ヴァンパイア・ナイツ9
「ちょうど一月ぶりだね」
僕が声をかけると、梢ちゃんはびっくりしたようにこっちを見た。
「・・・・・・」
僕はハラハラした。思い出して貰えなかったら僕の立場があんまり無い。
「あ、黒谷さん」
梢ちゃんはそう言って、頷いた。
「何でしょうか?」
ゴホン。
「ごめんね、悪いけど、その、血の方を・・・」
「そうでした・・・」
梢ちゃんは、少しボーッとしている感じだった。今日は疲れているのかな?
「今日は学校大変だったのかな。もし疲れているようだったら日を改めるけど」
「ううん、疲れてない。あげるよ」
梢ちゃんは僕の方に手を差し出した。
「人に見られるかもしれないから、できれば部屋の方で飲ませてもらえる?」
僕は思い切ってそう言ってみた。
「そうなんだ、そうだよね」
梢ちゃんはそう言って家の方に歩きだした。僕も後ろから付いて行ったけれども梢ちゃんがぼんやりしているのが気になった。少し気を楽にしておしゃべりでもしてくれると元気になると思うんだけれど。他の子達はもう少し、というより梢ちゃんに比べると大分話すのが好きだ。嫌われたって感じでもないんだけれどね・・・・・・
「部屋の窓を開けるから、ここで待っていて下さいね」
気がついたら、梢ちゃんの家の玄関に着いていた。僕は考え事が頭から離れなくって反射的に頷いてしまった。
・・・バタン。
ドアの閉まる音がして僕は我に返った。まずい。梢ちゃんに休んでから部屋の窓を開けるように暗示をかけるのを忘れた。偶然窓を開けるのを待つしかないけれども、参ったな。
僕がどうしたものか考えていると、しばらくして梢ちゃんの部屋の窓が開いた。こっちを見て手を振っている。僕は慌てて梢ちゃんの部屋に窓から入った。