歴代最弱の魔王
「歴代最強の勇者様、なんですよね?」
「ああ、そうだな」
「じゃあ、その封筒を開けない訳にはいかないですよね」
俺が住んでから、いつのまにか部屋の片隅に追いやられた丸いテーブル。
そのテーブルに置かれた一通の封筒。
その封筒を見ながら言葉だけでなく視線でも開けろと訴えてくるアリス。
「中を見ずに破り捨てちゃダメかな?」
見たくない。
開けたくない。
やだ。
なんかやだ。
だってこの封筒面倒ごとの香りしかしないんだもの。
だから開けたくない。
なかったことにしたい。
「ダメに決まってるじゃないですか」
だよね。
開けないで捨てようという望みが却下されるのはわかっていたとも。
仕方ない、開けるか。
俺は嫌々ではあるが封筒を開ける決意を決める。
俺もアリスも無言となった静かな空間に封筒をゆっくりと破る音だけが響く。
そしてついに中身をとる。
丁寧に折られた紙を開く。
あぁ、読みたくないなぁ……。
しかし、紙に目をむければ自然と文字が読めてしまう。
「仕方ない、読むか……
『歴代最強の勇者様へ。
お元気ですかー?
と、書いては見たけれど魔王の私からすると勇者様が元気だと困るんですよねー。
だって私、魔王ですから。
だから、本当なら弱ってくれませんか? とか私より弱くなってくださいとか書きたいんですよー。
さて、なぜ今回勇者様に魔王である私が手紙を書いたかと言うとですねー、実は勇者様に一つお願いがあるんですよー。
最近ですねー、私の配下である魔族たちがですねー私がいつまでたっても勇者様と戦わないことを不満に思ってるんですよー。
ほら、勇者様って召喚されてからけっこーたったじゃないですかー。
普通だったらもう私と勇者様はもうとっくの前に戦ってるはずじゃあないですかー。
そして今頃、勇者が勝ってハッピーエンドか魔王が勝ってバットエンドかのどっちかになってる頃合いなわけですよー。
そうなっていない現状を魔族の皆は不満をもってるみたいなんですよねー。
それで最近、どうせ魔王と勇者が戦わないなら勝手に人間滅ぼしちゃおうぜ! みたいな空気になってるんですねー。
いや、まったく迷惑なことですよー。
だってそんなことしたら、勇者様の気まぐれで魔族全て滅ぼされてしまうかもしれないってのに……。
そんなアホな連中を止めるためにですねー勇者様には私と戦って欲しいんですよー。
いや、戦うってより戦うふりを私としてほしいんですよねー。
出来るだけ大勢の目があるところで。
私が負けるふりをするんで、勇者様には勝つふりをしてほしいんですよねー。
あ、もちろん手加減してくださいね?
じゃないと私死んじゃいますら!
なんせ私、歴代最弱の魔王ですからー。
もし、私のこのお願いを引き受けてくれるのであれば、この手紙を窓から落としてくださいー。
それで、私の部下に伝わりますからー。
PS.もし、この手紙が気にくわなかったとしてもどうか殺さないでください。』」
魔王から手紙だから、どんな内容かと思ったらなんというか色んな意味で予想外だった。
しかも、魔王が手紙で命乞いって……。
「なんていうか勇者様もそうですけど、この手紙書いた魔王もアレですね」
「ああ、確かにアレだな」
「「魔王らしくない」」
俺とアリスはシンクロしてそう言う。
そう、俺が勇者らしくないのにたいしてこの魔王も魔王らしくないと互いに共感する俺とアリスであった。
「さて、一応は読んでやったということで」
捨てよう。
「ちょっ、勇者様ダメですよ!」
そんなアリスの制止の言葉を無視して俺は手紙をビリビリに破り、ごみ箱へと捨てた。
なんか、窓の外に気配があったことには気づいていたがそんなのは俺は知らない。
知らないったら知らない!




