第8話 終わり
世界が血で染まっている。地獄とはかくあるべきだとでも言わんばかりに。此処こそが地獄、これこそが地獄絵図。
虐殺という名の過剰殺戮が織り成す地獄は、今もなお拡大を続けている。無辜の民が悲鳴を上げて逃げ惑い、そして尽くが逃げられはしない。
全ての阿鼻叫喚、全ての絶望を混ぜ込んだ魔女の窯の底。ぐつぐつと煮えたぎる窯の底ゆえに逃げ場など存在はしない。
全てが炎上している。こここそが地獄の底だ。ならばどこへ逃げるというのか。逃げられるわけがない。逃げられる場所などありはしないのだ。
建物が倒壊する。そのたびに悲鳴が上がり、紅い華が咲く。死骸は例外なく炎に包まれて燃えている。油分が大気を汚染し、燃える死骸は酷い瘴気を撒き散らす。
肌に張り付くのは死体から出た魂の如き瘴気。生者を呑み込む死者の手招き。お前も来い、お前も来い。そう絶望の中で死者が叫んでいる。
右を見ても、左を見ても、炎が燃えている。燃えていない場所ないし死骸がない場所もない。死体の博覧会会場と言われても信じられることが出来そうなくらい石畳の上は赤く染まっている。
しかも、現在進行形で死体が増えていっているというのだから恐ろしい。おおよそ考えらえる以上に絶望に薪がくべられている。
むせ返るような死臭の中で、宿屋の住人、それから逃げている街の人々を連れて港まで行くのは地獄の道のりだった。
王国級冒険者が何人もいたとしても、現状、力が落ちるという異常事態の中でどれほど役に立つというのか。技術があったとしてそれでどうにかできるのは実力が少しだけ上の相手だけ。差が隔絶していれば言うに及ばず、大群ともなれば対応できるはずがない。
そう今アルフたちに魔物の大群が大挙して襲って来ている。アルフを含めて戦えるのは数名。どれほど懸命に守ろうとしても一人、また一人と守るべき者たちが地獄へと連れて行かれる。
それら全てを助けることは不可能。ゆえに、アルフの選択は早い。弟子たちに指揮を任されたアルフは決断する。
「足の遅い奴らを置いていくぞ」
足の遅い者をアルフは置いていく。全員で助かることは不可能。現実を見ろ。物語ではないのだ。英雄はいない。
英雄だった者たちは天墜した。一般人と同等の身体能力しかなく違うのは技術だけ。培った経験と全ての技術でどうにかこうにか凌いでいるだけだ。
死傷者、老人、足を悪くした者は置いていくしかない。火炎袋や爆裂玉を持たせて囮となってもらう。そうやって次へ命を繋げさせる以外に道はない。下手にかばって全滅するよりはマシ。
背後で生じる爆裂や火の海は彼らがそうやって死んでいった証。
「ああ、くそ最悪だ」
それがわかっていても気分は最悪だった。それを決断しなければならなかった己に反吐が出る。だが、それでも決断したのが自分で良かった。弟子にはさせられない。こういう泥を被るのは大人である自分だけでいいのだ。
全ては救えない。救える命だけを連れて行くしかないのだ。この状況を乗り切り、繋いだ命がこの惨劇をひっくり返してくれることを祈って、若者に託すために命を繋ぐのだ。
精一杯自らが傷つきながら、盾になりながら前へと進むしかない。万全であればなどと泣き言を言う事すら許されず、手足を動かして守るしかない。
「ぬおおおおお!!」
「スターゼル!」
「む、アルフであるか」
その時、通りへと飛び出してきた影。スターゼル。彼は一人、聖鍵で戦っていた。
「港に行くぞ! 話はあとだ」
「了解であーる。まったく、最悪である」
合流したスターゼルがそう吐き捨てるように言った。カイゼル髭は燃えて、なくなってしまっているし、傷もある。
それでもまだ戦うという意気を見せていた。貴族としての矜持。人を守るという思いはまだ燃えている。
だが、それではどうしようもないことも良くわかっていた。聖騎士としての力を使うにはエーファも必要だ。
