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俗に言う出会いは最悪ってやつだ  作者: ルーラブ


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オペレーションS

姫乃は自分のお腹の音で迷惑を掛けたことを酷く恥じていた。同時にその醜態を一真に見られたことを後悔していた。


なんでこんな時に限って


もう少し朝食を食べておけばと後悔しているがそんなことを今更言ったって遅い。


頭では悔しがりながらも、体はどんどんと目の前の麺を平らげていく。さっきまで出来立ての熱々パスタが目の前にありながら十分程度待たされるという拷問を受けてきた。


そしてようやくその拷問から解放され、空いたお腹に次々と麺を入れていった。


落ち込みながら次々と麺を口に運ぶ姿に一真は思わず目を丸くして、そして一真がパスタを半分食べ切る前に彼女はペロッと完食してしまった。


一店舗目の撮影が終わり、車に戻ると今度は二店舗目に向かうと説明があった。


「古民家カフェでまったりお喋り♡」というタイトルの写真を撮りに最近オープンしたばかりのカフェに向かうらしい。いやまた食うのよ。


車で五分程度走ると次の目的地に到着する。五分と言っても市街地の五分であるため、移動時間の大半を信号待ちが占め徒歩とあまり変わらない時間で到着した。


到着したのはアーケードが立ち並ぶ商店街の一角にお店を構えるカフェ。お店に入ると若い女性店員が出迎えてくれた。


被写体である一真と姫乃は先に入店、その背後で陽斗と結菜がヒソヒソと会話していた。


「オペレーションS完璧だな」


「えぇ、あえて十分遅く起こした甲斐があったわ」


何やら怪しげな笑みを浮かべる二人の存在に気が付ける訳もなく、二人はテーブルに着席していた。


「昔おばあちゃんがここで喫茶店をやってて、でも歳で引退しちゃって長らくここのお店は使ってなかったんです。だから私が再びここを再活用して商店街に活気を戻したくて」


女性店員は別のテーブルで雑誌のインタビューに応じていた。なぜここでカフェを営んだのか、こだわりは何か、おすすめメニューは何か、記者の質問に次々と答えていく。


インタビューは記者の仕事。であれば一真と姫乃は出番までしばし休憩となる。


「おばあちゃんがやっていた時はモンブランが有名で、休日には行列が出来ていたこともあるんですよ!」


女性店員はおばあちゃんの話を深掘りされて嬉しそうにインタビューに答え、その話し声が店内に響き渡る。


インタビューはもう少し長引きそうだ。こんな時なら普通、雑談でもしてインタビューが終わるのを待つのだが相変わらず二人はインタビューを音楽代わりにお冷を啜ることしか出来なかった。


一真が一口お冷を口にする。そしてコップを置くと今度は姫乃がお冷を口にする。


お互いが「今お冷やを飲むのが忙しくて会話できません」と言わんばかりに交互にお冷を口にしていく。


そして遂に一真のお冷が底をついた。続いてすぐ姫乃のお冷も底をつき、何もしない気まずい時間が流れ始める。


あ〜もう!こんな時に結菜が居てくれれば。


姫乃は横目で結菜を探すが、見当たらない。それもそのはず、彼女は店の外で陽斗、そして山下先生と談笑を楽しんでいた。


一方一真は姫乃と話すきっかけを探していた。というのもこうしてお互いが気まずくなったのも全て陽斗、そして自分の責任だと考えていたからだ。


元々浦木さんは生徒会長を目指して、二年間努力をしていた。それを俺たちがふざけてその努力を踏み躙ってしまった。


悪いことをした自覚はあった。でもそれを中々謝罪する機会が無かった。


しかしここまで沈黙が続くと返って喋り出すのは不自然だ。ただひたすらに時が過ぎるのを待つ方が楽かもしれない。だけどここで話さなれければずっとこのままかもしれない。


彼女に話しかける、そんなことを考え始めると途端に心臓の鼓動が速くなる。


「浦木さん、そのこの前の生徒会長選挙は本当にごめん」


そう言い出せば不自然では無い。言え、言うんだ。脳内のシミュレーションは完璧じゃないか。


何度か話しかけようとするが、その度に沈黙を続けるという楽な選択肢が脳を支配する。


だが、そんな選択肢に争う一つの言葉が脳裏に過ぎる。


ー「男なら勇気出してなんぼよ」


遠い昔の記憶、幼少期の頃に父に言われた言葉だ。具体的なシチュエーションは覚えていない。ただその言葉だけが急に脳裏に過ってきた。


そして葛藤を全てその言葉で包み込み、勇気を出して口を開く。


「あの・・・姫乃さん、生徒会長選挙の時・・そのごめん」


途中言葉が使えながらも勇気を出して全部言い切った。


そしてその言葉を聞き、姫乃は一旦噛み締めたように言葉の意味を理解する。


「具体的にどこが?」


そして姫乃は一真がしっかりと謝罪する意思があったのか、確かめるためにそう聞き返した。


「ふざけちゃって、公約であんなこと言っちゃって、それで浦木さんが生徒会長になれるはずだったのに無碍にしちゃって本当にごめん」


心からの謝罪、それを窓の外から見てた陽斗と結菜は二人がお冷だけテーブルに並べて俯き合っているのが別れ際のカップルみたいだと笑っているのだった。


姫乃は一真の謝罪に対して返事をしようとした時、いつの間にかインタビューを終えた店員さんが美味しそうなケーキとコーヒーを運んできた、


「お待たせしちゃってごめんなさいね〜!当店自慢のケーキとコーヒーです」


先ほどのパスタを食べてから程よい時間が過ぎ、ちょうど甘味を体が欲していた時に運ばれてきたケーキ。ここのカフェの自慢というだけあって丁寧に塗られた生クリーム、断面から覗く彩り豊かなフルーツ、そして頂点を鮮やかに彩る苺が見るからに美味しそうなケーキだ。


早速一口と行きたいところだが、まずは撮影タイムだ。


カメラマンがカメラを構えると、ポーズの指定が飛んでくる。


「じゃあ姫乃さん、一真くんにケーキを一口食べさせて」


なるほど、まずは姫乃さんが一真くんにケーキを一口食べさ・・せて?


状況を頭でシミュレーションする。そして先ほどの言葉を再現すると難度シミュレーションしても俗に言う「あ〜ん」のシチュエーションが浮かんでくるのだ。


「はぁ?」


姫乃は心の底から声を漏らした。それを聞き一真はそんなに嫌なのかと少しショックを受けた。一真の心に十ダメージ


「恥ずかしいかな?」


それを聞いたカメラマンは、そう言い返した。恥ずかしいからできません。そう断ることは姫乃のプライドを傷つけるものだった。

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