ヴァンパイア・ナイツ3
その女性は戸惑った様子で振り向き、僕に尋ねた。うーん、大人っぽく見えたけれど女性っていうより女の子っていう年だな。
「どうしましたか?」
僕は女の子と視線を合わせ、声に魔力を込めた。
「僕は実はヴァンパイアで、血が必要なのです。分けてもらえませんか? ご迷惑はおかけしません」
「・・・・・・えーと」
女の子は困惑している。無理もない。自分はヴァンパイアで血が欲しい?
しかも魔力のせいで『そんな事はあり得ない』と非難することができない。心理的にもやもやする筈だ。
「事情がよくわかりませんが、あまり面倒でないなら・・・・・・」
「そうですね、あまり面倒ではないと思います。手を出してもらえませんか」
僕は女の子の手をとり血管の位置を確かめて、血を・・・・・・。
「ちょっと待った」
カレンさんが話を遮った。
「なるべく提供者の家で飲ませてもらうようにって言われていたでしょ?」
「それ、ものすごく頼みづらくって・・・・・・」
「人によっては貧血を起こす場合がある。次からは家で飲ませてもらえ」
「気持ちはわかるけど思い切って正直に頼めばいいと思うよ。『貧血を起こすかもしれないし、人に見られるかもしれない』って」
「多分面倒なのは嫌と言われて気が引けたんだね。まあ、わかるけど。それから、手から飲んだのかい?」
「飲むのに時間がかかっただろう。首から飲んだ方が時間がかからない」
えーと、ごめんなさい。次は頑張ってみます。
「それで、どうなったの?」
カレンさんが言った。僕は仕方なく続きを話始めた。
それで、僕は血を飲ませてもらった。あまり痛くは無いらしい。注射の方が痛いっていう話だ。
「有り難うございます。助かりました。あの、体調は悪くありませんか?」
「いいえ、大丈夫です」
女の子はちょっとボーッとしているみたいだった。僕は家まで送っていった。
玄関で。
「後で水分をとってくださいね」
「はい」
僕は再度、女の子と目を合わせた。
「僕の事は次に僕や僕の同属と会うまで忘れて下さい」
「・・・はい」
僕は『おやすみなさい』と言って、その女の子と別れた。
兄さんが、僕をじろっと睨んだ。
「何だ。『また飲ませてくれ』と頼まなかったのか?」
「それは頼んでおくべきだったね」
「・・・ちょっと気がひけて」
「まあね。でも重要な事だから、今晩にでも行って頼んで来なよ。血を貰える人を見つけるのは大変なんだし」
「それから、水分はちゃんと目の前でとってもらった方がいいよ。記憶にブロックがかかるから、目の前に私達がいないと吸血された事を思い出せない」
「・・・気をつけます」
会長とエリカさんは、何か困った事があったら遠慮なく相談するようにと言って帰って行った。僕は心理的にへとへとだった。顔を洗ってすぐ寝てしまう。おやすみなさい。