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ヴァンパイア・ナイツ2

僕は、ヴァンパイアの集落から最近この街に引っ越してきた。実をいうと集落から外にヴァンパイアが住んでいるのは珍しい。今現在僕の集落では僕と兄さんだけだ。

 兄さんが先に街に出ていたので、二人一緒の方が安心だからしばらく一緒住め、と親に言われてそうしている。兄さんは僕が街に出てくるのに反対で、出てきてからも諦めずに帰れ、帰れと言っている。

 ヴァンパイアが人間の振りをして生きていくのは大変だ。日の光に弱いから、日中は外に出ない。力もすごく強い。気をつけないと色々な物を壊してしまう。それから食事をしないで血を飲む。・・・僕達が血を飲んでも人間はヴァンパイアにはならない。そんな属性があったらきっと大変な事になったと思うけど。

「こんばんは、今日の調子はどうだった?」

アパートに戻ると、エリカさんに会った。女性のヴァンパイアで、とても明るい、エネルギッシュな人だ。

「成果なし」

「まあ、初めはしょうがないね」

うんうん、とエリカさん。

「あせらずにやる事だよ。血を飲まないと魔力が強くなっていく事は知っているね?」

僕は頷いた。魔力だけでなく、筋力も強くなっていく。血を得やすいようにという防衛反応かもしれない。

「魔力が入りやすくなって、相手も同情的になってくれる。会長がコントロールが大丈夫だっていう事は、少しコントロールが効きすぎているくらいなんだろうね。そのうち成功するよ、大丈夫。あ、コントロールを弱めろって事じゃないからね」

皆そう言う。僕は頷いた。

「エリカさん、会長に会ったんですか」

「ついさっき帰って、部屋に戻ったよ」

「兄さんは?」

「まだだと思うね」

そろそろ夜明けも近い。兄さんとうっかり顔を会わせて説教されないうちにさっさと寝てしまおう。


 夕方近くに目が覚めた。兄さんはまだ寝ている。ヴァンパイアは年長程、睡眠時間が長くなる傾向にあるからしょうがないか。

何となく落ち着かずボーッとしていると、階段を上がってアパートの廊下を誰かが歩いてくる

「何かの勧誘かな?」

 勧誘だったら居留守を使えと言われているので、僕は静かに廊下の足音に耳を傾けた。廊下の足音は僕の部屋のドアを通り過ぎて、隣の部屋で止まった。会長の部屋だ。ガチャガチャと鍵を開ける音がした。ドアが開いて、また閉まる。

会長だったのかな。この時間に、外出? 


しっかりと夜になって、兄さんが起きてきた。

「おい、外にでるぞ」

「わかっているよ。僕もそろそろ出ようと思っていたんだ」

正直煩わしいけれどもしょうがない。アパートをでると、エリカさんに会った。

「出かけるの?私もだよ」

エリカさんは僕達二人の服装をチェックした。

「弟の方はお兄さんより服装を気にするみたいでよかったよ。それに兄さんの方は弟が来てから服装が少しはまともになったね」

 兄さんの服装がまともになったのは訳がある。僕が母から兄さんあての洋服を大量に預かってきたからだ。どうせ服に金を使うなんて事はしていないだろうからって。僕自身は信用しているから自分で気をつけろって言われた。ちょっと不公平な気もする。

「大きなお世話だ」

「女の子達だって喜ぶんだから、おしゃれしなよ。せっかくヴァンパイアは容姿に恵まれているんだからね」

エリカさんは兄のぶっきら棒な返答を気にすることなく会話を続けた。

 エリカさん自身はちゃんとお洒落をしている。勿論美人だ。好奇心が旺盛でいつも目がキラキラしている印象を受ける。

 兄さんはヴァンパイアっぽいマントを着せたら多分一番似合うだろう。背が高めでわりと威厳がある。髪は長髪の方が手がかからないので、長髪。

「じゃあ、みんな頑張ってね」

 僕はエリカさんと兄と別れて、ナンパに精ををだす事にした。血を提供してもらえる優しい人を探すのは満月の夜前後という事になっている。それを過ぎたら、新しい提供者を探すのはやめて、血を飲む事に専念する。勿論、提供者が十分に居る時は、新しく人を探したりはしない。

 僕の場合は提供者絶賛募集中っていう訳だ。人気の無い通りで気配を殺し、じっと待つ。待つのは全然苦にならない。静かに待つことに集中していると、ハイになってくるくらいだ。

 どれくらい待っただろうか。女性が一人こちらに歩いてくる。よし、今度こそ。

僕は慎重に魔力をコントロールする。そう、これくらい・・・・・。

「すみませんが、少し困っているのです。・・・悪いけれど話を聞いてもらえませんか」

その女性は振り向いてくれた。昨晩の女性程、迷惑そうな様子ではなくって僕はホッとした。


 僕がちゃんと提供者を見つけたと兄に言うと、兄は喜ぶどころか僕がすごく悪い事をしたような顔をした。それでもってその事を会長とエリカさんに言いつけた。

「お邪魔するよ」

 ドアが開いて会長が入ってきた。癖のある茶色の柔らかい髪で、目も茶色がかっている。珍しい、と思ったけれどもうちの集落が黒目、癖のない黒髪が多いってだけの話かもしれない。

「埃だらけだね。カーテンと窓を開けたいくらいだ」

にこやかで、軽い印象の人なんだけど、口を開くと皮肉っぽい。

「寝るだけだからな」

兄さんが至極まじめに答えて、会長はやれやれって顔をした。

「入るからね」

エリカさんが入ってきた。今日も元気そうだ。それから僕の被害妄想かもしれないけれど、何かわくわくしているように見える。

「みつかって良かったね~。で、どんな感じだった?」

三人の先輩方の注目が集まって逃げ場がなくなった僕は仕方なく説明し始めた


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