ヴァンパイア・ナイツ14
私は人と話すのを避けていて、高校に通っているだけでも正直、きつい。でも、周囲の人はそんな事はわかってくれない。親には散々非難される。梢、あなたは人生で一番楽な時期に何でそんなつまらなさそうな顔をしているのかって。散々っていうのはちょっと大げさかもしれない。まあ、時々ってくらいかな。
携帯でメールを送る友達もいないのだけれど、同級生達が持っていて見ていてどうしても欲しくなった。嘘は嫌い。でも、これが最後の嘘って自分で自分に約束して思い切って親に言ってみた。皆持っていて、自分も持っていないと仲間外れにされるって。そうしたら結構あっさり買ってくれた。
携帯に好きなストラップをつけたり、待ち受けや着信音、着信画像を変えてみたりするのが楽しかった。今気に入っているのは、コウモリと三日月の動画。コウモリが静かに揺れて小さな声でキュイキュイって鳴くのが気に入っている。
学校の休み時間にその動画を眺めていたら、同級生にいきなり声をかけられた。
「それ、可愛い」
「これ?」
「見せて」
私が携帯を渡すと、同級生はしばらくじっと動画を見ていた。気に入ったらしくってダウンロード先を聞かれた。URLを紙に書こうとしたけど、間違うと面倒だからメールしてよって言われてメールした。
「これ、私好きだけれどダウンロードは有料だから気をつけてね」
「あ、そうなんだ」
その同級生はちょっと残念そうに言うとどうしようかな、って言って席に戻って行った。
それから少しして携帯のメールの受信音がいきなり鳴って私はびっくりした。動画を再生していたから小さい音量ながらも受信音はしっかりと出てしまい、私は恥ずかしくなって慌てて受信トレイを開いた。
『サイト見てみたけど可愛いのがいっぱいあるね。私も何か買うかも』
わざわざメールくれなくても気にしないのに。返信しなくっちゃ。
『できればストラップも揃えたいの。コウモリのストラップ見つけたら教えてね』
授業がそろそろ始まる。私は携帯の電源を切ってカバンにしまった。