アルフでもどうにかなるが、この場において指揮官となっている彼を連れて行くのは駄目だろう。
だから力が振るえない。あの力はこのために作られていたのだと聖鍵が語りかけてくる。力を使えとヴィンターダが呼びかける。
「わかっているである」
「スターゼル!」
快音と共に彼に跳びかかろうとしていた魔物が吹き飛ぶ。
「気を抜くな!」
「すまないである」
「……良い。行くぞ」
最悪の撤退戦は続く。
「これは、流石に気持ち良くなれねえわ」
「同意したくありませんが、同感です」
殿についていたランドルフの言葉にジュリアスが頷く。迫る敵を斬っても斬っても終わりがない。これでも数が減っているというのにだ。
けが人や老人を囮にして、それらが持つ火炎袋や爆裂玉で減らしたり、囮となった者の肉に魔物が食らいついている間に逃げて来たが全滅は濃厚。やはり、あれだけの数喰らうのも早いという事であり、あの程度では殺しきれないということ。
「しゃーない。ここは、俺が残る」
ランドルフがそう言う。
「そうですね」
ジュリアスも同意した。誰かが残って敵を食い止める必要がある。囮が効果を発揮しても短時間しかもたないのであれば、もつ誰かが残らなければならない。
それにランドルフは傷も多く何より力の落差の影響でふらふらである。殿にいるのは彼が強いからではなくいられる場所がそこだけだったからだ。これ以上速度は挙げられない。
もしこれ以上速度をあげるならば必然として彼はおいていかれるだろう。早いか遅いかの違いだけだ。
そしてこの場合、早い方がいい。
「おーい、アルフ! 俺、ここで残って敵食い止めるわ」
それは事実上の自殺宣言。大波のような敵の大群が今も迫ってきている中で止まるというのはそういうことだ。
「……ああ、行け」
「おう、んじゃな」
そして、アルフもそれを承認する。本音を言えば止めたいが、先頭にいるアルフは自分たちの後ろを見る。そこにいるのは何の力も持たない女子供などの街の住人達。
ボロボロだ。だが、彼らは若い。全員が若者だ。まだ未来がある前途ある若者たちであり冒険者が守るべき無力な者たちだ。
彼らを守ることこそが冒険者の役目。だから、アルフは止めない。むしろ、行けと言う。
「良いのであるか!」
「ああ、これが最善だ。こうするしかないんだ」
「…………すまないである」
「何を謝る。謝ってる暇があるなら行くぞ」
謝るよりも敵を倒して道を開け。少しでも多く助ける為に。
アルフはそのために剣を振るうし、矢を射る。ナイフを投げて、敵の死体を盾替わりに後ろの連中に持たせて少しでも多く生かすように。
「さて、行ったか」
そんな彼らを見送って、ランドルフは剣を構える。
「大波津波、やれやれ敵だぜ。全部、敵。怖い怖い」
目の前に迫るは魔物の大群。
「ま、狙わなくていいしちょうどいいな」
笑みを浮かべて、ランドルフは魔物の大群へと突っ込む。
「――」
剣戟の衝撃を聞いた。数度の剣戟の衝撃。しばらくして、魔物の進軍が再開される。それはつまり、ランドルフが負けたことを意味する。
王国級冒険者の敗北を悟って、住人達が悲嘆にくれる。
「走れ!!」
それをアルフは一喝する。悲嘆にくれている暇があるのなら走れ。生き残れ。でなければ、何のためにランドルフが残ったのだ。
「でないと、わしが頭を潰しますぞ」
アルヴォスがそう言うと、住人たちは走り出す。その歩みは ゆっくりだが、着実に前へ。飛び出してきた敵はジュリアス、アルヴォスが対応する。
それでも何人も死ぬ。
「アルフ殿―!!」
そこにゼグルドがやってきた。全身に傷を受けているが、それでも力強さを感じる。
「ゼグルドか」
「うむ。港に向かっていたところだ」
「行くぞ、話はあとだ」
「応!」
ゼグルドが加わっても状況はさほど変わらない。力を残している彼であっても、大勢の人間を一度に守ることなど不可能なのだ。
