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ヘイト・ヒーローズ  作者: タマナシ・カユウ
第1章 世界と向き合う日
1/37

プロローグ 『嫌われ者のヒーロー』

  1


 ここは普段ならば、人通りが多い街だ。

 だが、人々は姿を消している。

 何故なら現在、町には避難警報が発令していて、人々は屋内に隠れている。


 だが私はその場にいる。

 警報が発令されたにもかかわらずだ。

 何故なら……


 これから私の仕事が始まるからだ!


「ターゲットを発見しました」


 私は黒いモヤで覆われた怪物を発見する。

 一見すると人間に近い見た目をしているが、黒いモヤのせいでその姿は失われている。


 奴らは私たちの()だ。

 何故なら、この怪物は生きている者を襲うからだ。

 そういった者を生かしておく理由は無い


『了解。予定通りターゲットは一体だ。逃さず排除しろ』


 さてと……始めますか。


 ――『解放(かいほう)


 私は唱える。

 そうすると私の体が光に包まれ、体内から真紅(しんく)の『(よろい)』が現れそれが私の体を覆う。

 それは赤く染まりすぎていて、真紅と呼ぶにふさわしい。

 左頭部には一本の角が生えていて、肩からは赤い羽のようなものが突き出している。

 だが今の段階では飛行は出来ない。


『鎧』といっても武者(むしゃ)(さむらい)と呼ばれる者が身に着けるものではない。

 私の細い体に合わせた形となっており、はっきりいって私はこの姿を気に入っている。


『鎧』それは私が戦うために私の中から生まれた兵器だ。

 そして、この『鎧』には名前がある。


『ミラー』それがこの『鎧』の名前だ。

 なぜそんな名前なのかは知らない。

 でも、なぜだか知っていた。

『鎧』が教えてくれたと私は思っている。


 しかし私を包みこんだ真紅の『鎧』はどこかが欠けていた。

 それは()だ。

 それも両方とも。

 鎧化する前の私には両腕がついている。

 確かにその腕は本物では無い。


 そのためか『鎧』を(まと)うと消えてしまうのだ。

 それでも戦えない訳では無い。


『おい、ボケっとするな!』


 オペレーターの声で気付く。

 怪物が突っ込んで来ることに。

 怪物は咆哮(ほうこう)を上げる。


 私のそばで片爪を振り回してきたが、瞬時に後ろに飛ぶことで敵の攻撃を回避する。


 軽くかすったが『鎧』のおかげで、大した問題は無いがボディに目を向けると少し削りとられていることに気付く。


 少し危なかった。

 気を抜くといつもこうだ。

 これがいつもの体だと怪我をしていただろう。


 軽い痛みを感じることで集中力をあげる。

 よって仕切り直しだ。


 攻撃を外した敵はもう一度同じ行動をする。

 大抵の奴らには知性というもの存在し無い。


 今度は完璧に攻撃を予測し、今度は敵の左側面に回避し右蹴りを足元にお見舞いする。

 そうすると敵は軽く体勢を崩した。

 相手はうめき声を発する。


 私の攻撃手段はこんなものだ。

 足しか無いからだ。


 私はそれを(かせ)だとは思ってはいない。

 足しか無いなら足を十分に使ってやれと思っているくらいだ。


 体勢を崩した敵は、近くにいる私にまた片爪を振るった。

 しかし私は軽く体を後ろに反らし、そのまま軽く飛び、左蹴りを顔面にお見舞いする。

 その瞬間、敵は大きく吹き飛んでいった。


 そして敵は怒りの咆哮を上げる。


「これで終わりよ……」


 戦闘慣れしている私には終わりが見えた。

 敵の命の終わりが。


 私の『鎧』は足に向けて集中することで片足から鋭い(やいば)を伸ばすことができる。

 長時間は持たないのがネックであるが、終わりが見えたから安心して使うことが出来る。


 今回は爪先に刃を伸ばす。


 予想通り敵は(うな)り声をあげて、私へと真っすぐに向かってきた。

 少しは考えればいいのに……と考えながら構えをとる。

 確実に一撃で仕留められるように、こっちの準備は万端だ。


「――さぁ来なさい」


 敵が間合いに入った。

 すると同時に両爪を振り回す。


 おっとこれは予想できなかった。

 まさか両方の手を使ってくるとは……。

 でも関係ない。


 私の蹴りは速いし、重いし、鋭い。


 両爪を食らう前に体を大きく動かし、右回し蹴りを首元にお見舞いする。

 綺麗(きれい)に曲線を描いて足が吸い込まれていく。


 その瞬間が綺麗だと私は思っている。

 はっきりいって自画自賛だ。


 誰も評価しないなら自分でするべきだ。

 その蹴りは必殺の一撃。

 それも刃のおまけ付きだ。


「さようなら……」


 私はそう言って、刺さった右足を静かにを怪物から引き抜く。

 抜いたと同時に怪物の体内から黒い血が噴き出した。

『ミラー』にかかるが気にはしない。


 そして軽く左足で敵を突き放す。

 そうすると怪物は跡形も無く消えていった。


 2


「ターゲットの消滅を確認しました」

『了解。任務ご苦労。すぐに迎えを送る』

「いいですよ。自分で歩いて帰りますから』

『怪我はしてないのか?』

「大丈夫です。少し寄り道をしてきてもいいですか?」

『構わない。だが門限は守れよ。では本部で待つ』


 私は『鎧』を解除し、「ふぅ」と一息。

 そして歩き出す。

 しばらくすると避難警報が解除され避難していた人々が次々と顔を出し始める。

 私の首輪を見てしまったためか奇異の目で見られる。

 もうこの視線には慣れたものだ。


『鎧』を着ている時だけはヒーローでいられる。

 短い時間だがその時だけは有意義な時間だ。

 私がこの人たちを守った。

 そうやって誇れる。


 今日も生き延びることが出来た。

 怪物を排除すること、それが私の仕事だ。

 命懸けの仕事だが行うだけの価値はある。


 私は人間では無い。

 私の名前はココロ。

忌能者(いのうしゃ)』と呼ばれる存在だ。

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