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とある中堅冒険者の生活  作者: テイク
第二部 第一章 新しい出会いと中堅冒険者
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第4話 アミュレントでの宿

 一団は、途中魔物の襲撃はあったが、レクスントをそのまま通り過ぎ、それなりに被害もなくアミュレントまで辿り着いた。

 レクスントを通り過ぎたのは、多くの兵士を休息させるには場が足りないということと、一団が規律正しい聖騎士とは言えど、それなりに住民に対して与える影響が大きいからである。


 水の張った星形の濠と魔法建築による、うず高い城壁をもつアミュレントは、マゼンフォード州リント地方にある一都市にして、北のシャーレキント州、西のバルックホルン州への玄関口であることは周知されていよう。

 大市があるということは、旅人であり異邦人のニソルも知っており、魔王復活といいう事態にあってなおこの大市では商魂たくましい商人たちによる商売が今日も行われている。


 通行税、入場税を支払いアミュレントへと入った一行は、ここで数日の足止めとなる。バルックホルン州にも近しいアミュレントの街道にはびこる魔物の掃討もまた勇者や聖騎士の仕事であるからだ。

 本来の旅程にも決められた予定であるため、数日はアミュレントで宿をとり、勇者が帰還したあとに出発することになる。


「まずは宿だな。その後はどうする?」

「おいしいものが食べたいわ」


 ここまで来ればこの答えも予想済み。旅人ならば珍しい場所などにいかなくても良いのかと思うが、彼女にとっては食事の方が本当に大事であるらしい。

 

 馬上試合場において騎士たちによる馬上槍試合(トーナメント)の賭け事も、馬上の騎士が槍だけでなく、剣などの武器をぶつける一騎打ち(ジョスト)形式の試合もまったく興味はない。

 塀に囲まれた、小さな要塞を思わせる、そこからは優麗な音楽とそれに合わせた詩がかすかだが聞こえてくる吟遊詩人大学にすら見向きもしない。


 彼女が見向きをするのは出ている屋台ばかり、串焼きから、包み焼き、菓子にスープに目移りしては大忙しだ。

 それでも耳を済ませれば活気の中に見え隠れする不安がある。いつも通りではあるが、アルフには少しばかり人が減っていることが一目瞭然だ。


「…………」

「なあに? 何かあるの?」

「いや」

「それより早く宿に案内しなさい。美味しいごはんが食べに行けないじゃない」

「はいはい」


 そういってアルフがやってきたのはローガンの荷置場。

 元々はさる商人の荷置場として使われていた建物を改装した宿屋で元冒険者が経営する宿屋で、飯は不味いが安く量があり、ゆっくりと眠れるだけのベッドがある。

 ニソルが難色を示す事請負の宿屋であるが、飯は別に食いに行けばよいのだといえば、納得。寧ろ、安い宿のおかげで食事に金をかけられると言われてはニソルも気にしない。


「じゃあ、あたし一人部屋で、あんたは?」

「大部屋で」


 アルフは大部屋の一番安い共同の部屋。ニソルは少し高いが、一人部屋を選んだ。


「しっかし、意外だな一人部屋とは」

「なんで?」

「いや、そういうのは気にしないんだと思ってたが」

「そ、まあ、いろいろとねー。あんたは料理の腕は信用してるけど、それ以外はわからないし」


 まあ、ここまで旅をしてきたのも聖騎士と一緒だ。同じ部屋に泊まって何が起きるかは未知数となればそうなるのも当然だろう。

 むしろ、そういう警戒心があったのかと驚いたことは内緒にしたいアルフだった。だったら常日頃からそういうのを出してほしいとも思ったが。


 ともあれ部屋を取ればあとはニソルのお待ちかねの食事だ。


「あ、そうそう。案内してくれたら、あんたは自由でいいわ。女が一緒だとやりにくいこともあるでしょ」

「いらん気を回すなよ」

「あら? 男ってそういうもんじゃない? 長い旅で、襲われても気分悪いし、発散してもらえるなら発散してもらった方が、あたしとしては良いんだけど」

「まあ、その気遣いはもらっておくよ」

「素直じゃないのねー」


 うるせー、とニソルを小突こうとして避けられながら、きれいに整備された石畳の道を歩く。数か月前までは魔法街灯があった通りには、小さな角灯がかつての名残にひっかけられて街路をわずかに照らしていた。

 複雑に入り組んだ小路と、それを分断しながらも長く伸びた大路の両脇には所狭しと商店が並んでいる。空を見上げれば、看板の海が視界を覆いつくして溺れさせるし、張り巡らされたロープにはいたずら小僧どもや慣れた泥棒などが行き来しているのが見て取れる。


 そんな道を行きながらアルフが向かうのはなじみの店だ。アミュレントの富裕街にある酒場。以前のような明かりはなくなり、淡い明かりが店内を照らすようになってしまった酒場はそれでも盛況だ。

