【極寒の大地】の旅 〚3〛
びゅー、びゅるるる~。
(ああ……)
七色の魔法使いは溜め息を心の中でついた。
全て言わせないという様に強く風が吹いている。
凍てつく、氷の様な強い風。
つまり。
「これが【極寒の大地】の名物……凍てつきの舞」
どこが舞、なのだろう。
もはや吹雪と正直に言ったらどうなのだ。
そして本当に氷漬けになって儚くなってしまいそうな冷たさと寒さだ。
彼女は今、とある大きな樹の穴でその名物が治まるのをじっと待っていた。
無尽蔵に魔力がある七色の魔法使いでもずっと自分の周りに温かい空気を纏うのは疲れる。
何よりも。
「……同じような景色。ちょっと、厭きた」
彼女でなくても、【極寒の大地】に来た旅人が十中八九思うことになる感想だ。
雪景色が珍しいと思うのは最初だけ。
どこまでも白い景色に、おまけに猛吹雪が続く状態。
厭きるのは当然だった。
「……でも」
と彼女は呟く。
しばらくすればこの国の中心地に着く筈なのだ。
そうすれば、住人も居るだろう。
交流……は出来るだろうか。
七色の魔法使いである彼女は、淡白な性格だったがこうも寒いと人並みにこう思うのだ。
人肌恋しいと。
すると彼女の傍らにこの大地の生物・雪リスがやってきた。
もふもふの毛皮の小さなリスだ。
この樹の穴の住人でもある。
その雪リスが非難する様に鳴き声を上げた。
大方、「いつまで居座るつもりなんだ」と言ったのだろう。
「……もう少しだけ居させてくれ」
雪リスはまた鳴く。
「……対価を寄こせ、ね。……はい」
大きくため息を吐いた七色の魔法使いは杖を一振りした。
ぽん! とその場に雪リスの好物の木の実が山となって現れた。
雪リスは嬉々として彼女に向かって鳴いた。
「ありがとう」と言っている。
何処からか、他の雪リスもやって来た。
家族なのだろうか。
「……ふん」
何かが、胸を塞ぐようで彼女は鼻を鳴らして気を紛らわした。
吹雪が少し収まってきたようだ。
彼女は箒を手に取り立ち上がる。
「……一時の休憩場の提供、感謝するわ」
雪リスの家族らしき集まりにそう言うと穴から外に出る。
「あっちね……」
国の中心の方に視線を向ける。
さあ、いよいよ七色の魔法使いは【極寒の大地】の国へと到着する……。
久しぶりの更新となりました。
またの続きを是非お楽しみにお待ちください。
ここまでお読みくださり、本当にありがとうございます。