君のため
僕の彼女は少し心配性だ。
僕が女性と話すだけで不安でいっぱいになってしまう。
僕と彼女の間柄を知らない友達は「依存している」だとか「束縛」だとか、中には「ヤバい女」だなんて言ったりする。
知らないからって何でも言っていいわけではないのに、まったく……。
誰だって異性の影が見えたら不安になるよ。僕だってなるし。
彼女はその気持ちが少し強いだけだっていうのに……。
僕と彼女の間には約束があった。
『不安になるようなことがあったらお互い正直に話そう。そして、その不安を取り除けることなら取り除こう』って。
お互いが不安のままでいるよりも話し合って行動した方がいいと思ったからだ。
僕は友達の話を正直に話した。どこでその話を聞くかわからないし、その時に突然聞いた方が傷付くと思ったからだ。
話し終えると彼女は「ごめんね」と呟いた。その声は震えていた。
何も謝ることなんて無いのに……。
その後、彼女とは話し合って『不安を取り除く』ことにした。
そんなにも酷いことを言う友人とは離れることにした。
後日。話をするために友人と待ち合わせをした。
そして彼女との約束を含め、全てを話した。
理解してくれなくてもいい。僕は彼女が大事だから。
友人はまだ何か言いたそうだったが、少し強引に手を切った。
僕を。僕たちを、理解しようとしてくれているのか。友人は何も言わず歯を食いしばった。
なんて良い友を持ったんだろう。だけど、ごめん。
最初はすごく腰が重かったけど、ちゃんと足を運んでよかった。さっきよりも腰が軽い気がする。
僕は改めて友人の顔色をうかがった。
よほどショックだったのか血の気が引いている。
それもそうか。手を切られて。
足も、腰も……。
あとは、首だけだね。