 涼し気な空気はないが、それでも酒の品ぞろえ、料理の美味さは変わらないのか、依然、客は多く盛況。


「いらっしゃーい! 好きな席にどうぞー!」


 可愛らしい給仕のエプロン姿をした少女が長い亜麻色の髪とスカートを揺らし、スリットからその眩しい太ももを晒しながら振り返り手をあげてアルフたちに席へ座るように促す。

 それに手をあげて答えつつその太ももに視線を向けながら、同時にアルフは店内を素早く見回して、昔馴染みの姿がないかを確認する。


 店内の端、アルフの昔馴染みたるサイラスの面々が座っていた場所はぽっかりとその主をなくしていた。そこには誰も座っておらず、空いている。

 ニソルはそこを見つけたのだろう。ちょうどいいと座る。アルフも食事をするつもりだったので、対面に座る。


「おすすめは?」

「聞いて頼んでみろよ」

「む、まあいいわ、それも旅の醍醐味よねー、すみません、おすすめいっぱいー」

「はーい」


 アミュレントの料理事情はなかなかに複雑だ。多くの地方からの交通の中間に位置するアミュレントの料理というのは様々な地方の料理が見合いをしてできたあいのこのようなものが多い。

 その中でも今回出てきた料理は元々はバルックホルンの海上取引による北部からの豊富な香辛料を用いたスープをマゼンフォードのポルードの肉の蒸し焼きに使ったもの。


 赤く染まったような肉と、粘膜を刺激する香辛料の存在感が特徴的な蒸し焼きであり、ポルーン・シスムという。

 見ているだけで口の中に大雨が降って洪水になるかのような食欲を刺激される一品であり、贅沢なのは、香辛料と多くの香草とシール酒を混ぜたものを満載にした樽に、一晩漬け込んだポルードの一部位を丸ごとスープで蒸して、専用のたれと一緒に出してくれるということ。


「いっただっきまーっす」


 アルフとしては値段的に躊躇うものだが、ニソルは躊躇うことなくナイフを肉へと挿し込む。良く蒸された肉は抵抗なく、ナイフが差し込まれていく。

 あふれだす封じ込められた蒸気が顔を濡らし、香気が脳を揺らすほどの衝撃を与えてくるが、そんなものはまだまだ序の口。


 まずは一口、肉そのままの味はどういったものかと切ったそれを手に取り、口へと放り込めば、ガツンと殴られたような衝撃が舌先を通り、鼻を蹂躙して、頭へと駆け抜けていく。


「んんんんっ――――!!!」


 事実、舌が感じ取ったその衝撃は、まさに殴りつけられたようなものだった。舌にのせただけで感じられるぴりっとした辛味は汗が吹き出し火を吹くほどでありながら、切り分け口に運ぶ手が止まらない。

 寧ろ食べれば食べるほど、もっと欲しいと切り分ける手間すら惜しんでかぶりつく始末。かぶりつき噛めば広がる戦場の咆哮。


 まさしくそれは鬨の声だ。突撃をする騎兵の合図、法螺貝の笛の音が口の中で喉を通り抜けて、噛んだ肉が突撃を開始する。

 容赦のない下への猛攻。噛めば噛むほどあふれ出す援軍(あじ)に、一秒だって持つはずがない。


 香辛料を惜しげなく使った、複雑であり奥深い辛味に混じるは、シールという果実を使った甘めに仕上げられたシール酒の風味。

 辛いだけではなく、その感じられる甘さの風味がより一層辛さを引き立てる。だらだらと流れる汗は陥落の証か、胃の中で繰り広げられる術式の爆裂のような攻撃には声を出すことすら忘れるほど。


 ただの肉でこれだけでは、ここにタレを使ってはどうなるのか? きっとものすごいことになるのではないだろうか。その予想はきっと正しい、ニソルは震えながらたれをかける。

 一つ目は赤いもの。より一層辛くなるだろうこと請負のそれをかけて、一口。


「っんんんん――!!」


 悶えるほどの辛さが来る。(ぜつ)へ直接、爆破術式でも放り込まれたかのような衝撃。痛みすらともなうような辛さ。

 汗が吹き出し、店でなければ転げてしまいそうなほどの辛さに、ニソルですら涙目になるほど。


「はい、こちらをどうぞ」


 そこにこれでもかというタイミングで、店員に差し出されるジョッキ、天の助けかと、並々とそそがれた酒を耐えられないとばかりにあおれば、広がる爽やかさ――。

 先ほどまで燃え盛っていた森に恵みの雨が降ってて来たかのような心地。それこそがシール酒である。それも数年に一度しか収穫されない幻のシール、ゼシールだけを用いて作った酒に蜂蜜を混ぜた黄金酒。


