ロト
【ロト】
Aの27、Aの27、俺は昨日瞑想で見た、アルファベットのAと数字の27を忘れまいと頭の中で繰り返しながら歩いた。北鎌倉の駅につき、逗子方面のホームで電車を待った。俺は気が短い。さらに、自律神経の狂ったこの奇病のせいで気の短さは拍車がかかり、極端な短気になっている。待たされるとイライラする。そのイライラが昂じるとあの苦しい発作が襲ってくるのだ。俺はがまんして電車を待った。早く来てくれ、と呟いた。助かった。5分ぐらい待つと、大船方面を見ると電車がこちらを向かっているのが見えてきた。電車に乗ると、空いていて余裕で座れた。
鎌倉駅に着いた。改札口を出ようとする。しかし、人は都内の駅ほど多くはないが、それなりに多くいる。自分の改札に向かって進行方向に人がいる。それを避けようと、自分の進行方向を変える。すると、自分が避けようとしたその人間が、なぜか自分が選んだ進行方向に近づく。止めてくれ! 俺は心の中で叫ぶ。堪らんのだ。俺がせっかく衝突を避けて、違う方向に進もうとしたのに、相手がわざわざこれの方向にやってくるなんて!そんなことになると、発作が俺を襲ってくるではないか?
たまらん、たまらん。あんたは俺を苦しめるために生きているのか?? 俺は、とっさに左腕を前方正面に水平に差出し、「俺はそっちに行くんだぞ」という合図を示した。それに気づいたか、その人俺の進行方向から遠ざかった。「これだ、忘れるなよ、おまえ」と、もう一人の俺が言ってくる。俺は最近、駅などの混雑したところでは、左腕を前方水平方向に差し出すポーズをすることにしていたのだ。
俺は改札を出た。午後1時ちょうどだ。スマホのマップで、チャンスセンターの場所を確認した。ナビゲーターを使うまでもない。バスロータリーを渡り、その先の大通りの向かい側だ。
横断歩道で信号を待ちながら目を凝らすとチャンスセンターが見える。土曜日の午後にしては、売り場に行列はできていない。なんかめまいがしてきた。これはヤバイかもと思った。めまいは発作の前兆の場合があるからだ。気をしっかり持ち、信号が青に変わるのを直ぐにキャッチしようと、信号灯をみつめた。発作が起きようとしたとき、発作を避けるには、クンバハカ呼吸をするか、意識を外界の何かにフォーカスするかのどちらかだ。クンバハカ呼吸の最中に信号が変わると戸惑うので、信号灯に意識を向けることにした。
間も無く青に変わり、大通りを急いで渡った。渡りながら、今度はクンバハカ呼吸をやった。俺は、最近すっかりクンバハカ呼吸を楽に出来るようになり、歩きながらでもできるようになった。そして、売り場の前に到着した。さて、俺はまず、アルファベットのAに関する表示がないかを探した。宝くじが棚ごとに分類され、その棚にアルファベットのラベルが貼られているのではないかと考えたからだ。ない。棚のラベルではないようだ。考えてもしょうがないので、今度は数字27の意味を明らかにしようと、売り場のおばちゃんに聞くことにした。俺は言った。
すみません、27の数字に関係あるくじを買いたいのですが?
おばちゃんは、何も不思議がらずに、すぐに答えた。それなら、これがいいわよと言って、ロト6、ロト7、ロトミニの申し込みカードを売り場の窓から差し出した。
ほらね、1から37までの数字の中に、27があるでしょ。
ロト7の番号選択カードは、1から37までの数字を7個選ぶマークシートになっていた。そして、1枚のカードには7個の数字のセットを5種類記入できるようになっていて、各記入枠には、アルファベットのA、B、C、D、Eのラベルが付いていた。
あっそうか!Aは、この記入枠の名前なんだ!
俺は心の中で叫んだ。これだ、これだ。Aの27というのは、このロト宝くじで27を選べという意味なのだろう。そして、記入枠Aだけを使えという指示に違いない。
俺は、おばちゃんから申し込みカードを受け取った。その場d、27のところを鉛筆で塗りつぶした。あと6個は自分で選ぶのか?どうしたらいい? 考えてもしよいうがない。感で選ぶだけだ。俺は、1~37の数字をカードの上高めの位置から眺めた。37個の数字全体を眺めた。俺の意識が引っ掛かる数字を選ぶことにした。一つ決める。すると、すぐ隣の数字が引っ掛かってしまう。え、そりゃおかしいだろう?と俺が言う。隣同士を選ぶのかい? 少し離れたところじゃなきゃあ、おかしいぜ? ともう一人の俺が言ってくる。だめだ。もうこれは雑念の意識だ。雑念で、予測ができるわけない。俺はそう思った。そこで、もう一気に残りの数字を選ぶことにして、6個全部を選んだ。
カードには、残りB欄からE欄まで記入枠があったが、指示はAだけだったので、あとは空欄にして、カードをだした。おばちゃんは、300円です、と言う。300円支払い、抽選券を受け取った。俺は、売り場の窓口から横に外れた。すると、数人の男たちが並んでいたのに気づいた。
俺は、思った。せっかくだから、何枚か買ったらどうだろ? さっきのカードの残りの記入欄に記入すればいいのだったろうが、Aという指示だったからな、別のカードを使って、A欄に記入したほうがいいだろうと思って、新しいカードに記入することにした。27を入れて残りの6個の数字を選んだ。行列に割り込むのはいけないだろうから、最後部に並ぼうとした。しかし、その前に抽選日をおばちゃんに聴こうとして、顔を差し出して、「ちょっと教えてほしいのですが。。。」と言いかけたら、2番目に並んでいた40代ぐらいの男が、「だめだ、割り込むんじゃない!」と怒鳴ってきた。
俺は「いや、ちょっと質問するだけです」と言うと、男は、「それだって割り込みだ!」さらに怒る。俺は諦めて、最後部に並ぼうと動いた。俺は、心の中で呟いた。「バーカ。そんな意地悪な性格の人が当たるわけない。」と。
俺は、2枚のロト7を買ってアパートに帰った。