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十七話 憂鬱な叙勲パーティー

皆様、お待たせ致しました。

今回も短い上に駄文の垂れ流しですが、宜しくお願いします


「カイル・メディシア」


「ハッ!!」


 自分の名を呼ばれ、俺は数歩進んで跪いた。


「カイルよ、お前の此度の戦いでの働きは、称賛に価する」


「ありがたき幸せ」


 右手を左胸に当てて深く頭を下げる。


「その功績を称え、お前に、勲二等王国騎士勲章を与えるとともに、騎士爵位を与える」


 これに対して再度、深く礼を行い、それからゆっくりと立ち上がり、近付いてきた国王陛下自ら勲章を着けて頂き、握手をした。

 去り際に一度右肩を叩かれて、俺は後ろに下がった。







 時はガラの戦いから二週間後の事、場所を王都アウスに移し、今は叙勲式の最中だ。

 あのすぐ後、俺達の下へ来た伝令により、共和国軍が撤退し、我がアウレリア王国の勝利を知り、その後に伝えられた式典への参加を命じられ、王都へとやって来た。

 そして今、叙勲式も終わり、場面は祝賀パーティーに移る。


「帰りたい・・・」


「そんな事を言わないで下さい団長」


 思わず口にしてしまった俺の本心に、隣にいたエストが注意する。

 この手の式典や行事に来た事が殆ど無い俺は、慣れない空気に辟易してしまう。

 それに対してエストの方は、イキイキとしている。


「楽しそうだな」


「ええ、社交には随分と顔を出していましたから」


 流れる様な金糸の髪の伊達男が笑みを浮かべる。

 エスト程の男前ならば社交には、楽しみが溢れているのだろう。


「お前が羨ましい」


「何を言いますか。貴方は我が兵団の長であり、此度の戦争の功労者でしょう」


「お前も叙勲しただろ」


 エストも俺同様に叙勲を受け、陛下より戦時功労勲章を賜っている。

 この勲章は、俺の受けた二等王国騎士勲章に比べると格が下がるが、叙勲自体、受ける者が非常に少ない。

 加えて、俺の一つ上の15歳と言う年齢での叙勲となると相当に珍しい。

 その為、今のコイツは殊更にモテる。


「まあ、エスト・ローゼン卿では御座いませんか」


 また来た。

 先程からご令嬢やマダムがやって来ては、エストに話し掛けて来る。

 その間、俺は完全に無視されて、手持ち無沙汰を紛らわせる為に、食事に手を出す。


「団長」


「何だ?」


「ちょっと踊ってきます」


 言うや否や、ご令嬢の手を取って中央のホールへと歩いていく。

 俺は、その後ろ姿を暫く見送った後、辺りを見回したて呟いた。


「あ〜・・・帰りたい」


 戦地に居るよりマシかと思いながら、シャンパンを煽ると、見知った顔があった。


「リリアナ嬢!私とダンスを踊っていただけないでしょうか!」


「いえ!私のお相手をしていただきたい!」


「是非、私と踊ってください!」


 我が麗しの婚約者殿が、男たちに囲まれてダンスを申し込まれている。

 彼女は、それに対して、俺に向けた事の無い、美しい笑顔で丁寧に対応していた。


「チッ・・・」


 気分が悪くなる。

 胸くそ悪い。

 俺は、そんな思いを抱えて、さっさと帰ろうと出口の方へ足を向けたのだが、それは遮られてしまった。


「もし、よろしいか?」


 目の前に現れて話し掛けてきたのは、一人の女騎士だった。


「どなたでしょうか」


 嫌なものを見て帰りたくなったのを遮られて、不機嫌だったせいで、声色にもそれが現れてしまった。


「失礼した。私はチェスター侯爵家の次女、ライノと言う。アダムス殿の事で聞きたい事がある」


 アダムスの名が出され、一瞬体が震えてしまう。


「一体どういった関係でしょうか」


 と、俺が問うと、彼女は口を開いて言った。


「私は、彼とは学園の級友だったのだ。彼の最期の様子が知りたい」


 そう言う彼女の眼には、悲しみの他にも憎悪と憤怒の色が見て取れた。

 その矛先が誰に向けられているか、敢えて言う必要等、無いだろう。


「アダムス・オルグレンは、最期の瞬間には落ち着き払い、死を受け入れていた」