 甘すぎるほどに甘い酒は、辛すぎる料理と混ぜることで錬金術反応を引き起こしたかのような変化を起こす。

 辛さは一転して爽やかさに変わり、普段ならば飲まないような酒すらも、砂漠で遭難した時にみつけた オアシスの水を飲むように、ごくりと喉を潤し爽やかさが喉を抜け、鼻腔を抜けていくのだ。


 甘い酒で度数も高いが、それを感じさせない美味さに飲んでしまえば、あとはもう気分が高揚に任せるばかり。

 しかし、驚くことにいまだにタレはまだ二種類もある。次にニソルが選ぶのは黄色いタレだ。柑橘系を思わせる爽やかな酸味が匂うだけでわかる。


 ミシャムの実の果肉、果汁、その皮を粉末にしたものを使ったタレをシールの酒でといたものであり、かければ香る酸味と辛みの混ざった香り。

 鼻腔いっぱいに吸い込めば、唾液の雨が降り注ぐ。思わず喉を鳴らして、震える手で一口。


「――――!」


 脳に電流でも走ったかのような衝撃が突き抜ける。一本の光、針にでも貫かれたかのような感覚。酸味が強く、その後から同じように強い辛みがやってくる味の大津波。ニソルという船は大波の連続にもはや沈没寸前。

 口に放り込むたびに、大波に揺られ、もはや口内には嵐が吹き荒れている! 噛めば攪拌され、生じるは大渦巻。大海原に生じた大穴がは、まさしく至福の水底への入り口だ。


 喉を通り、胃に与える衝撃は、先ほどよりもむしろ強く、ずんずんとお腹の衝撃が食欲をさらに増進させる。

 

「つ、次は――」


 最後のタレ。香り立つ桃色の臭気は甘さの証。辛さを中和する甘いタレか? 打撃が弱いのではないかと思うが、そうではないのだ。

 かけても変化はない、透明なそれ、しかし、かけた瞬間に輝きを増す肉! さながら宝石でも見ているかのような変化!


 つまりこれは――デザート!


 食後に出る果実と同じもの。辛さはどこへ行ったのか、感じる匂いはすべて甘さ――。最高級のシールのようなそんな、甘くさわやかな香り。


「んっん~~」


 一口食べると広がるほのやかな甘さ。決してくどいわけではなく、上品な甘さは麝香を放つ最高級のメルスを食っているかのよう。

 甘く、さながら絹のように解ける肉。これが肉なのかと思えぬほど。そして、これはポルードに本来備わっている甘さなのだ。


 熟成されたポルードの肉の甘さ。肉が甘いということをニソルは初めて知った。自然に流れ出すのは涙。頬を伝う涙は感涙だ。

 これほどおいしい料理と出会えたのは何たる幸運か。頬が落ちる。


「満腹――ごちそうさまでした」


 丁寧に手を合わせ感謝を。食べ終わった余韻すら素晴らしい。満足だ、今日はもうこのまま眠ってしまってもいいとすらニソルは思っている。

 というか寝た。


「そいつは良かったよ――って、寝てやがる。おい、金はどうすんだ」


 さすがに払えんぞと思っていると、ごそごそとニソルがぽいと財布を投げ渡してくる。どういう理屈かここの代金丁度だ。


「やれやれ――」


 ニソルの分だけ支払い、自分はもう少し飲むかと思った時――。


「リアン……」


 懐かしい顔を見た。そうもうずいぶんと長いことあっていないようにも思える。数か月ぶりなだけだというのにだ。

 リアン。かつて、このアミュレントを訪れた時に鍛えた新人の冒険者だった少年だ。古なじみの冒険者チーム、サイラスの新人だった。


「アルフさん……」


 少しやせたのだろうか、やつれているようだ。


「座れよ、連れは寝てる。今なら、起きんだろう。酒は?」

「いえ、大丈夫です」

「そうか……」

「…………」

「…………」


 沈黙が重い。この空間だけ、切り取られて別の場所に移動してしまったのではないのかという、そんなありえないことすら感じてしまう。

 それほどまでにここは周囲から隔絶されているように思えた。気持ち酒場の喧騒も遠い。沈黙の時間が過ぎていく、それを破ったのはリアンだった。


「……なにが……あったんでしょう……」


 絞り出すような声色だった。


「俺にもわからん。だが――魔王ってやつの仕業だろうな」

「そのせいで、サイラスは……」


 サイラスは全滅したのだ。ぽつりとリアンが吐き出すように言葉を口からこぼしていく。


 ある日、あの日、運命の日。サイラスは魔物の討伐に出ていた。首尾よく、魔物を討伐していたその時、あの異変が起きたのだ。

 落下。全身に満ちていた力がすべて失われていく。その落差に、高位冒険者たるサイラスの面々は、戦闘中に叩き込まれた。


 それで死ななかったのは、運がいいのか、悪いのか。確実に悪いといえるだろう。魔物が迫るなか、イグナーツがその身をていして魔物を食い止めなければ全員死んでいただろう。

