無くならない思い出
1 出会い
「物語の始まりは夏の暑い日!」そう言って君は光り輝く日差しの中を走り抜けて行った。振り返り微笑む彼女の笑顔に僕の心は溶けていった。手の届くはずのない君を追いかけ続けたそんな夏思い出が…僕は忘れられない――。
3年前の記憶なのに、僕は鮮明に覚えている。
君は元気だろうか?どこで何をしているだろうか?
分かるはずもない在り来りな疑問を胸に抱えながら僕はノートを取る。
君と出会ったのは高校1年生の桜が散る頃。駅近くのコンビニであった。
違う制服で毎朝見かける君。何となく君を見ることが日課になっていった。毎朝会う君に日常の始まりと安心感を覚えていたのである。
君と話しをするようになったのは梅雨が明けた晴れ晴れとした日だった。
「夏休みもここに来ますか?」君から話しかけられた時は驚いた。僕だけが君を見ていたと思っていたからだ。「えぇ、近所なんで…」とつまらない返しをした僕に「よかった…!」と向日葵の様な笑顔を返してくれた君。こんな漫画みたいな事があるのかと僕は錯乱した。
僕に話しかけてくれた君。それだけで僕の心は踊った。君に認知されてる。それだけで良かった。いや、それ以上望んではいけなかったのだ――。
君と話すようになって僕の朝が変わった。見ることが日課だった僕は、話すことが日課になったのだ。君が話す内容は学校の事が多かった。友達の事、先生の事、授業の事…。大体みんなが思っているような事で、特に面白い話は無かった。だが僕にとって興味深い話題が1つあった。それは君が読む本の内容だ。僕が知らない物語。知る事に興味津々だった僕にはとても魅力的であった。
「私思うの…始まりは夏の日だって。私の好きな小説は夏から始まるものが多いもの」確かに夏の方が多い気もするが…。「だって君と話が出来たのも夏の日だよ!私これからがすごく楽しみなの!」そう言って目を輝かせる君に僕は笑いかけることしかできなかった。
あの時君はどんな夏を思い描いていたのだろうか。君が思い描くものでないと知っていても僕と共にいてくれただろうか。
疑問と後悔に苛まれる僕。楽しかった記憶さえ無くなればいいと願ってしまうのだ。
そしてこれから僕らの夏が始まる――。
夏の思い出に書いてみました。初めて書いたので読みにくい所があるかと思いますが大目に見て下されば幸いです。
続きはまた気が向いた時に