第6話 クエスト
見渡す限りに広がる死屍累々。頭が取れており、そこら中に転がっている。
亡くなった方たちのことを思うと、後悔の念に苛まれる。彼ら彼女らを救ってやることはできなかったのかと。
ふと、モヒカン君の頭が目に入った。彼の死に顔はとても穏やかであり、こう訴えているかのようだった。前を向いて強く生きていけと。
そうだ。彼ら彼女らの分まで強く生きていくことが、せめてもの手向けとなるのではないか。
「行こうぜ赫耀。後悔しててもこいつらは浮かばれない」
「賽...。そうだな!こいつらの分も俺らは生きるんだ!」
俺の他人の死を乗り越えて覚醒する主人公ごっこに赫耀は付き合ってくれた。
別に、死んだところでリスポーン地点に戻るだけだし、どうせすぐに戻ってきてまたヒャッハーし始めるだけなのである。この世界における死とは、よくあるイベントに過ぎないのだ。キルペナ、デスペナがないことも、死の概念を軽くした一因であるだろう。
というわけで、他人の死を乗り越えて覚醒する主人公ごっこをしながら歩いていた俺らは掲示板に着いた。
掲示板といっても、実際にボードのようなものがあるわけではない。高さ3メートルぐらいの細い円錐型オブジェを指して掲示板と言っている。このオブジェがある広場内にいれば、メニュー画面からクエストを受けられるようになるのだ。
メニュー画面を開き、掲示板のタブを押す。すると、クエストの難易度選択画面に移動する。まぁ、☆1のクエストしか表示されないが。☆1より上のクエストを開放したという話は未だ聞いたことがない。
☆1だからと言って簡単なわけではない。中央広場の外、フィールドはモンスターがうろついているのだが、そのモンスターがまぁ強いこと強いこと。
クエストの内容自体はシンプルなものが多いが、いかんせんフィールドの住人が強力かつ排他的であるため、クエストはたいてい失敗に終わる。悲しいね。
クエストは失敗しても特にペナルティはない。依頼人は、中央広場に住む動物の着ぐるみのような生物で、着ぐるみさんたちは人間が使えないことを今までの様子から理解している。そのため、届かなくても問題ないものを依頼する。花や小っちゃい木の実などが挙げられる。報酬は飴。子供のおつかいかな?
着ぐるみさんたちはそれなりの強さを持っているらしく、モンスターの素材などは自分たちで取りに行っているらしい。どう見ても動きずらそうな体の構造してるんだけどなぁ。
クエスト一覧を見ても、花や木の実といった文字がズラッと並んでいるだけなので、特に確認せず俺は一番上に表示されたクエストを選択した。花だった。