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俗に言う出会いは最悪ってやつだ  作者: ルーラブ


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9/9

魔法の歴史

「我々は争いは望まない」


大きな声でそう宣言した。すると数コンマ遅れて城下から自分の声が遅れて拡声され、聴衆に届く。


次の瞬間には歓声、どよめき、いろんな感情の声が返ってきた。


一瞬、指示に背いたことを後悔し後ろを振り返った。そこにいた父親は、どう反応するでもなくただひたすらに振り返った政貴の目を見つめていた。


やってしまったかと一瞬後悔したが、もう後には引き返せない。


「争いで生まれるのは憎しみだけ、お互い話し合えばきっと手を取り合える、そう確信しています」


ちょうど実体験をしたばかりなのでスラスラと言葉が出てきた。そしてあまり長く喋るとボロが出そうなので簡潔に締めくくり、一礼をして演台を後にした。


政貴の話が終わると、人々は皆帰路についていった。政貴も、扉から城内に戻る。そしてあまり空気は芳しいものでは無かった。


これは叱られるやつだと肌で感じた。しかし、もしかするとこれは夢かもしれないし、明日には元の政貴が戻り、自分は元いた世界の一真に戻ってるかもしれない。


ごめんねと、政貴に心の中で謝罪をする。


さて、城内の視線は父親に向けられていた。息子の身勝手をどう捌くかは彼に委ねられている。


そして一呼吸おいて、父親はこちらを振り返った。


「争わない、それがお前の決断か」


正面に立たれ、思わず十五センチは違うであろう身長差と体格差に圧倒される。そして精一杯の肯定の意思として首を縦に振った。


怒っているかもしれない、殴られるかもしれない、どこか不安を感じて身構える。


ポンと思っていたより軽微な振動が頭に伝わる


「そうか、若いモンの判断に俺は任せる」


そう言って頭に手を乗せて目を合わせる。威圧感はあるが、その手と目はとても優しく、父親そのものだった。


「成長したな」


そう言うと、母親と共に階段を下っていき、その姿が見えなくなるまでその場に居た全員が頭を下げ続けた。


そして政貴は、先ほどの演説からこの世界に興味が湧いてきた。と言ってもこの世界についてあれこれ質問すると怪しまれる。


「自室に戻られますか?」


先ほど耳打ちしてきたお付きがそう話しかけてくるので、勉強がしたいという理由で本がある場所を案内してもらうことにした。


お城の一階部分には、多くの本が貯蔵された部屋が存在した。図書館のように広大な部屋では無いが、体育館ぐらいの広さがある。


政貴以外にも数人がそこで資料集めをしているらしくすれ違う人全員に挨拶され少し偉くなった気分に浸る。偉人体験をさせてくれてありがとう政貴。


さて、図書館と言っても娯楽用ではなく資料集がメインだ。どこに何があるか分からなかったので、適当に挨拶をしてきた人に歴史に関する本を探していると伝えると快く案内してくれた。


適当に表紙を見て気になったタイトルを手に取る。手に取ったのは「魔法と建国」


先ほどまで抱いていた疑問について書いてありそうなタイトルの一冊だ。


適当にパラパラと紙をめくっていると、序盤の方に「第一章 第三節 魔法の歴史」という表題を発見した。


そしてこの本によると、およそ二千年前に一人の少女に魔法の力が突如宿ったとされている。そして彼女は水や火を体力のある限り自由に操れたとされている。


当時の火起こしと言えば石同士を打ち合わせて火の粉を起こし、それを火種にしてどんどん藁に燃え広げる火打ち石が主流だった。この手間の掛かる作業が彼女の魔法によりその集落の人々は火起こしからほぼ解放され、彼女は神の使いとして崇められたとされている。


そんな彼女が一国の王となり、やがて子孫が誕生する。その子孫もほぼ全員が魔法の力を受け継いでおり、初めは火や水を出すだけだった魔法も動物の狩りなどの使用されるようになっていった。


人々は魔法が使える一族を奉り、そしてその一族は大きな権力を手に入れたとされている。


それからその子孫がまだ統治されてない土地の統治を目論んで全国に分散、そしてその子孫はどの場所でも神として崇められ、人々は彼らの力を頼るようになっていた。


現在では全国で三十五個の国に分かれており、それを統治しているのはどれも二千一千年前の少女の子孫であり、魔法を使える者とされている。


そしてその本の最後には現在の国の分散図が描かれていた。そこに描かれていたのは


「日本列島・・・」


幼少期から世界地図の真ん中に鎮座していた特徴的な形の日本列島と同じ絵が描かれていた。そして現在政貴が居る場所は鳥の国、元々住んでいた鳥取と同じだ。


そして元居た世界と異なる点が二つ、まずは国の名称が日本ではなく倭の国であること、そしてもう一つは首都が東京ではなく京都にあるという点だ。


似て非なるこの世界、パラレルワールドと呼ぶべきか、はたまた異世界と呼ぶべきか。


ただ、フィクションの世界では異世界というのは基本的に死者が生まれ変わる場所である。昨日は確かに自室の寝室で寝た。つまり夜中、眠っている最中に飛行機が墜落でもしてこない限り元の世界の自分が死んだという事はありえない。


この時、政貴は一つの可能性を考えていた。それは眠りがトリガーとなり二つの世界で意識が入れ替わるという説だ。


どこかの映画で見たことがある気がするが、割と真面目に有力な説だと思い込んでいた。もし仮に死んだと言う記憶があるなら、またこの世界で目覚めたときに赤ん坊の状態なら、前世の記憶を引き継いでいる今の状態は転生したのだと納得が行く。


しかしながら赤碕一真として死んだ記憶も無ければ既に生きている人間の体に乗り移った訳なのだから、寝ている間に体が入れ替わるというフィクションのような展開しか説明が付かないのだ。


なんとなく、寝れば元の世界に戻れると勝手に希望を見出したところで本を閉じる。どうやら自分の入れ替わり先の人物は大層な身分のお方のようだ。おまけに江戸時代の世界観で魔法というフィクションのような世界に迷い込ませてくれた神には感謝しなければならない。もし一個だけ注文を付けるとしたらせめて女の子と入れ替わりたかった。


そんなバカなことを考えているとすっかり日も暮れ、夕食とお風呂を済ます。外は真っ暗だというのに、案の定お城には電気が灯り時代感覚をおかしくさせる。


そして目覚めた時には気が付かなかった、自室の電気を消して眠りに付く。


「色々あったけど、まるで旅行みたいだったな」


未だに夢を見ているようだった。そしてやけに長く感じた一日だったが、ようやく元の世界に戻れる。SF映画の主人公さながらにこの世界に別れを告げ、硬い硬いせんべい布団で眠りについた。

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