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突然、腕を掴まれた千方は、訳がわからず身を委ねるしかなかった。
「おい、小角何をする! うわ―――――」
『ゴゴゴゴゴゴゴ』
突如、上空を旅客機が通過したのだ。
「機長、今、人間の様な者が、居ませんでしたか?」
「おいおい、高度8500mだぞ。可笑しな漫画を読み過ぎじゃないか? あははは」
「そう、そうですよね。こんな所に人が居たら怖いですよね」
「ああ、ウルトラマンじゃあるまいし。そんなことより、先程、乱気流に遭遇すると思われたが、小規模だったのかな。大丈夫のようだね」
「その様ですね」
難を逃れた千方は未だ、飛び去る飛行機に目が釘付けになっていた。
「なん、なん、何やつだ、、、、あの巨大な鳥は」
「飛行機と呼ばれる物らしいぞ。何と何百人もの人を運べるらしい。凄い時代だな」
「あの鳥の中に人が乗っているのか、、、、ではここで待ち伏せて、攻めればいいだけだ。何と簡単な世になったものだ」
「中に乗っているのは朝廷の者でも、武将でもなく、関係のない者だ。千方よ、ちょっくら下に降りて、今の世を見てみないか? 隠形せねばならぬがな」
「小角、余の望むところよ」
『この人が千方さん。獄卒を従えてるって言うから、もっと怖い人かと思ってたけど、、、、若くにして死んだのかな? しっかりしてそうだけど、俺より絶対に年下だよ、、、、
うわ! うわ―――― 急降下するなら先に言ってよぉ』
小角、大嶽丸、そして千方は、隠形をすると雲の下に降り立った。すると都会の町並みと騒音が、眼下に広がっていた。
『ブブー』
『ピポ—ピポ—ピポ―』
『ブルルルル』
『ガシャン ガシャン』
「げほごほげほ。何だこの大気の悪さは、ただならぬ煙が立ち込めているぞ。息が出来ん」
「これが今の世だ」
「何だあの箱の様な者は? あれが人か? この喧しい音は、どこから来るのだ? 髪の色が七色ではないか、しかも誰も髷を結っておらん! あれは女子か? 御足を放り出して、はしたないぞ! 何だあの光は? 城なのか?
何だ??#??※??? あれは?@???#??? まさか??@??%?? これは???#¥??」
千方は肩で息を切らしながら、疑問を口にし続けた。
「ぜーぜーはーはー、、、、小角? おい! 汝等、茶を飲んでる場合か!」
「お前も飲むか? 俺様が育てた黄泉の茶葉だぞ」
「緑茶あったんだ~ 美味しい」
「玄も味わえるのだな。それはいい」
「汝等、、、、、」
「千方が、眠っておる1000年もの間に、随分と様変わりしたのじゃ。そちは、これが初めての甦りか?」
ふと、小角の脳裏を、千方のさらし首が過ぎった。
無念に満ちた最後の顔が、目に焼き付いていたのだ。
「ああ、余は憎き朝廷に処刑され、身体は鬼火で葬られたのだ。だが奴等、頭は焼き払わず、さらし首にしよった。故にこうして転生出来た」
「そうだったのか」
「そんな事より、小角、妖は何処だ!」
「ここには居らんだろう」
「山や木々、他の生物はどこに居るのだ」
「山などは、まだ少し残っておるぞ。我等は恐らく1番騒がしい所の上に居る」
「人間どもめ、、、、これでは朝廷よりも愚かではないか! 小角、こうなるまで、汝黙って見ていたのか!」
「千方、よう見てみい、、、、確かに自然は少なくなってしまった。妖も山の獣も、町から追いやられ昔のように、自由には暮らせん。だがな、馬に乗った者が、庶民を斬りつけたりしておるか? 戦が見えるか? 平和じゃろ」
「千方、この平和を手に入れるのは、決して平たんな道のりでは、なかったのだぞ。沢山の者が犠牲になった。それは妖だけでない人間も多く死んだ。その中には、妖を愛し守ろうとした者もいたのだ。
