プロローグ
私の名は、シエスタ。敵多き――由緒ある王家、リリアーヌ家の王女様である。
正しくはそうであった・・・か。
あの日は私が仕事をサボって昼寝をしていた時の話だ・・・。
当時、私は気持ちよくお昼寝をしていた。
しばらく時がたった。
基本私の部屋は立ち入り禁止。
しかしその日は違った。
メイドがドアを壊してまで侵入してきたのだ。
「お嬢様!お昼寝している場合ではありません!帝国の軍勢が、奇襲をしかけてきました!」
「ん~・・・。帝国~? 奇襲といっても、今から軍を展開すればいいじゃない。」
「それに、今前線は膠着状態じゃなかった?」
「私、軍事には明るくはないのは知ってると思うんだけど・・・」
「違います、お嬢様!首都強襲です!」
「はあ?!」
当時を振り返ると、死ぬほどビビったのを覚えている。昨日の話だが・・・。
そこからは、メイドと護衛の二人ととにかく逃げた。あてもないまま。
逃げ先なんてないのだから。
我が素晴らしき王国、スフラン国は友好国や同盟国を持っていない。
当時4歳の無邪気な私は父に聞いたことがある。
父曰く、群れる必要なんてない!我が国は最強、最悪の国なのだから!
と言っていた。要するにボッチである。馬鹿な父だ。でも私はそんな父が大好きだった。
まあ本当は複雑な事情があることをその後私は知ったのだが。
スフランは人間だけの国ではない。人間と魔物が手を取り合った国である。
私とて純粋な人間ではない。ヒュプノス族と人間のハーフである。だからこそ私は睡眠をこよなく愛すのだ。
それはまあいいや。
だからこそ魔物を恐れる帝国や、その他諸外国に恐れられているのだ。
それもこれも過去の話である。
何故かって?みんななくなったからだよ。
父も、母も、兄も、妹も、メイドも国民もだ。
私に残ったのは何だろう?
もはや誰と話しているかもわからない。
さっきから私は誰と話しているつもりなんだ?リアかな?
さあ、リアはどこだろう。
彼女は森の中だ。探しに行けば私もその墓の中に入ることになるだろう。
次は私がこよなく愛する家族だ?
父は死んだ。母は死んだ。
ああ・・・馬鹿臭い。もういい。
今思えば、まあいい人生だったんじゃないだろうか。
優しい家族のもとに生まれ、いい国に生まれて。
たった14年だったが、後悔はない。強いて言うなら帝国が許せないが。
それもしょうがないのだ。うちは戦争に負けたのだから。
弱肉強食。それがこの世界のルールなのだから。
ならば私もそれに従うまでだ。
ありもしない人と話すのは疲れた。
ひと眠りしよう。二度と目を開かなくてもいいくらい。
もし私の目が覚める時が来るのならば・・・。
そして私は眠りについたのだ。