人間という生物が弱いせいもある。炎の壁、炎の道を作っても、中の人々が巻かれてしまってはどうしようもない。そのため、その手段は使えない。そもそもそんなことをすれば、彼は動けない。
力のある者を動けなくすることなど馬鹿のやることだ。だから、屍山血河を築き上げながらでも進む。
傷を受けた子供。捨てていく。
魔物に喰いつかれた男。捨てていく。
魔法で吹っ飛ばされた女。捨てていく。
もはや老人だけでは済まない。足の遅くない者だろうとも、歩けないなら捨てていくしかない状況。目に見えて守っているはずの住人が減って行く。
守っても守りきれない。
「うむ。わしの出番かな」
「壁を作れ。そして、食い止めろ」
「承知したよ、アルフ。じゃ、帰ったらまた酒でものもうや」
「ああ」
背後に土壁が生じる。その向こう側に残るのはアルヴォス。
「さあて、そいじゃわしの相手をしてくれんかの」
土壁の向こうで大槌を振るう音が響き渡った。脳漿が潰れる音が響き渡り、骨の砕ける音が彼の健在の証。
遠ざかれば聞こえなくなる。目に見えて減る魔物であるが、それでもまた別の場所から溢れ出してくる。
「切りがありませんね」
ジュリアスがそう言う。
「ああ。それに、あの空で何かやってる奴らもやべえ」
空を見れば、魔王と他五人が何かをやっている。何かを呼び出そうとしているような。
「スターゼル様!!」
「来たかエーファ!!」
エーファが合流する。それと同時に空が煌めいた。
天の空間が歪み、軋みをあげてそこから城が現出する。空に浮かぶ巨大な城。宮殿とでもいうべきなのだろうか。
それほどまでに超巨大な建造物が都市を覆い尽くす。
また、それと同時に白の巨兵が現れる。純白の鎧に覆われた巨兵。
それの出現と同時にスターゼルの聖鍵が脈動した。
「いくである。エーファ」
「はいですよ」
「良いのか」
「ふふん、任せるである。我輩の辞書に不可能という文字はちょっとしかないのである」
「……なら、頼む」
そこはせめてないと言えよとスターゼルの背に告げて、アルフは住人たちを連れて走る。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「来い、『ヴィンターダ』」
名を叫ぶ。名を呼ぶ。その名を。
巨大な魔法陣が地面に生じる。ガチリ、と鍵が回った音が響いて、ゆっくりとそれは現れた。人の四から五倍ほどの巨大な騎士。鋼に輝く剣を手にした騎士。
聖騎士の力。聖鍵より呼び出されし大いなる騎士。土のヴィンターダ。
それに気が付いた白の巨兵がヴィンターダへと向かう。
しかしヴィンターダは動かない。
――何故に戦う
響くはヴィンタータの意思。
答えよと騎士は問う。
「そんなもの決まっておろう」
戦う理由は既に。この身に既に。
ゆえに、躊躇う理由などありはしない。この身は貴族である。守ることこそが本懐。領民だろうとなんであろうとも、この手に届く全てを守る。
「全てをよこせである。聖騎士であり貴族である我輩は、民を守るのである」
――ならば問う、何を成す。
「守ると言った」
――よかろう。ならば我が力振るうが良い聖騎士よ。
「無論であーる」
剣が顕現する。構えは宮廷剣術の構え。ただ腕を振るい暴虐を成さんとする白き巨兵に宮廷剣術の一撃が炸裂した。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
聖騎士の出現は皆に希望を与える。
それだけでなく。
「おう、アンちゃん!!」
「ホークか!」
「おう!」
「アルフ!!」
荷車に大勢乗せて、現れる傭兵団。それからフェミニア。風と弓が降り注ぎ迫りくる脅威を殺し尽くす。
「バリケードだ!」
大通りの建物を壊す。あるいは馬車などを倒して道を塞ぐ。
「さすが手慣れてるな」
「アンちゃんには負けるっての。ここまでこんだけの奴らを連れてきたんだからな」
「あいつらのおかげだ。港はもうすぐだ。急ぐぞ」
「おうよ!」