小角が命と引き換えに、俺様達を黄泉へ送ってくれたのだ。妖達は皆、平和に暮らしておる」
「大嶽丸、、、、」
「小角は最後、まるで大根の様に切り刻まれて死んだ。だが、誰も怨んでおらん。また懲りずに人界に転生しよった」
「小角、、、、」
「裏切者の声に惑わされるな! 千方、お前の甦り心待ちにしていたぞ」
「鬼髑ではないか!」
「千方、妖は皆、人間によって成敗されたのだ。そして見ろ、美しかったこの地を汚し、破壊した。今こそ獄卒を呼び戻し、この地を取り戻すのだ」
鬼髑と呼ばれるモノは、大きな目を持ち身体は蟹のようで、玄が今まで見た事のない妖であった。
そして、人間に対して、怒りを抑えきれない妖達が、鬼髑に続き、ぞくぞくと現れたのだ。
「閻魔は失敗したのか⁉」
「否、丸、そうでは無いようだぞ」
大嶽丸と小角の背後にも、妖達が数多く参上していた。
『わっ! 閻魔大王だ! 地獄で最初に会った妖だ! やっぱこえ~』
「いや~ 大嶽丸、小角、すまん、皆の説得は出来んかった」
「閻魔、、、、これだけ味方に出来れば十分だ。ご苦労だったな」
『うわ―― こんなに沢山の妖が、まだ日本に居たんだ! めっちゃ怖いのも居る、、、、猫の頭で身体が人間って、どうよ。あっけど、あの妖はどっかで見た事があるような、、、、シーサーだ! かっこいいな! 女ぽい妖も多いんだ~ うわ! あれって夜叉、ひゃ――』
「玄よ、沢山の妖に囲まれても余裕だなぁ、感心じゃ」
「あれ? 心の声も聞こえちゃった? 妖より、空に浮かんでる方が、俺には苦手だよ。小角さん下をあんまり見ないでね」
「下に何かあるのか?」
「ギャ―― 俺高い所、苦手なんだよ!」
高所恐怖症なのだと訴えたのだが、理解して貰えなかったようだ。
「小角様、お久振りでございます」
「お、共命鳥ではないか。そちは無事であったか」
「はい、お蔭様で」
「おのれ~ 小角め! 何故、儂等の邪魔立てをする」
人間を憎む妖を率いる千方と、彼等との戦いを避けたい小角との間には、緊張した空気が流れ、一触即発の状況となった。
そこへ突如、突風が吹き荒れたのだった。
「大嶽丸ではないか! 久しいの―― 今度こそ、そなたを葬ってやるわ!」
「あちゃ―― 大変な時に、ややこしいのが現れたな。田村麿、久し振りだな。なぜ女子の姿なのだ?」
「喧しい。小角殿が甦られるのを察知して、吾も慌てて業に入ったのだ。ちょっとした手違いだ」
「なかなか、可愛いぞ。その方が似合っているのではないか。さてお前、今のこの状況が見えていないのか?」
「状況?」
大嶽丸に問われた田村麿は、周りを見渡した。
「おい、、、、何故皆が揃っておるのだ。そなたは千方か! また甦りよって何をするつもりだ! そなたの4鬼は吾が成敗した」
「田村麿、、、、おのれ~」
「麿、俺様を祓うのはいいが、もし千方が4鬼を呼び寄せたら、お前、今度こそちゃんと葬れよ」
「なんという言い草。吾はちゃんと、あのモノ達を討った。祓えておらんのは、そなただけだ」
「覚えてないのか? あの時、お前はしくじった。胡散臭い陰陽師を、連れて来よって。奴らは祓えておらん。小角が阿鼻へ送ったのだ。4鬼はピンピンしておる」
「小角殿が、、、、そうであったか。もしや、貴公は小角殿か?」
「ほ~ 麿までも甦ったか。賑やかじゃな」
「小角殿、ご無沙汰しております」
「麿、大嶽丸は良い奴だぞ、それに我の友じゃ。もう虐めるのは、勘弁してやってくれぬか?」
「しかしこ奴は、、、、」
「おい! おい! おい! 小角、大嶽丸、田村麿、余を無視するな!」
小角達の会話に入れず、蚊帳の外に放り出された千方は、子供のように足をバタつかせながら、声を荒げたのだ。