 俺が嘘の最期を伝えると、彼女は暫し黙った後にポツリと言った。


「・・・そうか」


 それだけ言って、俺の前から去っていった。


「・・・クソ」


 その時の俺の気分は戦地に居るときよりも酷いもので、今すぐに立ち去りたい気持ちで一杯だった。

 しかし、そんな俺の思いとは裏腹に、俺はまたもや呼び止められてしまった。


「中佐」


 そう言って俺を呼び止めたのは、ペイズリー卿だった。

 ペイズリー卿が俺を呼び止めて話しかけてくると、俺は卿に正対して会釈をした。

 それに対して軽く返礼を返した卿は、軍人らしく簡潔に話を始めた。


「中佐、此度の事だが、お前の働きは賞賛に値する。お前の献身的な活動が今回の戦争での勝利に大きく貢献した」


「ありがとうございます」


「だが、お前の行動には些か軍人としての配慮が欠けている様に見受けられる」


「はっ」


 卿の話は、最初に俺に賞賛の言葉を投げる事で始まったのだが、それ以降は基本的に苦言や叱責に終始した。


「確かにリーグでのお前の夜襲は効果的な作戦であった。あの勝利が有ったからこそ、今こうしてワインを手にすることが出来ている」


「・・・」


「しかしだ。一介の軍人として、ああいった独断専行は見過ごす訳にはいかない。ガラでの事については殿下の命と言う事もあって多めに見るが、以後、同じ様な軽挙妄動は慎む様にしろ」


「はい」


 ぐうの音も出ないほどの正論を言うだけ言った卿は、俺の返事を聞いて満足そうに頷いて、去って行った。


「出来れば、もう戦いになんて行きたくないんだけどな・・・」


 そんな俺の呟きは、賑やかなパーティーの喧噪に掻き消されて誰の耳にも届くことは無く、この喧噪を煩わしく思った俺は、誰かに見送られる事も、誰かに話しかける事も無く会場を後にした。







 その翌日、俺は招待されていた朝食会を辞退して、昼過ぎまで惰眠を貪っていた。

 そんな俺をナジームが起こしに来た。


「団長!起きてください!」


「う、ううん?」


「お客様がいらしています」


 用意されていた宿屋のベッドは、実に寝心地が良く、なかなか俺を離してくれない。

 それでも、客が来ていると言うから、何とか上体を起こし、起き抜けの頭を覚醒させる。


「誰が来ているんだ?」


「王宮からの使者です」


 一気に脳みそが覚醒して飛び起きた。

 それから、急いで着替えて王宮に向かった。







「カイル・メディシアただいま参上いたしました」


「来たか」


 王宮に着くなり、俺は、殿下の部屋に通された。


「良く来てくれたカイル。まあ、掛けてくれ」


「ハッ!」


 言われた通りに、椅子に腰掛けると、タリア皇女と騎士カリスが入ってきた。


「やあやあカイル!リーグの戦い以来だな!」


「失礼します」


「タリア、カリス、今、カイルが来た所だ」


 それから四人でメイドが用意した紅茶を飲みつつ、話を始めた。


「昨晩の事何だが、帝国から連絡が入ったんだ」


 アレクト殿下が最初に口を開き、その後にタリア皇女が続いて言った。


「実は我が国の北部で蛮賊による進行が起きたのだ」


 帝国は広い国土をもつ大陸最強の国家であるが、その分、敵も多い。

 特に帝国の北側、大陸の最北部に広がる、広大な凍土と呼ばれる世界には、多くの異種族が棲んでおり、我々はこれを、蛮賊と呼んでいる。

 帝国が最強の国家として君臨しているのも、一重に彼等蛮賊と戦い続けてたからこそであり、他の国には、決して真似の出来る物ではない。


「蛮賊どもが攻めて来るのは何時もの事なのだが、今回は数が多い上に、厄介な連中らしく、劣勢に立たされているのだ」


「そこで、我が国からも援軍を出す事になったのだが、我々も戦いを終えたばかりで、余力が無いのだ」


 話を聞いていて嫌な予感がしてきた。


「しょ、諸公は・・・」


「勿論、諸公にも打診はしたのだが、遠回しに断られてしまったのだ」


 そんな事は分かりきっている。

 この状況で派兵する様な家は無いだろう。


「頼むカイル!帝国に行ってくれ!」

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