 それでも、スキンナリは腕を失い、ラナリアは片足を失ったという。そして、サラは目覚めることのない眠りについている。


「……気にするなとは言わないが、あまり自分を責めるな」

「でも、僕だけ、生き残って……」

「それは、俺も一緒だよ。俺はあの場にいたんだからな」


 あの日、アルフもまたあの場にいたのだ。魔王復活の場。何もできず、ただ逃げることしかできず、救うことすらもできなかった。

 育て羽ばたいて行った王国級冒険者たちですら、魔王の軍勢には敵わず、すべてが絶望に飲まれていく、あの場にアルフはいたのだ。


「すみません……」

「なに、気にすんな、いつものことだからな」

「……すごいですね。まだ冒険者を続けているんですよね……」

「ん? ああ、俺にはこれくらいしかやることがない」

「僕にはできませんよ……」


 冒険者をやめて、今はその日暮らしの生活をしている。冒険者もそうだが、街の中でその日暮らしの生活は厳しいだろう。

 だが、それでもずっとましだ。死ぬよりも、戦うよりも、ずっとずっとマシなのだ。多くの冒険者がそうやってやめていった。


 やめられるだけ幸運であったといえる。やめられなかった者は、死ぬか、今も、眠り続けているか、重度の障害を抱えて、生きているのか、死んでいるのかもわからなくなっている。

 ほかにも多くの友たちが、死んでいった。いなくなった。やめていった。


「それでも、やめられなかった」


 それはもう性分としか言いようがない。それしかできない、それだけしかやることがない。そういうような、自己の決めつけ。

 まったくもって、合理的ではないのだろうが、思うことは理屈ではないのだ。


 それがどんなに辛いことでも、それ以外にできないと悟ってしまっているがゆえに。

 紛れもない善性である。他人が憧れる光でもある。

 紛れもなく、世界が世界ならば尊敬される人物になるだろう。

 いや、本当ならばこういう人物こそが、世界を救う救世主足りえるのだろう。


 しかし、世界は残酷だ。 

 力を与えることはない。才能を与えることはない。

 必要のない者に与えることはあり、必要な者には与えない。


「すごいですね……」

「すごくねえよ。何かあったら言ってくれ、話くらいは聞くし、何かあれば力になる」

「……ありがとうございます……おかげで少し楽になりました」


 リアンはそう言って去っていった。もう少しかける言葉があったのではないか。そう思うが、何を言うというのだろう。

 今もなお、無様に、過去に縋りついているような男に何が言えるというのだろうか。何も言えない。ただ、力になると、いうことしかできない。

 それですら、何の役に立つのかもわからない小石のような力しかないというのに。


「まあ、それでいいでしょ」

「聞いてたのかよ」

「悪いと思ったけど、聞かれたくないのなら、もっと別な場所で話すべきそうすべき」

「まあ、聞かれても問題はないさ。この大陸は今、こんなことになってるって知ってほしかったからな」


 ニソルはそのあたりのことに詳しくなさそうだったから、そういうことを教える為にも、聞かせておいたのだ。


「お節介ね、あなた。まあ、いいけど。この国がどんな状態だって、死ぬときは死ぬときよ。死ねば諸共、無に帰るだけ。それだけ」

「そうかい」

「さって、じゃあ、辛気臭い話はこれくらいにして、そろそろ戻りましょう」


 勘定を済ませて宿へと帰る。

 明日もまた、食べ歩きという彼女の宣言を受けて、眠りについた。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「…………」


 勇者は、バルックホルンの州境に来ていた。そこには、巨大な壁が築かれている。それはあの日に一夜にして出来上がったものだった。


「聖騎士か」


 その基点、バルックホルンの街道にあるのは、その城壁に半ば融合している聖騎士の姿。

 銘はヴィンターダ。


 その騎士は、その身を挺して防波堤を作り上げたのだ。なんという献身だろうか。名も知らぬ騎士を勇者は、聖騎士たちは讃える。

 彼がいなければ、この世は既に終わっている。魔獣が溢れだし、この数か月の平穏などありえない。魔王を押しとどめるに足る結界をはることすらできなかっただろう。


「ゆえに、あとは任せるが良い」


 その想い、その献身を、勇者は背負って戦うのだ。

 散っていった犠牲が無駄ではないことの証明のために。

 それが、勇者の使命であるがゆえに。


 聖剣の煌きは天へと上り、魔物を駆逐する。

 駆動する聖剣。

 その殺戮機構は何よりも魔物を殺す。


 その機能のままに。

 その役割のままに。


 勇者は戦う。


 その裏で、嗤うナニカの声を聴きながら。


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