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恐怖のアイツ


「歴代最強の勇者様、なんですよね?」 


「もちろん」


あ、P○Pの電源切れそう。


充電器どこおいったっけな?


「まったく、今日もごろごろと……。ところでなんで勇者様っていつも長袖なんですか?」


「別に暑くないからいいじゃん」


そう、この部屋は常に俺の魔法によって適温になっている。


俺が、エアコンがわりになっているのだ。


「まぁ、部屋のなかはなぜか涼しいですけど勇者様は外でも長袖ですよね? 今の季節は暑いのに」


確かに今の季節は暑い。


かなり暑い。


それでも俺が長袖を着るのには理由がある。


「アリス、なに怖いものはあるか?」


「怖いもの、ですか? 雷とかですかね」


アリスは雷が怖いのか。  


なんか可愛い。


「アリスにも怖いものがあるように、俺にも怖いものがあるのさ」


そう、だからこそ俺は暑くても長袖を着る。


まぁ、ぶっちゃけ外に出るときは周辺の温度を操作するから暑くないんだけどね。


「な、なんですかっ勇者様の怖いものって!? 魔王とかですか、いえ勇者様だし……もしかして神とかですか?」


少し怯えた表情で聞いてくるアリス。


いや、魔王も神も長袖じゃどうしようもないと思うよ?


てか、怖いものが魔王か神くらいだと思われてるって、アリスのなかの俺はどんだけ化け物なんだよ。


ちなみに、魔王も神も俺は怖いと思ったことはないけどね。


「いやいや、全然違うって。俺が怖いのはな……虫だよ。虫の奴等から身を守るために長袖を着てるのさ」


虫、それは恐怖の生命体。


そこにいるだけで俺の心を恐怖で満たす最悪の強敵。


まだ地球にいた頃は黒いアイツと死闘をくりひろげたものだ。


アイツがいないだけでこの異世界は地球よりも安全と言えるかもしれない。


魔物はいるけど。


「ぷっ、虫ですかっぷぷっ。あっ、すいません笑っちゃって。ぷっ」


ぷつりと俺の心のなかでなにかキレる音がした。


どうやらアリスは本当の恐怖を知らないらしい。


「そこまで笑うってことはアリスは虫が平気なんだな? 今から虫の魔物だらけの山に置き去りにしてやろう」


「ちょっ、まってくださいよ! もう笑いませんから!」


「ダメだ。アリスには虫の蠢く脱出不可能といわれている山に置き去りだ。ほら、話してる間に転移魔法が完成したぞ?」


「お願いします! さっきは私が悪かったです! 虫だらけの山は勘弁してください!」


そう、懇願するようにお願いするアリス。


「ん~、どーしよっかなー」


きっと、今の俺の顔を鏡で見ればそこには悪そうな笑みを浮かべた男が映るだろう。


ま、そろそろ可哀想になってきたし後、一時間位で許してやるとしよう。





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