人が多いのはそれだけ遅くなる。だが、傭兵団はその守り方を心得ている。ノウハウがあることは少しでもマシになるということ。
そして、ようやく港へと辿り着く。
「みな、こっち!!」
それはネルの声だった。
船が一隻だけ停泊している。それを守る様に戦うのは船乗りとナズル、クレイン、カイルの三人だった。
そちらへと走る。
「お前ら、無事だったか」
「当たり前だ」
「死ぬかと思ったあああ」
「ふっ、この私様がやられるとでも」
「いつも通りで助かるよ。住人を船に乗せる。良いか?」
アルフはネルへと問う。
「了承。そのつもり。お互い様、困ったとき!」
ネルはそう言い、アルフたちが連れていた住人たちを収容にかかる。どれほど乗れるかは考えなくて良さそうであって。
ネルたちの船は巨大だ。三本のマストを持ち横帆7枚、縦帆3枚を備えており、商船というにはいささか大きすぎるくらいだ。
「断られなくてよかったよ」
「ない、断る」
「怒らせたならすまんな。久しぶりのこんな状況に俺も参っていたんだ」
そう言いながら、アルフは戦っているナズルたちの所へ行く。港への入り口は塞いだ。それによってなんとかなっているが、急がなければここも危ない。
「われに任せろ!」
ゼグルドの炎が港に入る道を塞ぐ。バリケードにした家財などが燃えて炎の壁は高く高く拡がりを見せる。
これでしばらくは安全だろう。竜種の炎はそう簡単に破れたりはしない。
多少の余裕。予断は許されないが、少しばかりの余裕により周りを俯瞰することが出来る。
聖騎士としてスターゼルは今も戦っている。彼がいなければここにはたどり着けなかっただろう。壊滅して今頃死骸を晒していた頃だ。
ふと、
「ミリアたちは?」
彼女たちの姿が見えないことに気が付いた。
「ここにいるわよん」
「リーン!」
気になっていたところにぼろぼろのリーンやってくる。なるべく露出した下着から目をそらしながらアルフはその背に背負われた2人を見た。
「ミリア、ベル! 何が、いや話はあとだ。二人を船に乗せてくれ」
「ええ」
「ここにいる奴らが全員乗ったところで離脱だ」
早々に離れよう。悪いが、戦っている連中は置いていくことになる。
「心配?」
ふとネルがそんなことを聞いてくる。
「置いてきた、心配、仲間?」
何も言っていたはずだが、そんなことを彼女は聞いてきた。
「なんでわかった」
「経験、ある、私にも」
「いいや」
心配していないと言えばうそになるだろう。なにせ、こんな状況である。力がおちているというのに、魔物の軍勢の前に囮として残してきたのだ。
生きていることは絶望的だが、
「あいつらのことだ。ひょっこり生きているさ」
そう思う。アルフはそう思うのだ。絶望的だが、あの弟子たちが早々死ぬ姿は想像できない。仮に死んでいたとしても、
「どうせ、向こうで再会できる」
死ねば再会できる。だから、死を嘆くよりは生き残る。まずはそれを考えるのだ。
「なるほど」
船乗りがネルにもうすぐ収容が終わると告げた時だ。
「なんだ?」
突然静かになった。
悲鳴が聞こえない。何かが燃える音が聞こえない。
運命は誰も彼もを逃しはしない。誰もが願う死にたくないという願いを。それは純粋であるがゆえに、それは何よりも強く強く声ならぬ叫びとして奴らの耳に届くのだ。
絶望をくべる火の番人。鋼鉄を打ち鳴らす鍛冶師が如き、殺戮の使徒へとそれは届くのだ。
重ねて言う。運命は彼を逃しはしない。そもそも誰も彼もをここから逃すことを運命は許していないのだ。地獄の窯の底だれも逃げられるわけがない。
そして、他に交じるものなどない欲求、想いを運命は聞き届ける。そもそもこの状況にして混じるものなどある方がおかしいのだ。願いはどこまでも届く。
ゆえに、それが純粋であればあるほど呼び寄せてしまうのだ。
さあ、絶望しろ。それこそが望むもの。
至るは破滅への道――。
運命は、誰も、逃しは、しない。
