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末席の勇者と英雄病賢者  作者: クサカリタスク
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第四章3 『魔族1』

 学生街に入るための複数ある門の一つ。検問を抜けた先に二人の人間がいた。


 一人は屈強で豪快。盛り上がった筋肉が服を内側から押上げ、今にも破きそうになっている。


 もう一人は細身で陰鬱。片方とは逆に服がダルダルにあまり、風が吹くたびに大きく棚引いている。長い前髪が目を隠し、根暗な雰囲気を醸し出す。


「ここが王国首都の最奥、学生達が営む街ですか。なるほどこれは大人が目立つはずだ」


「おうよ!! それもヒョロガリばっかで食べ応えがなさそうだぜ」


「貴方……半分は人間ですよね? 私も同じですが彼らに食欲なんて湧きませんよ?」 


「半分は魔族だからな!! みんな食料に見えて腹が減った!! グハハハハ!!」


「少し黙ってください。いくら遮音されているとはいえ限度ってものがあります。そもそも貴方の声で私の耳を破壊するつもりですか?」


「グハハハハ!! こんなもんで破壊されるほど柔な耳をしていないだろう俺らは!!」


「物理的には大丈夫でも精神的には響くんです。はぁ…。どうしてこんな脳筋と私が……」


 王国では見られない不思議な装いの二人は何故かいくら騒いでも見咎められない。

 陰鬱な方————ピルトが人差し指で怪しげに光らせる『魔封じの指輪』の力だ。


「それにしても気持ち悪い感覚だな!! 『見えている』のに『見えていない』と脳を誤魔化す魔術は!! 今すぐにでもこの拘束を解き放ち、一糸纏わぬ姿で駆け抜けたいものぞ!!」


「……絶対にやめてくださいね? 分かっているとは思いますが効果範囲が狭いですし、そもそも私が見えているので。私を殺すつもりですか、精神的に」


「グハハハハ!! 冗談だ冗談!! グハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」


 大きく広げた手でダレンはピルトの背中を思いっきり叩く。

 咳き込むピルトはダレンを睨むも、脳筋頭は全く気にする様子はない。

 ピルトはダレンと噛み合わないことは出発前から知っていたし諦めもしていたが、ここまで面倒臭い奴だとは思ってもみなかった。


「……。もういいです。この指輪の効果が持続している間に拠点を探します。行動に移すのはそれからです」


「なぁ、ピルト。俺たちの目的ってなんだ?」


「ア、ナ、タねぇ!? 使命を忘れてよくもまぁ、こんな所まできましたねぇ!!」


「そう怒るなって。難しいことはピルトに任せりゃいいってホルクの奴が言ってたからな」


「ホルクがですか……。まぁ確かに彼の言っていることは正しい……。ん? ですがこれは面倒事を押し付けられているだけでは……? まぁ、いいでしょう。それよりも彼と合流するためにも早く拠点を探しますよ。ほら」


「んで? 俺らの目的はなんなんだ? グハハハハ!!」


「何故そこで笑う」


 とことんマイペースなダレンに手を焼かすピルト。

 もう一人の仲間は空を飛べるため現地集合となったのだが、彼は果たして合流できるのかと先を考えると頭が痛くなる。

 全身だけではなく本当に脳も筋肉で出来ていそうなダレンに目的を話しても無駄だろうとピルトは思うが、先からダレンは催促の度に背中を大きく叩くため正直鬱陶しい。


「はぁ……。一度だけですからね? 二度は言いませんよ」


「グハハハハ!! やはりピルトは良い奴だな!!」


「もう、この男は……」と少々疲れ気味になるピルト。

 ダレンは嘘偽りない感想を言っていると分かるからこそたちが悪い。

 真正面から褒められるなど、耐性がないピルトには毒だ。


「『賢者』。———————————————人間族の過去・現在全ての叡智が詰まった人間の確保ですよ」


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