水都エシル
「カスミ〜。置いてかないでよ〜」
「嫌です。あなたに合わせているとまたさっきの様になりかねません!絶対にあなたには合わせませんよ。」
「なにそれ辛辣〜。私泣きそー。」
「知りませんよ。置いて行かれたくなければ僕に合わせてさっさと歩いてくださいよ。」
2人が歩いているといつの間にやら遠くの方に街影が現れていた。海鳥の鳴き声と荒れた海の音しか聞こえなかった荒れた道は、いつのまにか舗装された綺麗な道に変わっており、少しずつ人々の声や生活の音が聞こえてきた。
「やっと着きましたね....。本来であればもう2日は早く到着できていたのですがね?ローズ。この遅れはあなたに合わせていたせいですよ。全く。次から気をつけてくださいね。」
「わかってるって〜。大体カスミも歩くの速いよ〜。景色見よ〜楽しも〜!もっと旅をエンジョイしなきゃね〜!」
「そのエンジョイが安全地帯なら良いのですよ...。あなた危険地帯とされる場所でもエンジョイとか言って中々進まないじゃないですか...。おかげで無駄に魔力消費しましたよ。」
「いーじゃんべつに〜。もう国に着くし今日は宿でゆっくりするのだ〜!」
「はぁ...まったくあなたって人はどうしてこうもマイペースかつ能天気なんでしょう...」
そうこうしてる内に門が見えてきた。門の前には衛兵らしき人が2人立っていた。門に着くと2人は衛兵に声をかけられた。
「こんにちは。入国される方ですか?」
「こんにちは。僕はカスミ。こっちは連れのローズです。依頼を受けてこの“水都エシル”へ参りました。」
「おぉ!狩り人様でしたか!ではどうぞ。水都エシルへ。」
そう言って衛兵は門を開いた。門の先に広がっていたのは幻想的な風景だった。水都と言うからには水があるのだろうと言うことは容易く想像できたのだが、そこに広がっていた景色は2人が想像していたものとは全く別の風景だった。
「これは...中々にすごいですね。確かに名前の通りですが....。」
「うわぁ!すごぉい!めっちゃすごい!綺麗だ〜!」
そこで2人が目の当たりにしたのは海中都市だった。
どのように維持しているのだろうか街には天井のような物がありそれで水の浸入を防いでいるようだった。
「しかし....それなら先程の街の影は一体.....。」
そう呟いたカスミに通行人が話しかけてきた。
「あぁ。君旅人さんかい?なら知らないのもしょうがないね〜。あれはいわゆるシンボル的なやつだよ。近くに来れば門があるけど遠くからじゃあの影がない限り旅人さんは辿りつけないだろ?だから下の街の影を海の上に映してるのさ。原理は知らないけど。」
「なるほど。そのような理由でしたか。合点がいきました。ありがとうございます。」
「でもこの周辺国の人間ならここの特徴くらい知ってるでしょうに。一体君達はどこから来たんだい?」
「あぁ。僕らの出身国ですか?もうありませんよ。すっかり廃れてしまって今はもう遺跡都市だなんて呼ばれてます。今の呼び方で言うなら“トロルリール”と言う地名ですが.....ご存知ないですよね。ここから随分と西にありますし。」
「確かに聞いたこと無いねぇ...トロルリールか。ふぅん。ま、ここの観光楽しんでいってよ!では良い旅を〜!」
「ありがとうございます。......とそろそろ行きますか。ローズ。行きますよ。」
何故かローズがいない。何処にも。さっきまでいたはずなのだが。いない。
「・・・・・。はぁ?」
呆れた様子のカスミ。しかし慣れているようで
「ま、いいですか。そのうち戻って来るでしょう。」
といった風に宿に向かって足を進めるのだった。
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
時は数分前に遡るー
「カスミお話長いなぁ〜。退屈〜。暇だしどっか行ってこよっ!」
といった具合でカスミからどんどん離れていくローズ。気がつくと目の前に謎の遺跡が見えた。この好奇心の塊のような少女が海底遺跡などというものを見てその場で回れ右する訳もなく
「入り口だけだから良いよね〜」
と遺跡へ入っていったのだった。
遺跡の中は見かけより広く、複雑な作りになっていた。ローズにはもう戻るという考えが脳からすっかり消え去っていたようだ
「うわぁ!ひっろーい!トラップとかありそう!このボタンとか押しちゃう?」
ポチ
好奇心は自身の身を滅ぼすとはよくいったもので、好奇心からボタンを押してしまったローズに天井から無数の槍が降り注いだ。
「あ。本当に作動しちゃったよwやっばーい☆」
何故この状況でここまで呑気でいられるのか。それはローズの能力のせいであった。無数の槍がローズの体を貫かんと降り注ぐが、その全てが彼女の頭上で静止していた。
「なぁんだ...所詮はこの程度。やっぱニンゲンの作ったトラップって感じだな。私の亜空間破ってこれるトラップはカスミレベルのハンターでもない限り作れないよね....」
彼女の能力。それは亜空間展開。自身の2m以内の範囲に自由に亜空間展開し、攻撃&防御すると言う戦法を取る。この亜空間のおかげで彼女は危機的状況においても終始呑気でいられるのだ。
「はぁ。カスミのとこ戻るかな。宿まで遠いなぁ〜。私の能力亜空間展開じゃなく距離操作だったら楽なのに〜なんちゃって。」
そう言いながら遺跡から出て行くローズであった。