事態は一向に好転の兆しを見せず。地獄を創りだした者の首魁の手によって更なる地獄へと加速度的に落ちていく。
「――ウソだろ」
巨大な力が現出する。
上空に存在する魔法陣から現れるのは城ともう一つ、竜だった。超巨大なドラゴンが全てを呑みこまんと向かってくる。
逃れられる術などありはしない。単純な魔法の方がまだましだと言えるレベルの大破壊。
進路上にある全ては破壊されていく。何もかもが破壊されていく。
断言する。これを止めることなど不可能。いかに不退転の決意を示そうとも、あの竜を止めることはできない。
意志、覚悟、根性。そんなものが通じるのは小説の中だけの話だ。現実問題、それではどうにもできない事態が必ず存在する。
その時頼れるのは地力だけ。積み上げた自らの力のみ。ゆえに、力の足りぬ者は死ぬ。呆気なく、何の感慨もなく無残に死ぬだけだ。
誰でもいい。この事態を好転させるのならば神でも悪魔でもなんでもいい。それもまた純粋な願いゆえに、遠く遠く聞き届けられるのだ。
英雄とは、常に最後に現れる。屍山血河の最奥で積み上げられた死骸の舞台の上で初めて英雄は踊れるのだ。最後に立っていた者こそが英雄であるがゆえに。
だからこそ、それは今だ。今、語り部となる存在がいる。英雄を英雄として語る存在がいて、そして守るべき命がある。
ならばこそ今だ。英雄の誕生劇、屍山血河の舞台は完成した。さあ、今こそ、英雄譚が始まる。悲劇を痛烈な希望が照らすのは今を置いて他にない。
ゆえに――
「なに――」
勇者は舞い降りる。
これより先、悲劇に出番はない。お前の出番は終わりだ。疾く、舞台より降りるが良い。
これより先は、勇者の舞台。悲劇などありえない。
さあ刮目せよ、いざ讃えん。その姿に人々は希望を見るがいい。
あふれ出る閃光の煌めきが闇夜を照らす。まさしく、世界を照らす勇者が降り立った。
鋼の鎧を見に纏い。右手に輝く聖剣を携えた男がその剣を振るった瞬間、事態は好転した。破壊をもたらす竜の首が飛ぶ。
それを成した男はそれを誇ることなく歩いてゆく。アルフの隣をただ通り過ぎていく。
ああ、まさしく。あれこそが希望の光であった。その姿、まさしく不動にして絶対の盾。背を向け敵を見据える姿はまさに勇者そのもの。
前に立たれるだけで感じるのは絶対の安心。この人の後ろにいればもう大丈夫。そんな安心感。ついにその男は災禍の中元凶の下へと辿り着いた。
「行け。ここは俺が食い止めよう」
ヘルムの下、くぐもった声がアルフへと告げられる。
「あんたは」
「勇者だ」
その言葉だけで十分だと言わんばかり。
だが、
「あらあら、遅かったじゃない勇者。でも残念、本当に、遅かったわね」
その瞬間、魔王の言葉と共に、世界は白へと染まった――。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「――――」
気が付けばどこかの島にいた。
「何が、起きた」
あの惨劇が起きたとは思えないくらいに空は青い。
辺りには船の残骸が流れ着いている。
「ミリア、ベル!」
死にかけてはいるがミリアとベルも流れ着いている。
「ここはどこだ。誰かいないのか」
誰もいない。答える者はいない。
何が起きたのかわからない。中堅冒険者でしかないアルフには。
此れより先は、アルフの出番などありはしないだろう。
これより先に語られるのは伝説なのだから――。
というわけで、これから先は仲間集めとかそういった話になりますが、ちょっとしばらくお休みください。
この出来をみたらわかるとおりだいぶというかヤバイ状態なのと、色々とやることとかやりたいことがあるので、そちらに集中しようと思いまして。
いや楽しみにしている方には申し訳ないのですが、プロではないので好き勝手やらせてもらいます。
ゆっくり書き続けていくのでゆったりとお待ちいただければと思います。