボタージュを咎める暇もなく監視をしなければならない。

 自身の責任感と掛かる重圧を利用され、その場に固定されたことを理解したレナは声を大に唸るもガイから反応はない。

 彼女は募る怒りを発散するように躍起に監視を続行するのだった。


 そんなレナを他所にガイは悠々と階段を降りる。表情はにこやか。だが、目の奥は真剣そのもの。

 人差し指一本を眉間に当てて彼は思考を巡らせる。


 己の考えうる彼らの全てのパターンを列挙し、それに対する脚本を一つ一つ作り上げる。

 相手の行動を予測するなどという甘いことではない。

 相手の行動を誘導する。

 自身の用意したステージで全員を踊らせるのだ。


「さぁ魔族。僕の用意した……いや、容認した罠にかかってくれよ? 僕らの勇者がその全てを正面から叩き潰す。最大の懸念はもう解消された。後はキャストがどう動くかだけだ」


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