第2話 チュートリアル
地球はもう限界だった。
らしい。
増えすぎた人口に環境問題。
人が生きていけなくなるまで時間はそうかからないと言われた。
宇宙人に。
いや、暫定宇宙人に。
暫定宇宙人さんは自分が宇宙人であると思われるのがよほど恥ずかしいらしく、宇宙人であることを認めようとはしなかった。
まぁその暫定宇宙人さん、アイさん曰く地球はもう駄目だったみたいだ。
そこでアイさんは解決策を提案してくれた。
結果から言うと、俺たち人間は一人用のポッドに乗って宇宙を漂っていると思われる。
アイさんが開発したポッドだ。
ポッドの中でコールドスリープ状態となり、永い眠りにつく。ポッドがどこかの星に着くその日まで。
黙って眠っていれば勝手にどこかの星に連れて行ってくれるとあって、割と多くの人が肯定的であった。
しかし、やはりこの計画に反対する人たちもいた。
反対した人たちの大半は家族や友人たちと離れ離れになることが耐えられなかったらしい。
だが、このような人間の悩みも暫定宇宙人であるアイさんにとっては小さな問題のようだった。
アイさんは仮想空間に地球を模した、アースという世界を創った。
ポッドに乗った人はアースとリンクし、その世界で自由に過ごすことができる。
いわゆるフルダイブ技術とかいうやつだ。
そこで家族や友人と過ごせばいいということだ。
おまけにアイさんは楽しく過ごせるように計らってくれた。
どうやらアイさんは地球で生まれたゲームが好きなようだったらしく、メインとなるアースのほかに、プレイルームと呼ばれるゲームのような世界も創ってくれた。
そんな感じであらゆる人間の要望を叶えた、夢のようなポッドに人間たちは乗り込んだ。
まぁ、ぶっちゃけ現実から目をそらしたかったんだろう。
地球は崩壊し、頼れるのは暫定宇宙人のみ。
その暫定宇宙人にしても怪しさしかない。
まず、アイさんの目的がわからない。なぜ人間を手助けするのか。
善意であることを期待したいが、その望みは薄いだろう。
人間がポッドに乗り込むたびに高笑いしていたし。
最も有力な説は人間を非常食にしようとしている説だ。
ポッドにはシールのようなものが貼ってあるのだが、レイアウトが食品表示ラベルそっくりなのだ。
生きる希望を失った人々は現実から目をそらし、夢のような世界で過ごすことを決めた。