第5話 海
プレイルームでなら何でもできるとアイさんは言っていたが、それは理論値の話である。
いざ空を飛べと言われて本当に飛んじゃうような奴は、頭がぶっ飛んでいるのである。
頭がぶっ飛んでるやつのトラブルメーカー率は高いという俺統計に従い、さっさとこの場を離れることに決めた。君子危うきに近寄らずである。
「おん?そこにいるの"賽"じゃねーか」
が・・・・・駄目っ・・・・・!残念ながら俺は変人の相手をすることになるらしい。
賽とは俺の二つ名のことである。まぁ、一人でサイコロを振ってるやつを見たら、変な奴いるなぁぐらいには思うだろう。俺もそう思う。
そんな感じで少し話題になってしまった俺は、めでたく二つ名プレイヤーの仲間入りである。
とはいえ、俺の知名度はそこまでない。先輩野次馬も知らなかったようだし。
「久しぶり、でもねーか。3日前に一緒にクエストやってるもんな」
俺はよく赫耀と一緒に遊んでいる。こいつがいると移動時間を短縮できるからな。便利なアッシー君である。
「今日もクエストか?手伝ってやるよ」
散々変人と言っておいてなんだが、赫耀はとても気のいい奴だ。よく俺のクエストの手伝いをしてくれるし、アッシー君扱いしても怒ったりしない。
「受けるかどうかは決めてないが、掲示板を見に行くところだ」
「俺も暇だしついてくわ」
ついてくるらしい。特に不都合はないので一緒に行くことにした。
「ふざけんじゃねェ!」
ん?
モヒカン君が何やら喚いている。
「そんなふざけた答えで納得できるわけねェだろ!隠してねェでさっさと教えろや!」
新しいものを発見した奴らは秘匿することが多い。秘匿する理由に関して、ユニーク性を保つことで悦に浸りたいんじゃね?と考える人は多いようだ。
モヒカンも赫耀がそうであると思っているようだ。
「えぇ?さっき言った通りなんだけどなぁ」
こいつの考えを凡人が理解することはできないのだろう。俺も何度か空の飛び方をレクチャーしてもらったが、何を言っているのかさっぱりだった。
おっと、サイコロさん。
喚くモヒカンを無視して掲示板に向かおうとしたが、サイコロさんが現れたせいでそういうわけにもいかなくなった。サイコロさんを振らないと俺は動けないからな。出てきてしまったものはしょうがないので、とりあえず振る。
出た目は6。
上振れがすごい。出た目は大きいほど基本良いことが起きる。はずだったのだが。
気づけばあたり一面血の海だった。中央広場にいた赫耀以外のプレイヤー全員が死んでいた。
何故こうなったかはさっぱり分からないが、1つだけいえることがある。
「俺は悪くねぇ」