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ごっこ遊び


「歴代最強の勇者様、なんですよね?」


「いえす!」


「まったく、曇りだと元気がいいんですね」


そう、今日の空は雲におおわれ真っ白だ。


太陽の出てくる隙などいっさいないような素晴らしき曇り空。


そんな今日、俺達は買い物をするため外出していた。


「勇者様が自分から外に出るなんて珍しいこともあるんですね。太陽がでるか、雨でも降るんじゃないですか?」


「太陽が出るのは困るな。もし、出てきたら転移魔法を使って一秒でも早く帰る!」


「雨ならいいんですか……?」


「雨ならいい、と言うこともないが……。まぁ、雨なら妥協しよう」


そんな風にアリスと歩いていたら、ふと子どもたちの声が聞こえてきた。




『フッ、よくぞここまでこれたなゆうしゃよ。ほめてつかわす』


悪そうな笑みを頑張って作る子どもa。


『くっ、なんといういあつかんだ。さすがはまおうとよばれるだけのことはあるな』


木製の小さいオモチャの剣を構え、何かに耐える振りをする子どもb。


『うっ、わたしたちはここまでのようです。あとはまかせましたゆうしゃさま……』


そして、パタリと倒れる演技をする子どもc。




「なぁ、アリスあれは何をしているんだ?」


「なにってそりゃあ【魔王の威圧に耐える勇者ごっこ】に決まってるじゃないですか」


さも当たり前といった顔で答えるアリス。


「そ、そうなのか」


勇者や魔王の存在するこの世界では普通のこと? なのだろうか。


「もしかして勇者様は【魔王の威圧に耐える勇者ごっこ】やったことないんですか?」


「まぁ、やったことはないかな。てか、そもそも俺は本物の勇者だし……」


さらにいうならば、俺はもともとこの世界の住人って訳じゃないし。


「あっ、すいません……。ちょっと本物の勇者様だってこと忘れてました」


おいおい、大事なこと忘れるなよ……。


「ところで、まさかとは思うが他にも似たようなごっこ遊びがあったりはしないよな」


ないよな?


ないといいな?


ないと言ってくれ! アリス!


なんというかな、自分が一応は本物の勇者だからかあのごっこ遊びは見ていて少し恥ずかしいのだ。


だから、他にはないと思いたい。


しかし……。


「ありますよ?」


そんなささやかな希望はあっさりと砕かれた。


そして、俺の心も粉々に砕かれたようなショックを受ける。


「そうか……。で、どんなのがあるんだ……?」


「かなりの数があるんですけど有名どころをあげるとすれば【魔王の全力をこめた奥義を受けたのにもかかわらず、傷ひとつなく平然とたたずむ勇者ごっこ】とか【魔王に一人の少女の命か一国の国民全ての命か選択を迫られる勇者ごっこ】とか【ついに我の封印されし魔眼を使うときがきたかと言う魔王と、くっ俺の右腕がうずきだすぜと叫ぶ勇者ごっこ】とか【魔王の攻撃を何回も受けた後、これが本気か? と不敵に微笑む勇者ごっこ】とかですね」


それを聞いた俺は泣きたくなってきた。


アリスによるとこれでもまだ全てではないらしい。


泣いてもいいかな。



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